大反省の回
「頭を下げられたから来たけど、こんな不快な想いしたので帰ります」
「ま、待ってください! 宮田さんっ!」
立ち上がった紀乃さんは顔を真っ赤にして私を睨みつけたまま部屋から出て行ってしまった。斎藤君が慌てて後を追いかけて行ってしまったので私は苦い顔をしている安藤さんと二人取り残されてしまう。
「……安藤さん、ごめんなさい。ステラが怒らせたみたいで」
斎藤君と安藤さんが作った場なのに壊してしまったのは私だ。そのことには謝罪しないといけないと頭を下げる。
「いえ、その……間違ったことは言ってなかったと思いますよ。ただそうですね。タイミングと言い方がちょっと悪かったのかなっと」
「少し自制しないと。最近こちらでいろいろな娯楽に触れているおかげではあるんだけど、以前よりも感情的になる事が多くて」
開け放たれた会議室の扉の外から紀乃さんの叫ぶ声が聞こえる。どうやら斎藤君が説得しているみたいだ。困っているようなので助けに行きたいけれど今、私が姿を見せた方がより困らせるだろうから斎藤君に任せるしかない。
「安藤さんはこういった経験は沢山しているの? 保護者との面談」
「え、ええ、そうですね。数が多いのは良いことではありませんが年に何度も何人とも」
「紀乃さんのような人も多いのかしら」
「……そうですね。多い方ではあります。どこの家庭でも起こりえる事態ですから」
「どこの家庭でもね……」
私の世界でも実は起こっていたのだろうか。女神として相談に乗ることはあったがこの手の相談事を受けたことがない。家族の問題を女神に相談出来ないと思われたのかもしれない。勇者殿と世界を旅している時に沢山の人々とかなり身近で接する機会があったけど、香織達のような理由で親子が離れ離れになるという場面に遭遇したことがない。まあ、旅をしていた頃は世界が魔王達の脅威に晒されていたから親子喧嘩している余裕はなかったのかもしれないけれど。
ふと気付くと外から聞こえていた紀乃さんの声が聞こえなくなっていた。そして疲れた表情をした斎藤君が会議室へと戻ってきた。
「お疲れ様。いえ、まずはごめんなさいだったわ。斎藤君」
斎藤君に対しても頭を下げて謝る。
「頭を上げてください、ステラさん。謝るようなことはしていません。困ったことをされたのは確かですが、謝ることではないです、はい」
「そう言ってくれると助かるわ。紀乃さんは?」
「帰られました。さすがに今日もう一度話し合いをする気には出来ませんでした」
「やっぱりもう一度謝らせて。ごめんなさい」
「謝罪は大丈夫です。別の日に話し合う約束が出来ましたので」
「……それは良かったけど。たぶんステラはもう駄目よね」
「はい、いろいろと条件を出されましてその中にはステラさんを呼ばないことがありました。なので次は私と安藤さんの二人で話し合いに向かいます」
「せっかく誘ってれたのに力に慣れなくて、逆に手間をかけさせてしまって……ステラ、かなり落ち込むわ」
今回の事は数年ぶりの反省事項だ。
「このような事態を想定していなかった自分の責任でもあります。ステラさんの性格ならこうなることは想像できることでした」
「斎藤君は私が感情的な行動をすると思っていたのね」
「ステラさんが親しい人を蔑ろにされて黙っていられる人でないことは……それで助けられた自分がよく知っていますから」
「慰めてくれてありがとう。今、蔑ろって言ったけど斎藤君もそう感じたってことよね」
「うっ……あまり悪口は言いたくないので追求しないでください」
女神様として人の役に立ちたい気持ちがあるステラ様です。




