過去の事実
「広瀬、話が終わったならステラさんに資料を渡してくれ」
「資料?」
「共食いについてだ。端末を渡して見てもらえ。鈴野さんからステラさんにもいい加減に詳細な情報を連携した方がいいってなっただろ」
「そうでしたね。えっと……これですね」
頼子ちゃんが自身の膝に置いていたカバンから板状の携帯端末を取り出して少し操作すると私に差し出してきた。差し出された携帯端末には以前海岸で出会った男に似た男の顔写真が映し出されていた。写真の横には名前が書いてあり、若園弘達と表示されていた。
「この若園という男が共食いなのね」
「若園弘達。元々はフリーの霊能力者で同業者の仕事を横から奪うようなことして報酬を掠めてとる仕事っぷりからハイエナとか共食いとか呼ばれていたみたいです」
「共食いってそういう意味だったのね。もっと怖い方を想像してたけど」
「ですよねぇ。ニュアンスがもう怖いですもん」
「赤崎君や鈴野さんは共食いのことを良く知っているみたいだったけれど、頼子ちゃんは知らないみたいね」
「一応会ったことはあるんですけど……少し顔を合わせたくらいなので。それも今みたいになる前でしたし」
端末を操作して若園の情報を読んでいくと彼の生い立ちから細かく記載されていた。
若園弘達の家は稼業として霊能力者をしていたが、若園が小さい頃、両親が仕事の最中に亡くなってしまい、小中高と苦労した学生時代を過ごしていたらしい。高校卒業後は霊能力関連の仕事を始めたが職場を転々としており、一時期は清爛警備保障にも入社していたようだ。鈴野さんとの縁はここからだろうか。
会社で仕事することが困難だった若園はフリーで仕事をすることを選択して仕事内容に問題がありながらもそれなりに活躍をしていたらしい。
情報を読んでいく中で最近聞いた単語が不気味に出てきたので読むのを止める。
「呪術教団に捕まって蟲毒に巻き込まれた?」
「……」
読み上げた私の疑問に頼子ちゃんも赤崎君も答えにくそうに口を強く横に結んでいた。
赤崎君はまだ想定内の反応だけれど、頼子ちゃんまでもとなると想定外の反応だった。
「えっと……頼子ちゃんも蟲毒とかに何か関係があるの」
「……」
「そこは俺が話します」
話しにくそうにしている頼子ちゃんに変わって赤崎君が先に口を開いた。
「共食いが蟲毒に巻き込まれた件ですが呪術教団の本来の狙いは俺と広瀬だったんです」
「え?」
またしても予想外の言葉が飛び出てきた。
「つまり共食い、若園弘達は俺達の代わりに蟲毒に落とされたということです」




