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筋肉は水分でできている

「ステラさんっ!!」

「はいはい」


 清隆が力任せに投げつけてきた人影を結界魔法で鹵獲して宙に浮かべる。既に捕まえている3体ほどが結界内で元気に暴れまわっているのが少しうるさい。


「今ので最後ですか」

「そうだと思うわよ。この周辺にはもう何も反応がないわ」

「捕獲作戦上手くいきました!」

「そうね」

 

 私と清隆は夜のパトロールで黒い人影とまた遭遇していた。前回とそれほど離れていない場所での遭遇で相手は私達を警戒してないのではと疑問が浮かんだが、とりあえず捕まえることにした。前回のように分裂して逃げられると困るので人型の内に逃げられないよう私の魔法で捕まえる作戦は成功していた。


「捕まえたはいいけど……こいつら話せるのかしら」


 香織や他の人達に取り憑いていた使い魔とは会話が出来ていたが、今捕まえた黒い人影にはただ雑音のようにギギッと鳴くだけで今のところ会話が出来るとは思えない。


「ステラさんの話では使い魔でしたね?」

「ええ、こいつらも先日私が倒した奴らと主は一緒のはず。犯人が複数人居てほしくないからっていう私の希望が入ってる予想だけど」

「手口に多少の違いはありますが人から生気を吸い取るという点は一致してますし、これで別々の犯人というのはないと僕も思います」

「賛同してくれてありがとう。この手の使い魔が沢山いるのを相手にしたことは?」

「使い魔と限定されるとおそらくありませんが、魔物相手に多勢に無勢は常でしたからね。一対一よりも多人数を相手にする方が馴れてはいます」

「それは心強いわ」

「女神様であるステラさんに言われるとは光栄です」

「光栄に思わなくていいわ。加護とかあげられないし」

「ははっ、無用ですよ。僕にはこの肉体がありますから」


 見せつけるように清隆が上腕二頭筋に力を入れてバンクアップさせた。圧を感じたので思わず視線を鹵獲している使い魔達へと移す。結界には特に鹵獲したモノを傷つけるような効果は追加してないのでまだまだ元気だ。とりあえずダメもとで話しかけてみる。


「ねぇ、貴方達の目的は何? ご主人様のために生気を集めているのよね」


 私からの問いかけに顔を向けることすらせずにギギッとどこから出しているのか分からない鳴き声だけを発した。


「……駄目そうですね」

「そうね。こいつらはただ単に生気を集めるようにだけ作られた使い魔なんだと思う。会話する能力とか最初から不要として付けられていないんだわ」

「会話出来る使い魔もいると聞きましたが」

「人に取り憑く方ね。二種類いるのはなんでかしら」

「それは作った者が違うからだよ」


 突然真上から聞こえてきた声に清隆と共に警戒態勢に入る。周囲からの不意打ちを警戒しつつ見上げると夜空に影が二つ、一つは人型で、もう一つは大きな蠅が浮いていた。


「誰かしら?」

「私はウガリス。こっちはゾリタスだ」


 ゾリタスと呼ばれた巨大な蠅につい目を奪われてしまうが、ウリガスと名乗った方も異様な風貌をしていた。夜の月明りでも分かるくらいの色白の肌と銀色の髪に深紅の目。これで黒いマントを羽織っているのであの存在を連想しないわけにはいかなかった。 


「そっちの蠅さんは見た目通りだとしてあなたも見た目通り……ヴァンパイアかしら」

「私の一族は基本ノスフェラトゥと呼ばれているがそちらの呼び名も嫌いではないよ、お嬢さん」

「蠅さんの方はベルゼバブとか言わないわよね」

「蠅の王だったかな、その名は。こいつはそんなに偉くないよ」


 風切り音がしたかと思うとウリガスの左腕が宙に飛んだ。


「おいおい、怒るなよ。悪かった」


 左腕を失ったというのにウリガスは平然としている。彼がヴァンパイアで不死者だとすれば片腕を千切り飛ばされた程度はなんでもないってことね。


「お詫びに獲物を先に選ばせてやる。ん? あっちの男の方だと? 何々……肉が固そうで噛み応えがありそう? そうか? こちらのお嬢さんの方が柔らかそうなので私はお嬢さんが奪われるのかとひやひやしていたが……獲物が被らなくて良かった良かった」


 ウリガスとソリダスは会話をしているようだけど、私の耳はウリガスの声しか聞こえてこない。そしていつの間にかウリガスの左腕は何事もなかったかのように生えていた。


「清隆、突然現れた奴らに一方的に襲われそうだけどどうする?」

「どうするも何も望むところです。事件の手がかりが向こうから来たのですからね」

「頼もしいわ。私、蠅というか昆虫がちょっと苦手だからお願いね」

「任されっ!?」


 清隆は言葉を最後まで言い終わる前に私の前から姿を消した。消えた先を視線で追うと一瞬にして遥か上空へ清隆の巨体がソリダスの体当たりを受けて飛ばされていた。ソリダスが空中で身動きが取れない清隆に追撃をする動きを見せていたので助けるために魔法を放とうとしたけど、放とうとした魔法の直線上にウリガスが現れた。


「お嬢さんの相手は私ですよ」

「相手になるかしら」


 私はウリガスごと打ち抜くつもりでビームのような光魔法を放った。

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