確保
私達は念のために身を隠して窃盗団のボスが乗っているクルーザーを待つことにした。港は空が暗くなってもライトで照らされていたので隅々まで見ることが出来た。夜になっても利用する人がいるようでいくつかのクルーザーや小型ボートが出入りを繰り返していた。クルーザーが港に入ってくる度、ルカートに確認するが待ち人は来ずに時間が過ぎていく。
日付が変わる頃には港のライトを落とされて周辺は完全に暗闇になっていた。夜空の月と星が照らしてくれてはいるが暗闇の全てを見ることはできない。魔法で視力を強化して暗闇でも見えるようにして待ち続けていると港で動きがあって港の一部がライトで照らされた。
数人の人影が慌ただしく動き回っており、船を迎える準備をしているようだった。
「ルカート、起きて。本命かもしれないわ」
私は横で寝ていたルカートを起こして体を持ち上げるとライトで照らされた港の方へ顔を向けさせる。
「すまん。寝ていたか」
「気にしないで。ずっと匂いを判別していたんだもの。疲れていたのよ」
港には沖合の方からクルーザーが入ってくるところだった。
クルーザーが港の人影の案内で停泊するとクルーザーから何人か降りてきた。その中に一人、周囲を人に守らせながら港に降りた人物が居た。
「ルカート、匂いはする?」
「いや、風向きが悪いな。こっちに匂いが来ない」
もしこの人物が窃盗団のボスでないのならこの場所には来ないと判断して工場跡を探りに行ってみるしかない。そこでも何も手がかりが無かった場合は手がかりをもう一度窃盗団の構成員から聞き出すことからに戻ってしまう。
窃盗団のボスの居場所が再び判明するまでにどれだけ時間がかかるのか考えたくはない。
「少し移動してみるわ。匂いが分かったら教えて」
私はルカートを鞄に入ってもらい、そのまま魔法で姿を消すと様子を伺いつつクルーザーに近づいた。港の入り口には車を待たせているようだったので私は待っている車付近へ先回りすることにした。
「ルカート、どう?」
「嗅いだことある匂いだ。間違いないだろう。あいつが窃盗団のボスだ」
「安心したわ。これで後は旅行に戻れそう」
「まだ終わってないだろ。ここから逃げるかもしれないぞ」
「逃さないわよ」
私は光の鎖を出現させると一直線に対象へと放って体を縛り上げた。




