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触手は恐怖と嫌悪の対象

触手文化はタコとかイカがヨーロッパで畏怖されていたから広まったらしいっすね。

「神って割には気色悪いモノを出してくるわね!」

 

 襲い掛かってくる触手を避けて後ろへと飛ぶと触手も間髪入れずに私の動きを追ってくる。手で払うのも嫌だったので魔力弾で撃ち落とすが一瞬勢いを無くす程度ですぐにまた向かってきた。


「これならどうっ!」


 魔力弾を刃状に変化させて撃つ。触手は魔力弾によって簡単に切断されたが、切り口から新たな触手が生えて襲ってくる。


「やっぱりこの手の奴は根元を叩かないと駄目ね」


 洞窟の壁際まで退避させられてしまい、仕方なく真横へと触手の攻撃を避ける。私という目標を失った触手は衝突した洞窟の壁を軽々と粉砕する。触手というものは対象を捕まるために存在すると思っているが、少なくともあの触手は私を捕まえようとはしてないことが分かった。


「!? 触手で壊された壁が黒く……」


 触手によって粉砕された洞窟の壁、破片が黒く変色していた。それら破片からはとてつもない呪いの力を感じた。女神の私にとって下手な打撃よりも厄介な攻撃だ。これでも聖なる存在である私にとって呪いとか邪悪な力は天敵だ。力量さがあれば問題はないけど、相手も同じく神だというのであれば警戒しなくてはいけない。


「手で払おうとかしないで正解」


 清隆君の方が気になって視線を送ると結界がなくなって自由に動ける範囲が増えたがそれは老紳士も同じで依然として苦戦をしていた。今の私ではこの触手をすぐにどうにかするのは厳しいので清隆君に老紳士を倒してもらうのに期待したいけど、清隆君も今のままでは厳しそうだ。


「清隆君っ! 手を貸すからそいつを倒しなさい」

「ご、ご期待には応えたいのですがなかなか厳しい現状でして……」

「だから手を貸すって言ってるの」

「女神様、我が主の攻撃を躱すのに精一杯ではないのですか? こちらに逃げてきてもよいですが、この者では我が主の攻撃までは躱しきれませんよ」

「それが分かってるからこうやって離れているんでしょ」

「ではどうやって手を貸すと」

「その余裕面がもう浮かべることが出来なくなる方法よ」


 私は左手を祭壇方向上へ掲げるとそのまま祭壇付近で戦っている清隆君に向けて振り下ろした。私の左手の動きに連動して祭壇上部に留まっていた魔力弾が清隆君に向かって落下する。想定外の方向からの魔力弾に清隆君は避けられずに直撃を受けた。


「味方を攻撃するとはどういったおつもりで。手を貸すのではなかったのですか?」

「手を貸すと言うのは正しくなかったから言い直すわね。勇者には女神の加護をって」


 魔力弾の直撃で祭壇の上に巻き起こっていた土埃の中から清隆君が老紳士に向かって飛び出してくる。老紳士は驚きながらも黒い鞭を繰り出すが清隆君を黒い鞭を片手でなんなく弾くと老紳士に詰め寄り、腹部に重たい一撃を打ち込んだ。

 洞窟内の空気が振動するほどの打撃を受けた老紳士は洞窟の壁まで吹き飛び、側面を大きく削りながら最後には壁にめり込んだ。


「ステラ様、加護ありがとうございます」

「感謝は後! すぐにそこを離れて!」


 私に向かってわざわざ頭を下げてお礼を言おうとしていた清隆君の背後に石碑から伸びる黒い触手が迫っていた。私の掛け声で間一髪触手を躱した清隆君は一足で私の傍まで飛んできた。


「ステラ様、たびたび助けていただきありが」

「だから感謝は後。まだ終わってないんだから」


 老紳士がめり込んだ壁から抜け出して祭壇の上に戻ってくる。その姿に今までの余裕はなく片膝を付いて苦しそうにしている。


「仕留めるつもりで打ち込んだのですが……見た目以上にタフですね」

「見た目なんて言葉通り見た目だけでしょ。そろそろ正体を見せてほしいわ。お仲間が蠅と吸血鬼だったし、次は蛇か狼男かしらね」


 触手が祭壇上部を守るよう動いているので下手に近づけずにいる中で清隆君と老紳士の様子を観察していると老紳士が立ち上がって始めて怒りの表情を浮かべた。


「主の前で度重なる恥をかかせるとは……贄には生きていてもらう予定でしたがもはや殺すしかありませんね。主よ、また御身を奉る祭壇を傷つけることをお許しください」


 老紳士に答えるように石碑から黒い気配が立ち上がる。


「お許しいただきありがたきことです。では、女神とあの者の躯をこのガルバリスが祭壇の飾りと献上しましょう」


 ガルバリスと名乗った老紳士の体が膨れていき、来ていたスーツがはち切れて地肌が見え始める。その地肌は肌色ではなく赤く鱗だった。


「ぐおおおっぉぉおぉお!!」


 ガルバリスの咆哮が洞窟内を振動させる。瞬きする間にガルバリスは元の老紳士の姿を脱ぎ捨てて巨大な火竜へと姿を変えた。いや、この場合は元々の姿へと戻ったというべきだろう。


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