後始末1つ
「終わりました……よね」
「ここから復活出来る力があるならもっと手ごわかったわよ」
安堵したのか清隆君が全身から力を抜いて地面に仰向けに倒れた。
「清隆君!?」
「すいません。実はかなりギリギリでした。元々力を吸われていたところからの戦闘だったので……ステラさんの加護が無ければ持ちませんでした。ありがとうございます」
「よく頑張ったわ。加護が在った方が体力の回復も早いだろうし、もうしばらくつけておくわね」
「重ね重ねありがとうございます」
お礼を言う清隆君の瞼がゆっくりと落ちていく。考えてみればこれまで夜通しだった。体力の限界もあって眠たくなるのも無理はない。
「寝てもいいわよ。後始末もあるからもう少しここにいることになると思うわ」
「すいません、起きたら手伝いますので……」
太陽が見え始めた地平線を背景に清隆君は熟睡に入った。辺りは出来立てのクレーターでデコボコしているが、それでも太陽が昇ってくる景色は見ごたえがあった。この景色の中で寝られるのはある意味贅沢ではないだろうか。
私は清隆君がゆっくりと眠れるように太陽光を遮断するバリアで清隆君を覆うと改めてガルバリスと向き合った。
「ガルバリス。あんたはあんたなりに誠実で忠義に厚かったんでしょうね。私の世界で出会えていたらちょっとは仲良くできたかもしれないわ」
ガルバリスを包んでいたバリアを解除して近づいていくと周囲の気温が高温になってくる。ガルバリスの遺体が高温を保っていて周囲を焼いていた。当然ガルバリスの遺体をこのまま放置はできない。発せられている熱の問題もあるけれど、早ければ今日のお昼頃には世界中でニュースになっていそうなことの方が問題だ。
「報道されたら世紀の発見どころの話じゃすまないわね」
高温を保つガルバリスの遺体に向けて手をかざす。私の手と遺体との距離は数センチ程度。直に触ってしまうと遺体の放つ高温により私の手も火傷ではすまない重傷を負ってしまうだろう。
「既に燃えているのにもう一度燃やすのは変な気もするけれど……浄化してあげるわ。私の炎で」
私が手をかざしていた部分から炎が燃え上がり、ガルバリスの遺体を包んでいく。見た目は炎で燃やしている風に見えるけれど、行っているのは浄化であるため煙は立たない。ガルバリスの体の端から炎の中で砕けていき、割れて砕けるような音だけが荒野に響き渡る。聞いていて決して気分がいいモノではない音だ。出来ることなら二度と聞きたくない音だ。もう聞くことはないだろうと思っていた音だ。
こんな思いをするために、戦うためにこの世界に来たのではないと気を落とす。
「いやいや、落ち込むのはやめ。せっかく一件落着したんだから後は楽しいことを考えましょう」
誰よりも自分自身に聞かせるために少し大声で話した。
「まずはそうね。香織との買い物かな。約束もしているし」
香織の状況についてもまだ解決しないといけないことが多々あるけれどそれはそれとして買い物を楽しもう。今回の買い物は少し豪華に行こうと決めた。買って気持ちを発散させるという行為が正しいかは分からないけれど、今思いつくのはそれだけだった。
気が付くとガルバリスの遺体は浄化の炎で全て無くなっていた。荒野の風だけが吹き叫び、今までこの場所にドラゴンの遺体があったとは誰も思わないし、想像もしないだろう。
だけど、少なくとも私だけは倒した相手としてガルバリスの事は覚えておこうと思う。敵であったけれど誰からも忘れ去れる、知られないというのは悲しすぎる。




