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バカンス三年目の女神

初めての方初めまして。

これからよろしくお願いします。

なるべく定期的に更新していきます。

<拝啓、こちらの世界では手紙の最初にはこの文言を付けるらしいので付けてみることにするわ。相手に敬意を表す意味があるらしいけど……貴方達に対して敬意は私なりにあるんだけど、これはむしろ貴方達が私、女神ステラに向けるモノなんじゃと思ったりするの。まあ、別にいいわ。

 勇者殿が魔王を倒して私の世界を救ってくれた後、休暇のために勇者殿の世界へ来て既に三年経つのね。正直あっという間。この毎月書いている手紙もよく三年も続いたものだと自分自身で感心しているわ。貴方達もどうせ三ヶ月ほど続けばいいだろうと考えていただろうがそれは私も。休暇の予定は百年。つまりこの後、九七年も続くかどうかは期待しないで。知っての通り、私は飽き性だから。

 前置きはこの辺で。

 私の近況だけど先月から特に変化はないの。こちらの世界へ来て一年目というか数か月は住居やら生活費の調達に苦労したけどもう慣れたし。勇者殿が住んでいた日本という国が比較的に生活しやすいおかげなんだけどね。住宅の中は魔法を使わなくても年中快適だし、お腹が空けば深夜だろうと空いている店で調達できるから。治安についてはトラブルがまったくないとは言わないけど、少なくとも魔物や魔族に襲われるようなことはないわ。

 娯楽については毎月知らせている通りこの世界の娯楽はそちらの世界では想像出来ないほど発展しているわ。貴方達は手紙とは別に送っている情報を元に似たような娯楽を作って。無理とは言わせないから。期間は九七年もあるのよ。必要な情報があれば返信で知らせて。用意して送るから。

 後、何を書くべきかしら。

 そうだ、勇者殿に報告。あなたのご家族について。妹さんが大学を卒業して就職したらしいの。ご両親についても特に不自由している様子はないし、これからも目の付く範囲で勇者殿の家族について報告させてもらうわ。以前の手紙で勇者殿は気を遣うなと書いていたけど、これは勇者殿が世界を救ってくれたお礼……いや、無理やり勇者殿を私の世界へ転移させたことへの贖罪の意味が多いの。

 勇者殿がそちらの世界での生活を選び、元の世界への帰還を断ったことについては何も言わないわ。ご家族の話をされて悲しくなるというのならもう書かないから。勇者殿の意思を尊重する。

 少々真面目な文章を書いたので飽きてきました。

 今回はこの辺りで。貴方達の方から世界の復興状況報告も楽しみにしているのよ。ステラの神殿の建て替えが終わったら完成画を送るように。イメージと違ったら建て替えだからね>


 手紙を書き終えてペンを置く。読み返して誤字脱字が無いことを確認すると用意してあった白い便せんへと折りたたんで入れる。女神の手紙に誤字脱字があったら尊厳にかかわるからね。文章の口調については気さくな私の性格ということで問題ないけど馬鹿だと思われるのは嫌だ。


「書いてからさっさと送ってしまおうっと……郵便係さん」


 私が高らかに手を二度叩いて呼ぶと部屋の隅から小指ほどの身長をした小人が五人現れた。赤青黄色緑黒とそれぞれに色分けされた三角帽子とベストと短パンで着飾った彼ら彼女らは異世界間の荷物を運ぶ郵便係だ。

 異世界、異なる世界間。今、私がいる勇者殿が元いた世界と私が女神として治めている世界のことだ。

 本当なら小人達は異世界間の行き来はできないけど、私、女神ステラから世界間を行き来する転移の力を授けている。転移は行き先の座標固定を正しくしないと変な所へ飛ばされてしまうから、最初から入口と出口を固定してそこにしか転移できないようにしたことで小人達でも扱えるようにしてある。


「では、これをお願いね」


 小人に手紙を渡すと四人が手紙の端を持ち、一人が行き先を先導する形で歩き出した。何度見てもお遊戯会の行進みたいで微笑ましい。部屋の壁際まで歩くと先導のしていた小人が他の四人に静止の合図を送る。四人の小人がぴたりと足を止めたのを確認すると先導していた小人は壁に向かって扉を両手で開けるような動作をする。すると壁に小人達用とでも言うべき小さな扉が現れた。異世界間を繋ぐ扉だ。先導役の小人は扉を開けると他の四人に呼び掛けて再び行進が開始された。小人達全員が扉の奥へと入っていくと扉が自然と閉まり、扉自体も消えていった。

 小人達を見送った後、今月のノルマ達成したことへの喜びを表すために大きく体を伸ばす。椅子に座っていた時間で固まっていた体の節々が伸びてイタ気持ちいい感覚が全身を走る。


「んん~~」


 歓喜の声を漏らしながら椅子から立ち上がり、すぐそばに置いてあるソファ兼ベッドへと倒れこむと枕元に置いてあったチャンネルに手を伸ばしてテレビを付ける。放送されているニュース番組を直ぐに切り替えて契約している定額動画配信サービスの画面へと移動させた。


「えっと、八話まで見たから続き続き」


 ここ数か月、日本以外で放映されている海外ドラマにハマっている。最初は何気なしに見始めたのだが、毎話の引きがよくて気が付くと一日中テレビの前にいることもあるほどになっている。

 寝て起きて海外ドラマを見て、眠くなったら寝てという生活スタイル。

 自堕落だとは思うが休暇中なのだから問題ない。

 

「今日は何話まで見れるかな」


 壁に掛けてある時計を見ると午後二時を過ぎていた。ドラマは一話約四十分。今日は寝るまでに二十話くらいは見れる。

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