敵の合体って大抵負けフラグ?
「捕まえた」
足元から現れたウリガスは私の足首を掴むと万力のような腕力で締め上げてきた。人間の足首なら骨は砕かれ握りつぶされているだろうけど、私の足首は多少普通より頑丈なので握り潰されはしなかった。
「!?」
「どうしたの? 握り潰すつもりだった?」
私の足首が潰れないことに驚くウリガスの顔を蹴り上げて、二人目のウリガスへ向かって殴り飛ばす。
「「頑丈な体だ」」
「しゃべるならどっちか一人にしてもらえない?」
二人同時に話す上に微妙にタイミングがズレているので聞き取りにくい。
「壊れにくい体ということで楽しめそうだよ」
「私は楽しむ気はないのよね」
視線をにやけ面のウリガスから外して一度清隆を確認する。屋上で突撃してくるソリダスの攻撃をなんとか躱してはいるが、反撃手段が見つからずに高速で空を自由に飛び回るソリダスに苦戦しているようだ。
「仲間が気になるか」
「まあね。負けるとは思ってないけど、苦戦してるみたいだし」
世界を救った勇者の一人がこの程度であるはずがないと私は清隆に過度かもしれない信頼を向けている。だが、清隆なら応えてくれるだろう。
「自分の心配をした方がいいですよ」
「……そうね。服が傷モノになると面倒だし」
「服が心配ならまずはその服を切り裂いてやりますよ!」
ウリガス達が同時に襲い掛かってくる。私は前へと進みながらウリガス達の間をすり抜け、同時に腹部と顔面を殴りつける。ウリガス達が殴り飛ばされていくのを横目で確認しているとさらにもう1人、ウリガスが新たに現れた。ウリガスは自らのマントを大きく広げて私の視界を覆ってくる。私はマントを貫こうと光魔法を放つが吸い込まれるようにマントへと吸収されていった。
「!?」
「それはもう効かない」
ウリガスは鋭利に伸ばした右手の爪で私の腹部を撫で斬った。
「さて、綺麗なお腹は無事でしょうか?」
「自分の爪の心配したら?」
近くに居たくないのでウリガスと距離を取った私に怪我はない。加えて撫で斬られた服にも傷一つ付いていない。逆にウリガスの右手の爪が全て中ほどから折れていた。
「なんっ……」
「服を狙っていると言われて何もしないわけないでしょ。持っている服少ないんだから。大事するために防御魔法くらいかけるわよ」
「いったいいつの間に」
「女神に魔法詠唱は必要ないのよ。思いたったら即効よ」
決まったと思っていた攻撃が通じずていなかったウリガスの表情が険しくなった。ウリガスは右手の爪を生やし直すと先に現れていたウリガス達を自分の近くに集め始めた。
「合体して大きくなるの?」
「大きくなりはしない。だが、強くはなる」
見ているとウリガス達の体が重なっていき1人へとなった。見た目は一切変わっていないので強くなったかどうかは私には分からない。
「さて、もう1人分だ」
合体したウリガスは最初のウリガスを捕まえている結界魔法に黒マントを大きく伸ばして包み込むと締め上げるようにして結界魔法を破壊した。簡易的とはいえ私の作った結界魔法を破壊出来るということは強くなっているのは確かなようだ。
ウリガスは結界から開放した最初のウリガスとも合体すると勝ちを確信したかのように鋭い牙を口元から見せて大口で笑顔を見せた。
「今までは余裕のようでしたがこれからはそうはいかないよ。単純に私の力は四倍と考えてもらっていい」
「四人集まって四倍って確かに単純ね。正義のヒーローなら百倍くらいはいきそうだけど」
「まだ余裕のようで」
ウリガスが予備動作なしに超加速して私の眼前に迫る。四倍かどうか分からないが確かに以前と比べ物にならないほどの速度だ。私の顔面を狙って突き出してきた右手の刺突を躱すが、それはフェイントだったようでいつの間にか両足にはウリガスのマントが巻き付いていた。
両足を掴まれた私の体は屋上から宙へと放り投げられる。両足にはまだマントが巻き付いており、ウリガスはこのまま拘束を続けるつもりのようだ。ウリガスは宙にいる私を睨みつけて力を貯める動作に入る。
「我が主に肉を捧げる。我が主に血を捧げる。我が主に魂を捧げる。我が主よ、力の末端を授けたまえ。我が主の逆らう愚か者を滅する力を」
ウリガスが呪文を唱える。高速詠唱なので一秒に満たない呪文だが私は全て聞き取れた。我が主ということはウリガスとソリダスの上には誰かがいるようだ。この二人が主犯だったら明日からまた自由気ままな生活にある程度は戻れたと思ったのに残念だ。
「バノヴァリスッ!!」
ウリガスが突き出した両手から放たれた深紅の巨大な光が私の視界全てを覆って襲い掛かってきた。
この女神様、いつまでも余裕である。
清隆君は割と苦戦してますが。




