「娯楽」って人間の心を楽しませ慰める活動を言うらしい
「それじゃステラの反撃ね」
私が攻撃動作に入ったのを感じて女性が距離を取り、同時に四肢を締め上げる鎖の締め上げが強くなった。でも、そもそもの問題として私を捕まえておくには鎖の強度が足りない。私は鎖を引き千切ると距離を取ろうと後ろに下がった女性を追撃する。追撃してきた私に対して女性はおそらく闇属性系の魔力弾を打ち込んできた。闇属性と判断したのは色が黒だったからだ。
魔力弾を片手で防いで女性に迫ると腹部に掌打を打ち込む。苦悶の声を上げてもたれかかってくる女性を支えながら4人1組で背後から襲い掛かってくる男性陣を足で蹴り飛ばす。少し強く蹴ってしまったけど、男の子なので大丈夫だろう。道路や住宅の壁に叩きつけらえた4人が起き上がるより先に私は四人の顔を叩いて回る。
「ふぅ……」
一息付く私の周囲には青白く光る玉が5つ浮かんでいる。私は仕上げとして青白く光る5つの玉を魔力で作った鳥かごのような檻に閉じ込める。
「なっ、なんだこれはぁ!!」
青白く光る玉の一つから聞こえてきたのは先ほどまで女性から聞こえていた声だ。
「何が起こったか分からない?」
「貴様、何をした!?」
「あなたがさっきステラにやろうとしたことよ。ソウルテイカー<魂狩>。でも見よう見まねだから本物とは仕様が違うとは思うけど、人に取りついていた貴方達を引きはがして魂だけにしたの」
「馬鹿な。我らに対してこうもたやすくできるわけが」
「実際出来てるんだから観念しなさい」
「……我々をどうするつもりだ」
「消えてもらうわ。この世界の人達に自分達の都合で被害を与える貴方達にこの世界での居場所はないの」
「……」
命乞いがあるのでは思っていたが魂だけとなった5つの彼らは誰もが口を閉ざして覚悟を決めたようだ。だけど、私の目的はこの後だ。ただ消すだけならとっくにやっている。今回はちゃんと目的を聞かなくてはいけない。
「人を襲って何をしているの? 生きるため? 生気を抜き取っているようだけど。最近同じような手口が他にもあるけどそれも貴方達のお仲間?」
「素直に答えると思っているのか?」
「思ってないけど……自分達で勝手に行動目的を説明した後、裏にいるボス的な存在を匂わせるパターンもあるから一応聞くのよ」
「何を言っている?」
「貴方達、この世界のドラマとかアニメとか見ないの?」
「そんなもの見るわけがないだろう。不必要だ」
確かにこの世界で生活していく上で必要か不要かと言われれば不要だ。だけど、それでは生活していて面白くない。
「この世界を面白いって感じたことある?」
「? 何を言っている」
「意味が分からない? そもそも楽しいとかの感情がないタイプ?」
「何が言いたい、さっきから」
「……今まで襲ってきた人達に対してわずかにでも罪悪感的なものがあるかなって」
「ふっ、あるわけがないだろう」
「そう」
笑い捨てるような声を聞いて5つの魂のうち、同調して笑っていた魂を含めて計4つ消滅させた。残った魂は1つ。
「貴方だけが残ったのは偶然よ……答えられる範囲でいいから全て話しなさい。目的、他の仲間について」
「無駄だ。我らは何も知らされていない。ただ人を襲い生気を吸い取り献上しているだけだ」
初めて聞く残った魂の声は少しイケボだった。
「献上ってことはボスがやっぱりいるのね。ボスは誰」
「何も知らせていないと言った。ただ我らは行動するのみ。目的を実行するだけだ」
「……専用の使い魔?」
使い魔であるなら主人に決められた役目のみを果たすため、主人の名前や姿を知らなくても行動するのは理解できる。しかし、問題は使い魔の数だ。1人に対して使い魔は1体が普通のはずなのに、これまで私が相対してきたのは香織に取りついていた奴と今回の奴らを合わせて6体。加えて清隆と一緒にパトロールしている件の犯人達とこいつらは生気を吸い取るという同じ手口を使っている。全て同じ主の使い魔だと仮定すると遭遇していないだけで他にも同じ主の使い魔が複数いる可能性は大きい。
この使い魔達の主人はかなり大きな力を持っていることは間違いない。
「どんどん大事になっていく気がするわ」
これ以上話は聞けないだろうと残った使い魔の魂を消滅させる。使い魔である彼らには善悪の判断基準がない。ただ役目を果たしているだけだ。そう考えるとただ無言で消えていく彼らに対して多少の哀悼を感じる。
暗く沈みかけた気持ちを切り替えるために頭を振る。
「コンビニ行く前にこの人達の治療しないとね」
私は倒れている人達を回復魔法で一通り治して近くの公園のベンチに寝かせた後、ようやくコンビニへと向かった。




