帰り支度1
私の周囲で紫水晶から始まった一件の後処理が続く中、エメオールとアルガトの帰る日が訪れた。
電車や船、飛行機で帰るわけではなく、私の部屋から帰る先の世界へ行きのゲートを開いて帰るので情緒的なモノはあまりない。来た時はエメオールの術で来ていたが、心配だったので帰りのゲートは私が手伝って開くことになる。何かの間違いで別の世界へ行ってしまっては大変だ。
「なんというか……短かった気もしますし、思っていたよりも長居してしまった気もしますね」
アルガトが部屋のカーペットに座りながらお茶を飲んでつぶやいた。
「短かったわよ」
エメオールは背筋を伸ばしながら反論する。
「二人が来てから日数で言うと一ヶ月くらいなのよね」
私はスマホで撮っていた二人が来てからの写真を見て、いろいろと思い返す。二人にはもっと素直にこの世界を楽しんでほしかったのに変なことに巻き込んでしまったと後悔もある。せめて紫水晶と初めて遭遇した後、私がもっと積極的に対処していれば少なくともスカイツリーの一件はなかったのではないかと考えてしまう。
「一ヶ月ですか。それだけ聞くと旅行としては長い期間ですね」
「旅行じゃなくてステラ様に会いに来たんだから別に長くないわよ。本当はもっと滞在していたかったのに」
「これ以上は迷惑だからと帰るのを言い出したのはエメオールでしょ」
「それはアルガトが帰りたいみたいな空気を出し始めたからよ」
「頃合いとは思っていましたよ。こちらで得た知識を色々と書き留めたいですし、私達の世界で活かしたいとも考えていますから」
「商売のことばっかりね、あんたは」
「商売によって世界が活気づくのはステラ様も望んていることだと思いますよ」
アルガトが同意を求めるように視線を送ってくるので私は頷く。
「私が定期的に手紙と一緒に神官達に送っている資料を活用して世界を豊かにしてほしいとは考えているわ。そこにアルガトが手助けしてくれるならとても助かるわ」
「微力ながら力を尽くしますよ」
私と意見が一致したアルガトが気に食わなかったのかエメオールの視線がきつくなる。
「エメオール」
「は、はい! なんでしょうか、ステラ様」
「あなたにとってこちらの世界はどうだったかしら。いろいろと面倒事があって嫌な世界だと思わなかった?」




