ミートパイは誰の発明か
オーストラリアから日本へ帰る前に戦闘で出来たクレーターを出来る限り平坦に戻す作業を行った。その間に清隆君が目を覚ますのかと思っていたけれど、戻す作業はお昼前には終わり、お昼過ぎまで起きるのを待っていたけれど、清隆君は熟睡を続けていた。
この様子ではまだしばらく起きないなと判断してオーストラリア観光をすることにした。
観光というとその土地の有名な場所を見て回ることやその土地のグルメを楽しむことが上げれる。私としてはグルメを重要視しているため、まず先にオーストラリアの国民食と言われているミートパイを食べに行った。
名前は聞いたことがあったけれど、今まで食べたことが無かったミートパイはジューシーで食べ応えがあった。焼けたパイ生地の食感と溢れる肉汁とトマトソースが絶品であった。日本でも食べたいと思い、調べてみると日本にも何店舗かミートパイを売っている専門店があるみたいなので時間を見つけて行ってみたい。
ミートパイ以外にももう少し何か食べたいと探していたら店先で店員の人に何やら茶色いペースト状のマーガリンのようなモノを塗ったパンを勧められたので食べてみたが、正直私の口には合わなかった。聞くとオーストラリアでは人気らしい。ご当地食というべきものだろう。日本でいう納豆のような。ちなみに私は納豆も苦手だ。発酵食品に関連で苦手な食べ物が多いなと自覚はしている。
口直しにデザートを探していると少し珍しいケーキを発見した。パブロパという聞いたことがないケーキでスポンジではなくメレンゲを焼いたケーキだった。トッピングは主に生クリームと色鮮やかなフルーツで見た目から食欲を誘うケーキだった。食べた感想としては見た目の白さから丸ごと生クリームのような甘さを想定していた反動か程よい甘さに衝撃を受けた。食感にしても外のサクサク感と中身がフワフワ感で本当に今まで食べたことがないモノだった。
この世界に来て三年経つけれどまだまだ食文化で驚かされることが多いことを実感した。コンビニのデザートだけで満足せずにもう少しは冒険して世界中の食文化を試してみなくてはいけない。この世界にいる時間はまだまだあるので気長に計画は立てていこう。
それに今はいろいろと解決しないといけないことが立て込んでいる。
おそらくこの一連の騒動の中で一番大変な戦闘は終わったけれど、まだ戦闘では解決できない、いや、してはいけない問題が残っている。女神の力を持ってしても容易には解決できない問題だ。
食事を一通り楽しんだ後は荒野での騒動の後だったので海を見たい衝動に駆られたせいでもあるけど、オーストラリア近くの小島や有名なサンゴ礁地帯を見に行った。とても綺麗な海で一時心を休めることが出来た。そして自画自賛ではあるけれど、自然の景色については私の世界も負けていないと確信も出来た。海の美しさや生き物達の多様性、オーストラリアの海はこの世界では有数ではあるとは聞いていたが、私の世界にすればこれくらいは普通だ。生き物に関していえばもっと沢山の種類がいる。まあ、危険なモンスターも多々いるので安全面でいえばこの世界の海に軍配は上がる。この世界で伝説の生物と言われている巨大イカ、クラーケンなどが普通に存在しているので、私が海に潜った時に襲ってきたサメなんかは可愛い部類に入ってしまう。
観光を一通り終えて清隆君の寝ている荒野に戻ってくると戦いを終えた頃には登っていた太陽がすでに沈みかけていた。だけど、清隆君はまだ寝たままだった。さすがにオーストラリアで二日過ごすわけにはいかないので私は熟睡を続ける清隆君を背負いオーストラリアを飛び立つことにした。清隆君の体が私の一回り以上大きいせいかバランスが取りにくく、何度か空中で清隆君が落ちてしまうアクシデントに見舞われたがなんとか日本に帰ることが出来た。
既に太陽が完全に沈んでしまった時刻になり、最初に清隆君と話をした公園に着陸するとタイミングを計っていたかのように清隆君を目を覚ました。
「……おはようございます」
「おはよう。もう夜だけどね。お腹は空いてない?」
寝起きの清隆君をベンチに座らせるとお土産用に買っておいたミートパイと飲み物を手渡す。
「あ、ありがとうございます。パイですか? ……え? ここは日本?」
「そうよ。今、帰ってきたばかり」
意識がはっきりしてきた清隆君は自分が日本に戻ってきていることに驚いていた。
「確かオーストラリアにいたはずでは……まさか夢とかでは」
「あんな戦いがあったのに夢なわけないでしょ」
「で、ですよね。夢魔などにいたずらされたのかと」
「夢じゃないし、いたずらされたわけじゃないわ。現実に起こったこと。清隆君は廃工場に行って捕まって私に助けられてドラゴンになったガルバリスと戦って、その最中にオーストラリアまで飛んでそこで倒した。これが昨日から今日の朝までの出来事よ。ちゃんと覚えてる?」
「……はい、ステラさんにはなんとお礼を言ったらいいのか」
「私へお礼よりも勝利の喜びでも現したら。オーストラリアではすぐに寝ちゃって勝利したって感覚が薄いでしょう」
「勝ったことは嬉しいですが、それはステラさんの、女神様のサポートがあってこそでしたから。まずはお礼です」
「そこまで考えてのお礼なら素直に受け取るわ」
ミートパイ作って食べたいけれど家にオーブンがない




