一人暮らしで自炊するのはだいたい最初だけ説
「ステラさんはお料理されますか?」
「ステラは全然ね。一人暮らしを始めた当初は作っていたけど手間とかいろいろ考えると外で買ってきたり、食べに行った方がいいってなってしまったわ」
「確かに今はコンビニとかレトルトとかもあって楽ですからね。それでも私は手料理をなるべくしていたいんです」
「こだわりがあるのね。良かったら今度食べさせてもらってもいいかしら」
「えっ、私の料理ですか?」
「嫌かしら」
「そんなことは……他の人に料理を食べてもらったことがないので」
「そうなの? 確かお祖父さんお祖母さんと暮らしていたって聞いたけど」
「おじいちゃん達にはありますけど、友達とかには……あれ? 私がおじいちゃん達と暮らしていたって言いましたっけ?」
「え?」
しまった。
清爛警備保障に調べてもらった乃絵さんの情報で一方的に知っていたのでつい話題に出してしまったけれど、確かに乃絵さんの口から家族事情などは聞いていない。両親が行方不明だということは普通は言わないし、言えないだろう。
「えーっと……聞いてなかったかしら? 香織から聞いたのかもしれないわ」
「宮田さんから……彼女には話した事がありましたけど」
つい香織の名前を出してしまったけれど、香織が友人のプライベート情報を気軽に話す子だと思われて嫌われてしまうかもしれない。弁解しなくてはいけない。
「ステラがちょっと強引に聞き出したの。ストーカーを捕まえる上で情報が欲しくて。ごめんなさいね。直接聞けば良かったわね」
「気にしないで下さい。別に隠している訳でもないので」
「それでも本人が居ない所で聞く話じゃなかったわ」
「本当にいいんですよ」
乃絵さんは笑顔で許してくれたが勝手に調べた事実があるのでどうしても後ろめたい。
「あっ、でもそれじゃお詫びにやっぱり荷物持ちしてくれますか。お米も買いたくて」
「お安い御用よ。10キロでも100キロでもいいわよ」
「100キロは売っていませんよ」
乃絵さんの買い物に付き合ってそのまま荷物持ちとして彼女の部屋に尋ねることになった。
乃絵さんの部屋は広さ的にも内装的にもそれほど差はなかったが、キッチン周りが沢山の調理器具や調味料が置かれているのに散らかっておらず綺麗に整理整頓されていた。おかげで調理器具一つ、調味料一つがインテリアのようにすら見えた。
大事に丁寧に使っている証拠だろう。




