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調査

 私はそのまま人が多くなってくるまで海を眺めて過ごした後、海岸線を南下しながら散歩を初めた。

 観光は気分ではないといいつつも目に入ってくる風景に心を動かしているので観光していると同義なのかもしれない。

 歩く海沿いの道には観光客が多く、海を背景に記念写真を撮る光景を良く見かけた。

 海の向こう側、対岸に大きな山があるのが見えてきた。

 ナポリ周辺の地図からヴェスヴィオ山という火山だと思い出す。日本で映画を手当たり次第に見ていた頃に火山の噴火が原因で都市が無くなってしまう映画に出会っている。細かなストーリーは思い出せないが迫力ある映像はかなり印象的に残っていた。

 

「今度は山登りか?」

「山の風景も気にはなるけど数日は街中をぶらぶらするだけにしておくわ。調べ物もあるしね」

「調べ物って?」

「あの窃盗団の歴史、成り立ちとでもいえばいいのかしら。彼らの会話からここ数年で出来た新しい組織らしいけど……数年でイタリア全土にアジトを作れるほど勢力を伸ばせるのがちょっと不思議なのよ」


 窃盗団のボスであるカルロの妙に落ち着いた様子も気になっていた。最初は鎖に縛られて混乱していたがその後、いち早く状況を理解して後は落ち着いて私と会話をしていた。ボスの度量といえばこれもそれまでなのだが、この世界においては決して一般的ではない力の一端を見てからの落ち着きは気にはなる。


「不思議って言っても実際出来てるわけだしな」

「才能と運で出来たのかもしれないし、それだけじゃないかもしれないし……どうせ数日は待ち時間なんだし無駄になるかもしれないけど調べてみるわ」

「好きにしな。別に止める理由もないし……俺にすることはあるか?」

「今のところは特に無いかしら。まずは今日と明日泊まるホテルを探しましょう。ルカートはそこで休んでいてもいいし、ナポリ市内を自由に飛び回っていてもいいわよ」

「つまりは自由行動ってことだな」

「そうよ。迷子にだけはならないでね。ステラからあなたは探しにくいんだから」

「心配するなって」


 その後、昨夜とは違い、容易に宿泊するホテルを見つけた私はルカートと別れてナポリ市内の警察署へと向かった。

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