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展望台 - エメオール2 -

 音に反応したのか、人が一定以上の近づいたためか分からないが紫水晶が振動し始めた。

 

「っ!? そこから離れなさい!!」


 私は叫ぶと同時に紫水晶へ向かって駆け出す。

 紫水晶の振動が紫水晶本体自体が割れるのではないかというほど激しくなり、硬い物が割れる音がフロアに響いた。一度割れた音がしたのを継起にパキパキと割れるような折れるような音がフロア中の紫水晶から発せられ始める。

 何が起ころうとしているのか分からなかったが私は観光客に紫水晶から離れるように叫び続けた。


「その紫水晶には近づかないで!」


 一番近くにあった紫水晶と観光客の間に入るように位置取ると以前にステラ様が行っていたように紫水晶を結界で封印する。ステラ様なら遠くからでも紫水晶一つ一つを結界で封印することが可能だろうけれども私はある程度まで近づかないと紫水晶だけを結界に包むことは難しい。遠ければ精度を誤って近くの観光客を巻き込んでしまう可能性もあった。

 紫水晶を一つ封印したところで他の紫水晶も同様に封印してしまおうと視線を向けると次に向かおうとしていた紫水晶が姿を変えていた。

 頂点が鋭角に尖った半透明な太く長い水晶はその体から四肢を生やして人のように立っていた。

 いや、よく見ると足に関しては生えたというは間違いで下部が二つに割れて足になっていた。関節がどこにあるのか見た限りでは分からない四肢を生やした紫水晶は重たい足取りで一歩踏み出すと私に向けて両腕を伸ばした。伸ばした両腕には指は無く、訓練用の木製人形のような棒状だった。

 それなりに距離がある私に向かって何も持たない両腕を真っすぐ伸ばしてくる訳を考えるよりも先に私は体をその射線状から反射的に回避させることで理解した。

 私が体を反らした空間を人形となった紫水晶の放った欠片の弾丸が抜けていき、フロアを支えている支柱に突き刺さった。

 発射動作も発射音も無かった欠片の弾丸を避けられたのはカンとしか言いよう無かった。弓矢なら引く動作があり、近接武器でも攻撃する前の事前動作が何かしら発生するのでそれで攻撃タイミングを測ることができる。しかし、人形紫水晶は腕をこちらに向けるだけで無反動で弾を飛ばしてきた。

 ステラ様に聞いていたこちらの世界で発達していた銃器について知っていなかったら危なかった。その銃器にしても発射音はすると聞いているので今の攻撃は非常に厄介だ。

 厄介なことは立て続けに起こるもので人形紫水晶は一体だけでなく、おそらく先程私が封印した個体以外のこのフロアにあった全ての紫水晶が人形となって私に向かってその腕をまっすぐに向けてきていた。


「他のフロアでも同じことが起きてるのならこいつらを急いで片付けないと……」


 アルガトが向かった上のフロアは心配していないがスカイツリーの館内図によればもう一つ下にフロアがあった。私はそこにも向かわないといけない。

 ステラ様に頼まれたのだから全ての人を避難させなくてはならない。

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