神様なんだから肉体の一つや二つ作れます
正直ギャグ回
残った私の体が衝撃で吹き飛ばされて視線が上を向く。空は青空だ。急場作りの異世界のため雲一つない青空だ。でも、ここまで真っ青だと逆に不気味な気がして雲を作った方が良かったかもしれないと思う。
私の体が地面に投げ出されるように落ちると土埃が舞う。首の一部も消し飛ばされているのか動かなかったので視線だけを動かして周囲を見るとかなり地面がえぐれているのが見えた。
「私を復活させた者が如何ほどの者かと思ったがこの程度か。自らの力を見余った愚かな女神よ。その愚かさでこれから数多の世界が滅びるのだ。せいぜい悔やむがいい」
「……悔やむ?」
アルゴロナシスは可笑しなことを言っている。
世界が滅びるとか私が悔やむとか。
私には何を言っているのか分からない。
「ねえ、何言っているの。あんた?」
「ほう、その体でまだ口が聞けるか。だが、もって数秒の命、後悔の言葉を述べるがいいわ」
「言っている意味が分からないんだけど。まだ始まったばかりでしょ」
「もう終わったわ。貴様の体は私の力の前に消し飛ばされ、残るのはわずかな肉片のみ」
「だからまだ体が消し飛ばされただけでしょ」
「ん?」
アルゴロナシスが分かっていないのか疑問の声を上げた。しかし、話すたびに真空破が飛ぶのをなんとしてほしい。風の音がうるさいので声が聞きにくい。
ともかくいつまでも寝ているわけにもいかないので私は体を再作成して起き上がる。裸族の趣味はないので服も一緒に作り直す。ただ今まで来ていたシャツにズボンという服装ではなく、元の世界でいつも来ていた裾の長い真っ白な飾り気のない服にした。
理由としてはこの後また服を消し飛ばされたら作り直すのが少し面倒だなというだけだけど。
起き上がった私をアルゴロナシスは上から驚いたような表情で見ていた。
「何、鳩が豆鉄砲食らったような顔してるのよ……あ、これはあの世界でのことわざか。伝わらないわね、ごめん」
「……貴様、何をした」
「何って見てたのなら分かるでしょ。消された体を作り直したのよ」
念のため変なところがないか作り直した体を見直してみる。見た目は先ほどまで変わりなく作り直したつもりだったが、髪の色が元々の薄緑色になっていた。後でちゃんと黒に染めておこう。
「再生能力を持っていたのか」
「再生じゃないわ。作ったの。さっきまでのはあの世界で日常生活を送るのに支障が無いように調整して作った体だったからね。さすがに神相手との戦いだと耐えられなかったわ」
「体を作るだと!? 自らの体をか。バカなっ! 何を言っている!?」
「バカな事言ってるのはあんたの方よ。私達神にとって肉体は器でしかないでしょ。そりゃ怪我をすれば痛いけど、それだけ。神としての精神というか魂というかまあともかくそっちが無事なら死ぬ、消えることはないでしょ」
「……っ」
私の言っていることが理解出来ないという表情をアルゴロナシスが浮かべた。
「もしかしてあんた、体作れないの?」
「……ふっ、戯言を言って私を惑わそうとしているのだろうが、そうはいかん。実は超再生能力であろう。おそらく肉片の一片でもあれば復活出来るほどの。その能力は凄まじいが肉片の一片すらも消し飛ばせばいいことよ」
「別に惑わす気はないんだけど」
「これを喰らうがいいっ!!」
アルゴロナシスが私の話を聞かずに攻撃態勢に入った。アルゴロナシスは体内の莫大な魔力を口へと集中し、どこかの漫画で見たようなビームこと魔力砲を放ってきた。
アルゴロナシスの口から発射された魔力砲はアルゴロナシスの体を私の視界から見えなくなるほど強大になり襲い掛かってくる。文字通り私の視界いっぱいに迫りくる魔力砲が息つく間もなく私に直撃した。
「ふははっ、どれほどの魔力障壁を張ろうとも全ては無意味。圧倒的な力により全てを蹂躙し、全てを消し去ってやったわ。肉片一つすら残ってはいまい。これでも再生できるのなら再生してみるがいい」
「だから再生じゃないって言ってるでしょ」
「っ!?」
勝ち誇っているセリフを吐くアルゴロナシスに対して少し悪いなっと思いつつも間違いは訂正しなくてはと声をかける。
舞い上がる土煙が晴れていくと私の方を凝視しているアルゴロナシスと目が合った。その瞬間、アルゴロナシスの目が一段と大きく見開かれた。私を隅々まで見ようとしている視線だ。見られることには慣れているが、別に恥ずかしくないわけではないので、私は少し視線をずらす。
視線をずらした先の私の足元は魔力砲によって完全に崩壊して地面が無くなってしまっていた。地面を柔らかく作ってしまったと後悔して仕方なく宙に浮いている。
「無事だと……バカな」
「さっきから口調が三下になってるわよ」
「先ほど私の打撃で吹き飛んだ貴様が耐えられるはずがない!」
「さっきまでの体だったらね。今のこの体は女神仕様よ。私の世界から持ってきた力を含めた全能状態の。あ、服もね。埃一つ付いてないでしょ。そういう風に作っているから」
「ふざけるなっ!!」
アルゴロナシスはその巨体から想像できない速度で動き、拳を放ってきた。
私はその拳を片手を突き出して受け止める。真空破と衝撃が私の周囲を突き抜けて行ったけれど、私自身は今までいた空中の定位置から少しも動くことはなかった。
「っっっ!!」
アルゴロナシスが受け止められた拳にさらに力を入れて押し出そうとしているけれど、私にかかる負担は先ほどから少しも変わらない。
「先ほどは体が消し飛んだはずだ!」
「だから言ったでしょ。今の体は女神仕様だって。普段からこの体で居たらあの世界でまともに生活できないのよ。自分の部屋のドアノブ回すのに細心の注意とか払いたくないもの」
私が指に少し力を入れてアルゴロナシスの拳を押し返すとアルゴロナシスはものすごい勢いで吹き飛んでいった。




