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会わせてみようかと

 乃絵さんに両親の想いが伝わり一段落した所で私は来栖君の事を思う。彼はこの後どうするのだろうか。

 元の生活に戻るのだろうか。

 確か家族は元の家にはおらず行方不明と聞いている。現在の生活状況まで聞ける関係性を築けていないのでどこに住んでいるのかすら分からない。

 来栖君といえば乃絵さんとの関係もだ。

 守っていたとはいえ乃絵さんを不安にさせていた張本人だ。一度、顔をちゃんと合わせて謝罪くらいはすべきだろう。

 そう思うと来栖君に助けられた記憶が乃絵さんから消えているのは少し都合がいいかもしれない。襲われた事を記憶していると乃絵さんとしては守ってもらった事実と守ったという事実があるので状況がごちゃごちゃしてしまう。


「そうだ、乃絵さん。紹介したい人がいるんだけど」

「紹介……ですか?」

「乃絵さんをストーカーしていた人」

「ええっ!?」


 乃絵さんが驚きの声を上げて、隣に座る香織が目を細めて睨んできた。


「何を言ってんのよ、ステラ」

「落ち着いて。事情をちゃんと説明するから」


 殺気立つ香織をなだめて話を続ける。


「今は分かりやすくストーカーしていた人って表現したけど、彼は乃絵さんをストーキングしていたわけじゃないの。彼はね、乃絵さんの見守っていたのよ」

「それってストーカーがよくするいい訳じゃない」

「本当なのよ。彼はね、乃絵さんのご両親に頼まれて見守っていたらしいの」

「お父さんとお母さんに……ですか」

「彼は乃絵さんのご両親に恩があったらしくて娘である乃絵さんに危険が無いかと心配していたみたいなのよ。見守るやり方が間違ってはいたけどね」

「嘘じゃないの?」

「本当よ。ちゃんと確かめたわ」


 少し表現を変えてはいるけれども嘘は言っていない。


「うーーん、ステラが断言するなら事実なんだろうけどさ……どうする? 乃絵」

「……その人はお父さん達に恩があるんですよね」

「返しきれないほどの恩があるみたい」

「それってお父さん達が行方不明になってからの話ですか?」

「聞いた話だとそうね。乃絵さんの側から離れてしまった後ね」

「ならその時のお父さん達の話ってその人から聞けたりしますか。お父さん達がどう過ごしていたか聞きたいです」

「乃絵さんのお願いなら彼は断らないと思うわ」


 来栖君も今は辛い時期だろうけど、乃絵さんの両親の思い出話を乃絵さんにする事は辛さを緩和させる事になるかもしれない。

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