結界ってだいたい半円状のイメージですよね
殴られた老紳士は結界の端まで飛ばされてなんとか踏み止まった。
「いったい何が……力を吸われている状態で壊せるはずがないというのに」
「僕にもよく分かりません!」
叫びながら清隆君が老紳士に追撃を加える。清隆君の一撃を老紳士は正面から片手で受け止めるともう片方の手から黒い鞭を出現させて清隆君を捕えようと攻撃をする。清隆君は後ろへと大きく身を引いて鞭を躱す。
「一度その鞭で捕まっていますからね。もう二度は捕まりません」
「……もう少しだというのに」
「清隆君、結界の外に出れない?」
「試してみます」
私の言葉に素直に従い清隆君が結界の外に出ようと動いた。しかし、老紳士が清隆君の前方へと回り込み鞭を振るった。
「逃がすわけにはいきませんな。あなたにはまだ主に力を注ぐ役目があります」
「それが出来ればやっておりますよ」
老紳士が清隆君に集中している隙に私は結界が解除できないかと近づく。女神という立場上、攻撃よりも結界を張るといった守ることの方が得意ではある。ついさっきここ最近の戦闘では攻撃ばかりで説得力はないけど。
「女神様にお聞きしたいのですがよろしいですか?」
「清隆君を相手しているのに余裕ね」
老紳士が清隆君を捕まえようと鞭を振るう中で私に話しかけてきた。清隆君はなんとか鞭を避けているが結界の外に出ることが出来ていない。
「いったいに何をなされたのですか?」
「何のこと?」
「あの元勇者が石柱から抜け出した件です。あの者一人では不可能。仮に出来たならとっくに行っていたはず」
「もう隠すことじゃないから言うけど答えはあんたの頭上よ」
老紳士の顔が僅かに上に向く。この隙に清隆君が結界の外に抜け出せればとも思いはしたけどそれは甘かったらしく清隆君への攻撃の手は抜けていない。
「あれは……」
老紳士の視線の先には光る玉が浮かんでいた。
「私が放った魔力弾」
「それは最初に爆発したはず」
「ええ、だからあれは二発目」
「いつの間に。そんな隙はなかったと思いますが」
「隙ならあったじゃない。土煙で姿が見えなくなった瞬間よ」
「あれは攻撃用に大量の弓矢を作り出すためでは」
「なんかいちいち質問に答えるのも面倒だから一気に言うわ。弓矢は目くらまし。本命の魔法弾は真下に撃って地中を進ませてたの。これは私も前にやったミスなんだけど結界って見えている範囲分だけを覆うとするから真下は疎かなことが多いのよ。あんたも同じミスしている保証はなかったからそこは賭けだったけど結果は勝ったわ。後は魔法弾で清隆君を拘束している石柱を壊したの」
「地中を……確かにそこは意識外でしたが。もし地中もしっかりと結界で覆っていた場合はどうしたのですか?」
「そりゃ時間をかけてでも結界を解いてたわ。こんな風にね」
私が手で触れた箇所を中心に霧が晴れるように結界が解ける。
「くっ!」
老紳士が初めて悔しそうな表情を浮かべた。
「さて、ここからは二対一。あなたが不利ね」
「……さすが女神様です。正直侮っていたので謝罪をしましょう。ですが、未だに不利ではありませんし、二対一でもありません」
「あなた以外に誰もいないと思うけど?」
「いますよ。最初からここに。我が主の手をこれ以上煩わせるのは避けたかったのですが仕方ありません。主よ、どうかお力添えを」
老紳士の声に反応して石碑から再び黒い気配が触手のように伸びて実態を持って私に襲い掛かってきた。




