我慢って言葉を調べると意味が三つくらいある
もしかしたらと予想していた通り、原宿に着いて香織と合流した私は古着屋に入るなり、着せ替え人形のように香織が持ってくる服に着替え続けていた。今、着ている服で5着目になる。ストレートなデニムパンツ、黄色いノースリーブのブラウス。古着であるためにデニムパンツは使い古されておりだいぶ柔らかくなっており、これまで試着させれた服の中では一番動きやすい。
右足を高く上げてみても特に引っ張られる間隔もない。これなら飛んで跳ねても問題なさそうだ。
「ステラ、次はこれ……って、すご! なんでそんなに足上がるの!? ほぼ垂直じゃない!?」
「練習すれば香織にも出来るわよ」
足を降ろして香織が新しく持ってきた服を受け取る。
「いや、私は体固いし、そもそもステラみたく足長くないしさ」
「そう? そんなに違わないと思うけど」
「違うわよ。いい、ステラ。日本人は基本的に足が短いの、悔しいけど。中には長い子もいるけど。私は短いし……ああ、もうともかくステラみたいな体形って結構理想なのよ」
「……そうなのね」
最近見ていた海外ドラマの女優と比べて自分の容姿は平均的だと思っていたけど、香織的には違うらしい。香織は香織で充分に可愛らしい見た目だと思う。
「で、今度の服は……えっとワンピースでいいのかしら?」
「確かプリーツって種類。スカートの部分に綺麗に折り目あるでしょ。そういうのを言うみたい」
ベージュ色の生地に青色の花柄のプリーツワンピースは好みの形をしていたが、スカートが長いために動きにくいことが想像出来た。昨日の一件があるだけに普段着も出来るなら動きやすい恰好を選んでおきたい。
「今朝も言ったけどさ。ステラって普段はラフな恰好が多いからたまにはちゃんと女の子の服装してもいいと思うのよ」
「昔は着てたんだけどね」
元の世界にいた頃は女神らしい恰好ということで白を基調とした裾の長いドレスをいつも着ていた。あの頃は私自身が戦うことなんてなかったので服に対して動きやすい、動きにくいなんて考え方は持っていなかった。
「へぇー、そうなんだ。写真とかないの?」
「残念ながらないわ。絵画ならあると思うけど」
写真のような技術は私の世界で発明されていないけど、絵師が書いた私の肖像画ならいくつかあったはずだ。
「絵画? モデルとかやってたの?」
「頼まれて何回かね」
「……はぁ、やっぱり美人はすごいわ。私とステラは住んでいた世界が違うのね」
「いきなり何を言ってるのよ」
事実として住んでいた世界が違うのだが、香織が言っているのはその意味ではないだろう。
「ちょっと卑屈になってるだけ。私がもっと美人ならステラみたいに独り立ちして一人で生活できたのかなって」
「私が美人かどうかは置いておいて。そのうちに嫌でも独り立ちする時が来るわよ。前も言ったけど今は嫌でも親の脛に噛り付いて楽すればいいのよ」
「……まだそこまで割り切れないって」
「でしょうね。嫌なことの方が多いから香織は家出したんだろうし。人それぞれ、無理なことは無理って我慢しないことよ。そして自分を安売りしないこと。若い子の価値は大人の数千倍はあるんだから」
「ステラ、それちょっと問題発言」
「そう? 何が?」
「分かってないならいいよ。そういう意味で言ったんじゃないって分かるし……うん、ありがとう」
本当によく分からないけど感謝された。




