稀に行きたくなるスーパー銭湯
目を覚ますとちょうどスマホが鳴っていた。アラームを設定した記憶はないので誰かからの着信だろう。相手を確かめずに電話に出るとやけに元気な香織の声が響いてきた。
「やっほー、ステラ!」
「なぁにぃ……」
「どうしたの? 元気ないっぽいけど。昨日から今までSMSにも電話にも出なかったし風邪でも引いてた?」
「いろいろ忙しかったのよ。徹夜明けで昨日夜に帰ってきて今まで寝てたの」
「一昨日とかにそんなこと言ってわね。忙しいのは終わったの?」
「まあ一応ね」
「そっか、じゃあ遠慮なく遊べるわね。本当は今日も少し会えたらとか思ったけど疲れているみたいだし勘弁してあげる」
「優しい心遣いに感謝するわ」
「その代わり三日後ちゃんと予定空けておいてよ」
「もう三日後なのね。一日寝てないと日付感覚が少し狂うわ」
「うーん、本当にお疲れみたいね。今日もゆっくり休んでね。どうせ学校も仕事もないんだし」
「分かってるわ。久しぶりに本当の休暇を過ごすから」
香織との電話を終えて再び枕の顔を埋める。寝足りないという思いはあったけど、スマホの画面で確認した今の時間は午後一時過ぎを表示していた。既に十二時間以上寝ていたことになるのでこれ以上の睡眠は体に逆に悪い気がした。後、テーブルの上に常温保存で置いてあるおにぎりが気になった。お腹を悪くすることはないだろうけれど、生ものをあまり放置しすぎるのは気分的に良くない。
十秒ほど心の中で数えて気合を入れる。そして覚悟を決めて起き上がるとそのまま寝てしまわないように体を強く伸ばした後、顔を洗いに洗面台へと向かった。
「あー、そういえば二日間はお風呂入ってないことになるのね……」
女神の力で日々の汚れは浄化できる。けれど清潔にする目的以上に暖かいお風呂に入ってゆっくりとしたい欲がある。
「久しぶりに温泉でも行こうかな。日本中の温泉巡りしてたのは一年前くらいで最近は近くの温泉にも行ってなかったし」
一度温泉に行きたい欲が出るともう心の中では行くことが決定してしまった。
「でも遠くには行きたいないから近場よね。草津か下呂か箱根か。正直日本内なら飛んでいくからどこでもそんなに移動時間変わらないのよね。でも飛ぶのも今は面倒だし。都内のスーパー銭湯でもいいかな」
温泉に行きたいけれど移動は面倒だという思いも強いため近くに銭湯がないかを検索してみた。すると部屋の近くにスーパー銭湯が存在していた。普段は興味がないのでまったく気が付かなかったが、それなりに大きな施設のようだった。
「よし、ここでお風呂入ってマッサージ受けて今日はゆっくり過ごそう」
行き先を決めると買っておいたお勧めおにぎりをみそ汁で胃へ流し込んだ。普段の私なら筋子と鮭のコラボ的な美味しさに一感動くらいはするけれど、今の思考の大半は温泉が占めていたので美味しいというありきたりな感想以外出てこなかった。
焦る気持ちに急かされるまま、手ごろなバックにお風呂グッズを詰め込んで部屋を飛び出した。
宣言:お風呂シーンはない!




