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避難

「違うみたいね……一体何かしら?」

「あなたには無理よ。いくら考えても思いつかない理由よ」

「無理とか言われると挑戦したくなるのよね。神に出来ない事があるのは駄目でしょ」


 腕を組み思案を始めるラテスだったが、絡みついている鎖の力を少しも緩めることはない。動けない状況が続く中で映像の中で動きがあった。


「どうして鎖!?」

「ちぃ、クソ神か……仕方ない、我慢してくれ!」


 突然、来栖君が乃絵さんを両手で抱き上げる。


「えっ!? きゃぁっ!」


 驚きの声を上げる乃絵さんを奪おうと動く生野夫妻が姿を変えられた存在の腕を避けながら来栖君はマンションの窓から外へ飛び出した。来栖君は空中に魔法で足場を作って飛んで逃げてく。マンションの下には騒動で人混みが多くなってきたのか騒ぐ音が聞こえてきた。見上げていた誰かに来栖君の姿が見られたかもしれない。

 飛び出した来栖君と乃絵さんを追うように生野夫妻も飛び出していく。魔法は使えないようで近くのマンションの壁に張り付くと力づくで屋上まで登ると屋上を二人を追って行った。

 ラテスの映し出す映像も三人を追って行き、来栖君が公園内の雑木林へ降り立った所で止まった。


「ここまでくれば大丈夫だろ。なるべく遠くへ逃げろ」


 来栖君が乃絵さんを下ろして逃げるように促すが乃絵さんはその場にへたり込んでしまった。


「あ、足に力が入らなくて……」

「なっ!! 気合でなんとかしろ!」

「だ、だって急にお化け出てきて……高い所から飛び降りて、空を飛んで……ううぅ、何なんですかぁ」


 乃絵さんが状況についていけずに泣きそうになっていた。無理もない。普通の人が経験しなくていい事に短時間で遭遇してしまったのだから。だとしても今はなんとかしてその場から逃げてほしい。

 私と来栖君の願いが聞き届けられる前に生野夫妻だったモノが二人に追いついてしまった。


「……あぁぁ、のあぁぁぁ、がうぅぅぅ」


 生野夫妻だったモノはうめき声を上げながらゆっくりと近づいてくる。

 来栖君は乃絵さんを守るように立ちふさがると風の魔法を発生させて生野夫妻だったモノを遠ざけようとする。

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