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後始末-完

「私は神だ! 数多の世界を制服し、唯一の存在となる神だ! 貴様のような存在に負けるものかっ!!」

「神だって、誰だって負ける時は負けるものよ。私は自分を絶対的な存在だとは思ってないわ」

「それほどの力を持ちながら腑抜けたことをっ! 私は貴様を認めぬ! 滅ぼしてやるわ!」

「まだそんなセリフ言える気持ちの前向きさは評価するわ」


 アルゴロナシスが一気に距離を詰めてきた。アルゴロナシスが突き出してきた拳を寸前で躱すと私の背後の地面が衝撃で大きくえぐれる。続けざまに休みなく繰り出されるアルゴロナシスの攻撃を避け続ける。その一撃一撃は私に触れることはなかったが、衝撃は周囲の環境を激変させていた。大地は割れ、空が裂けた結果、大量の地面の瓦礫が渦巻いた風によって巻き上げられて先ほどまで青かった空を薄黒く染め上げていた。


「雲の一つでも欲しいとは思ったけどこれはやりすぎ」


 仮に元の世界でアルゴロナシスが暴れた場合のことだけは想像したくない光景だった。

 だからこそ作り出したこの異世界で倒さなくてはいけない。

 私の頭部を狙って振り下ろされてきたアルゴロナシスの踵に対して右手のアッパーをぶつける。衝突の衝撃で地面がさらに粉々になり、大気が吹き飛ばされて真空が生まれる。

 真空が生まれたのは一瞬ですぐに吹き飛ばされた大気が吸い上げられるように勢いよく押し寄せてきた。押し寄せてきた大気は暴風となり、竜巻を発生させた。

 発生した竜巻の中をアルゴロナシスの右足が飛ばされていく。

 今、私の目の前には右足を付け根部分から欠損させたアルゴロナシスが苦痛の表情を浮かべていた。対する私は今しがたアルゴロナシスの右足を吹き飛ばした自分の右手を改めて握り直して特に問題がないことを確認する。

 周囲に足場となる地面は無くなっていて、私とアルゴロナシスはともに宙に浮いて向き合っていた。


「足を作り直すことは……できないのよね」

「侮るな。たかが足一本すぐに再生してやるわ」


 アルゴロナシスは言葉通り瞬きする間に足を再生させた。だけど、消耗は激しかったようで先ほどから息が荒いままだった。


「もう本当に終わりにするわ。神として全力で」

「終わりにするのは私だ!」


 アルゴロナシスは再生させたばかりの足で宙を蹴ると渾身の力を拳に乗せて襲い掛かってくる。タイミングと速度、そしておそらく威力もこれまでで一番だと思うアルゴロナシスの拳を私は両手で握りこむようにして受け止めた。


「なっ!?」


 何度目ともなる驚きの表情を浮かべるアルゴロナシスの体の端々から炎が燃え上がる。受け止めた拳を経由して送り込んだ浄化の炎がアルゴロナシスを外部と内部から同時に焼いている。


「焼かれているだとっ……まだだ、まだ私はっ!」


 浄化の炎がアルゴロナシスが叫ぶ声ごと全身を包み込む。私は最後まで暴れるアルゴロナシスの拳をずっと握ったまま、彼が燃え尽きるのを待った。

 全身が黒く炭化したアルゴロナシスはまだ吹き荒れている風に体を砕かれ、砂粒よりも粉々になってどこかへと飛ばされていった。最後まで握っていたアルゴロナシスの拳も私の手の中で砂のように崩れて体と同じように風に飛ばされていく。


「この異世界は閉じるから誰も訪れることはないけれど、戦って倒した責任としてあんたの事は私が覚えておくわ。アルゴロナシス」


 アルゴロナシスへの最後の言葉をつぶやいて私は香織達がいる世界へと戻った。

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