衛星を最初に発見したのはガリレオ
「基本的に贄とするなら女神様のような美しい方が映えるのですが、実のところ質が良ければ容姿は関係ありません」
「清隆君を贄とかにさせられないし、筋肉質の男の上半身が石柱から飛び出している光景って正直趣味じゃないわ」
間髪入れずに清隆君を助け出そうと祭壇の最上部へ向けて飛び出す。
「っ!?」
祭壇の老紳士と清隆君がいる最上部には結界が張られていた。私は結界に弾かれて洞窟の壁まで飛ばされる。壁に着地してその場に留まると老紳士がしてやったりという顔で見てきた。
「女神様がお強いのは分かっていますのでそれ相応の準備はさせていただいております。正直、私でも苦労するでしょう。ですので女神様には主が封印を解き、姿を現す時までお待ちいただこうかと思います」
「待っていると思う?」
「いいえ。ですからどうぞ、ご自由にお過ごしください。じっとお待ちいただけるのであれば特に私からは何もいたしません。飲み物や食事についてはご用意できませんので持ち込みでお願いいたします。この場から去りたいというのであれば出口はお作りしますよ」
老紳士の自信に満ちた言葉を聞きながら地面に降りる。祭壇の最上部に貼られている結界は確かに強固でそう簡単には突破できそうにない。正直壊すことはできそうだが、そうなった場合洞窟自体が壊れる危険があるので清隆君の安全が保障できない。そもそもこの洞窟の外がどうなっているのか分からない。素直に考えれば廃工場の真下なのだけど、これほど大きな洞窟のことを感知できないはずがない。
一番分からないのは祭壇だ。この世界に来た当初、どこかに私の世界と同じところはないかとこの世界の過去の文化を調べた。その際に遺跡についても調べたが、目の前の祭壇の建築様式は私が調べたどの文明の遺跡にも当てはまらない。この世界の建築物ではないようだ。
「質問いい?」
「どうぞ、お答えしましょう」
「ここは異世界ね」
私の質問に老紳士の目が感心したという風に大きく開いた。先ほどからこの老紳士は言動とは裏腹に私の事をいろいろ舐めている気がする。
「正確には洞窟と祭壇の周辺のみを別世界として作り上げている。さっきまでいた世界を惑星だとすればここはその星の周囲を回る衛星ってところかしらね。しかも惑星を行き来出来る通路がある衛星」
だとすれば探査魔法で見つからないのも仕方ない。私はこの世界のどこかに清隆君がいるものとして探査魔法を使っていた。別世界へ連れ込まれているなんて想定外だ。別世界への探査は出来なくはないが意識しなくては出来ない。
「またまたご明察です、女神様。ここは我らが主が作り上げた我らの世界。ここから全てが始まるのです。今はまだ規模は小さいですがこれから数多の世界を吸収して強大になっていくのです。先ほどまで女神様がいた世界は最初に吸収されることに選ばれた世界です」
「世界を吸収するなんて壮大な計画ね。でもその計画はそこの神が復活しないと始まらないんでしょ」
「ええ、そうです。ですので今から復活していただきます」
老紳士が両手を高く上げると純白の石碑が黒き輝きだして清隆君の顔が辛そうに歪み始めた。痛みで目を覚ました清隆君と視線が合う。
「ス、ステラさん!?」
「清隆君、無事とは言えないだろうけどもう少し我慢して」
「その通り。後少し我慢していただければ終わりますよ。もっともその時にあなたが生きている保証は出来ませんが」
清隆君はほくそ笑む老紳士を睨みつけて石柱から抜け出そうと暴れ始める。
「くっ、この程度の拘束を抜けられないとは……力が入らないっ!!」
「生気を吸い上げているというのにまだ動けるとは……誇らしい生命力ですね。全て我が主の糧になっていただきましょう」
「糧!? 誰がそのようなものになってたまるものか!」
激高した清隆君はさらに力を込めて暴れて石柱から抜け出そうとしているようだが、石柱は微動だとせずに清隆君から力を吸い上げている石柱はさらに黒い輝きを増していく。
「暴れれば暴れるだけ吸い上げられる生気が増えるだけですよ」
「くぅ、不覚。このように囚われの身になるとは」
「清隆君、暴れないで。今、なんとかするわ」
私は意識を集中して魔法弾を結界に向けて放った。




