『やったかっ!?』フラグ
「どうだ!! チリすら残らんだろう!」
「そういうセリフって負け台詞よ」
おそらく自信のほどからしてウリガスの最大の攻撃魔法だと思う。バリアを展開しても後ろへと移動させられた。そのためウリガスから少し離れた場所に着地することになった。
「っ!?」
ウリガスは私が無事であることがよほどショックのようで口を半開きにして固まっている。自身が持つ最大の攻撃魔法の直撃を受けて平然としている人物がいるのだから当然かもしれない。
勇者殿達がよく『やったかっ!?』とか言って無傷の魔王軍幹部に驚いていたのを思い出す。
ウリガスが固まって動けないのでその間に私は探し物を求めて周囲に視線を送る。
そして見つけた。今まで見つけにくかったがウリガスが驚いているおかげだろう。
「そこね」
私は見つけた数百メートル離れている空中の一点へ移動して腕を突き出す。空中の何もない場所に私が突き出した腕分の穴が開く。私は穴の奥、別次元に隠れていたヤツの体を掴むと力づくで引きずり出した。
私の腕が開けた穴を中心に空間が割れて中からウリガスが現れる。
「ば、馬鹿なっ!? 私を見つけ、あの場所から引きずり出すなど……」
「ありえないとか言わないでね。実際に起こったんだからありえたの。隠れるのは上手かったわね。なかなか見つからなかったし」
「離せっ!」
ウリガスが私の手から離れようと攻撃を仕掛けてくるが全てバリアで防ぐ。
「離すわけないでしょ。ようやく見つけた本体なんだから。案外近くで助かったわ。完全に別世界とかだったら捕まえられなかったと思うし」
「別次元だぞ! 私以外は不可侵なはず」
「そうなの? 見つけられれば同じこと出来る人もいると思うわよ」
「絶対に見つかるはずがないのだよ!」
ウリガスのマントが私の体を縛り上げようと巻き付いてくる。また投げられるわけにはいかないので触れられたそばから浄化の炎で燃やしていく。
「私の前に現れたウリガスは全部分身。本体は安全な別次元に隠れていた。分身が倒されても本体であるあなたが無事なんだからまた作り出すことが出来る。相手からすればチリ一つ残さず倒しても復活するから本当に不死と思うわね」
「こ、来い! 分身!」
本体であるウリガスの呼びかけに分身が高速でこちらへと向かってくる。
「分身の相手はもうしないわ」
本体を掴んでいない方の手を分身へ向けて光魔法を放つ。分身は一直線に向かってきた光魔法を避けるが、光魔法は分身の動きを追尾していく。驚きながらも高速移動をこなして逃げ続ける分身だが、逃げるために本体との距離がどんどん離れていった。
「これで少しは邪魔が入らないでしょう」
「甘く見るなよ。また分身を生み出して襲わせてやる」
「本体だけで直接戦おうって気はないの?」
「その挑発に乗るものか。私には私の戦い方があるのだよ」
「確かにそれぞれにあった戦い方をすべきね。でもさっきも言ったけど私はもう分身を相手にしないの」
「っ! な、何をする気だ!?」
「あなたには聞きたいことがあるんだけど今はまだ落ち着いて話せないでしょ。だから話せるようになるまで封印させてもらうわ」
私がウリガス本体を掴んでいる個所を発端にウリガスの体に光の鎖が巻き付けられていく。
「なんだこれはっ、ち、力がぁっ!」
この光の鎖は捕縛した対象の力を奪い拘束する力を持っている。しかし、完全に鎖が体に巻き付かないと効力が発動しないので拘束する相手を弱らせないと使えないのが難点だ。実力がある相手であれば巻き付ける途中で鎖を引き千切ってしまうこともある。
今、ウリガスは弱っているわけではないがそれでも鎖を引き千切るほどの力はないようだ。
「このっ! やめろっ! 離せっ!」
「いや、そのセリフやめてくれない。こっちがなんか悪者みたいになるから」
光の鎖が完全にウリガスの体に巻き付いて簀巻きのような状態になる。もういいかとウリガスから手を放すとウリガスはそのままビルの屋上に倒れこんで動かなくなり一切の反応がなくなる。生きるのに必要最低限の機能以外を光の鎖が抑え込んでいるためだ。
「ちょっと冷静になってみると光の鎖って結構えぐいわね。気軽には使うのやめよう。そもそも戦う機会がなくなるといいんだけどね」
ウリガス本体を抑え込んだためか分身の姿が空中で霧散するように消えていった。分身を追っていた光魔法も標的を失ったことで効力も失っていき消えていく。
「こっちは終わったわよ、清隆君。そっちはどうかしら? ステラに何かして欲しいことある?」
見ると清隆の戦いは佳境に入っていた。




