まだ残っている問題について
部屋に戻り、後は寝るだけだと準備をしているとスマホにメールが届いた。
「斎藤君から? 香織の件で進展あったのかな?」
メールの内容は香織のお母さんと次に面談する日取りが決まったことの報告と香織のシェルターの退去期限が迫っていることの報告だった。元々香織に関しては無理を言って入居させてもらっている。追い出すようなことはしたくないが、シェルターをより必要としている子、例えば親に肉体的な虐待を受けているような子のために部屋を空けなくてはいけないと書いてあった。
香織の事情では代わりに児童養護施設へ入るのも難しいらしい。確かに現状として虐待されているわけでもなく、学校に行かせてもらっていないわけでもない。言ってしまえば家族間の不仲のみが原因だ。
だけどその家族の不仲は香織本人にとって家にいることが我慢できないほど重大なことだった。今の状態で香織を家に戻してもまた家出をして夜の街をさまようことになってしまう。
「実は香織のお母さんが悪霊なんかに取りつかれていてそれが原因でとかなら私が悪霊を倒して終わりなんだけど、直接会って見ても特にそんな気配はなかったのよね。この件……斎藤君達に任せきりには当然できないわね。最初、ステラにして欲しいこと聞いた時、今日眠れるベッドが欲しいって言われているし、そのお願いはちゃんと叶えてあげないとね」
任せきりにしないと思っても実際何をすればいいのは相変わらず思いつかない。
香織の母親に関して香織から聞いた印象と実際に会って感じた印象はほぼ一致する。心に余裕が無さそうだった。誰にも頼れずに気持ちの向き先を決められないような感じがした。先日初めて会ったあの場ではつい攻めるような言葉を発してしまったけれど、今思い返すと落ち着いて頼ってもらえるように話を持って行った方が良かった。
焦っていたというのは言い訳でしかないが、今はある程度問題が解決して後なので余裕を持って会うことができる。
「とりあえず……もう一度会ってみようかな。偶然でも装って」
本来、ガルバリス達を見つけるためにこの世界へ運んでいた私の力が明日には使えるようになる。香織の母親を見つけることへの代用は簡単に出来るだろう。
可能なら香織と遊ぶ日までには香織の母親の心を少しでも変えておきたい。人の心はそう簡単に変わるものではないと知ってはいるけれど、変わるきっかけくらいは与えておきたいと思う。
「まずは明日ね。今日はもう寝て完全に英気を養いましょう」
ソファ兼ベッドに横になって照明を落とす。次によく眠れるという睡眠用BGMをスマホから流してからゆっくりと目を閉じた。数度ゆっくりと呼吸をする内に私の意識は段々深く落ちていった。




