徹夜明け、寝る寸前は意外に目が冴えていたりする
「あの後の事をお聞きしたいのですが……」
「ごめん、それはまた日を改めてでいい? 今日はさすがに疲れてるの」
「そうですよね。考えてみれば僕を日本まで運んでくれてもいるわけですし……気が付かずにすいません」
「いいのよ。清隆君もきちんと家で休んだ方がいいわ。怪我の方が一通り治したつもりだけど、精神的な疲れは残っているだろうし」
「お言葉に甘えさせてもらいます。正直一日家に帰ってないので家族が心配していると思います」
「スマホに着信とか無い?」
私に指摘されて清隆君がスマホをチェックすると家族から連絡があったらしく驚いた表情を浮かべた後、スマホの画面に向かってすまなそうな表情を向けた。
「すいません。ステラさん、少し失礼します」
清隆君が私から距離を取って電話を掛けた。正直、この程度の距離だと聞こえてしまいそうだったので私は意識的に清隆君のいる方向とは反対方向の音を聞くことにした。
夜ということもあり、公園周辺の住宅からは家事をする生活音、公園の前を通る買い物帰りの親子の会話が聞こえてきた。
平和な音だと思う。
変わらない日常がつまらないという者もいるだろうけど、一度でも生き死にを経験すると何気ない生活音、なんてことはない日常会話がとても平和を感じさせる。ガルバリス達に襲われた人達は日常に戻れただろうか。騒ぎを大きくしたくなかったのか結果的に死人は出てなかったけれど、襲われた人達はだいぶ衰弱していた。私が見つけた人は私が治療出来たけれど被害者全員じゃない。きっとまだ病院で寝たきりになっている人もいるはずだ。
これからしばらくは今回の件の被害者の治療に専念することになりそうだ。
「ステラさん」
清隆君に声をかけられたので振り向く。
「家族の方は心配していた?」
「ええ、とても。また居なくなったのかと少し泣かれました」
「当然よね。ようやく戻ってきたと喜んでいたらまた居なくなるなんて家族としては心の負担が大きいわ。早く帰って顔も見せてあげたら? 家族を安心させるのが最優先よ」
「そうさせてもらいます。今回は本当にありがとうございました。今日のお礼はまた改めて」
清隆君は深くお辞儀をした後、足早に公園から家へ向かっていった。
「さてと……私も帰ろう。やることは多いけれどまずは寝て起きてから優先順位をつけて解決していきましょう」
帰り際、翌朝起きた時用の食べ物を買うために行きつけのコンビニに寄ると馴染みの店員である田畑君がちょうどシフトに入るところだった。
「やあ、田畑君は今から?」
「ステラさん、こんなに早い時間に珍しいですね」
「別にステラは夜行生物じゃないのよ。普通に昼間も行動しているんだから」
「今はもう夜なので夜行生物の否定にはなりませんよ」
「言葉尻を取るようになったわね。ステラはお客なのに」
「ステラさんくらいですよ。こんな態度を取れるのは」
「……慕われている証としておくわ」
田畑君との会話をそこそこで終わらせて私は商品棚へと向かった。明日の朝食を考える時に今日食べた物を思い返す。
ミートパイにパン、そしてパブロパケーキ。パン系ばかりだ。
そうなると菓子パンやサンドウィッチは朝食の候補からは外れて、残りはご飯または麵系となる。
「手軽さを優先しておにぎりかな」
おにぎりの棚を見ると商品を入れたばかりなのか全ての種類が揃っていた。いつものコンビニに来る深夜の時間帯では見れないラインナップだ。基本的な具のおにぎりから卵焼きや唐揚げなど少し特殊な具を入れたおにぎりや白米ではなくチャーハンにした米を握ったおにぎりがあって私を悩ませる。
家に帰って少しでも早く寝てしまいたい衝動も強くあまり悩みたくはないが、朝起きた時になんでこのおにぎりを選んだのかと後悔もしたくない。
「この筋子と鮭が一緒になっているおにぎりと卵焼きのおにぎりが結構人気ですよ」
私が悩んでいると田畑君が人気商品を進めてくれた。
「ステラさんが来る時間帯だといつも売り切れちゃってますから、悩んでいるならコレにしたらどうです?」
「いいアドバイスね、田畑君。そうするわ。人気商品なら外れはないだろうし」
勧められたおにぎりの他に追加でカップみそ汁を購入して部屋へと戻った。テーブルに買ってきた品を置くと服をそのままにソファへと倒れる。ソファのスプリングがいい具合に反発して私の体を受け止めてくれたのでいい買い物をしたと実感する。
柔らかいクッションに包まれて安堵した私はそのまま眠りにつくことにした。




