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見えてないだけで厄介事は常に起こっている

 香織と渋谷駅で別れた後、運動もかねて自宅まで歩いていると嫌なモノが視界に入った。裏路地の奥に連れ込まれる二人組の男女だ。四人の大柄な男に囲まれてながら人目の付かない場所へ押し込まれるように裏路地のさらに奥へと消えていった。

 見てしまったのだから放っておくわけにもいかない。

 休暇中なので極力厄介事には関わらないでいるけど、香織のように目の前で困っている人が居る場合は別だ。見て見ぬふりはできない。

 消えた二人を追って裏路地へ入っていくと街灯もなく陽が沈んだこともあってほぼ暗闇が広がっていた。商業ビルの窓から漏れ出る光はあるが、路地を照らすほどの光量はなかった。

 本当に真っ暗になってしまう前に私は暗闇でもよく見えるように魔法をかける。昼間と変わらない視界になった中を歩いていくと路地の突き当りで男女が倒れているのを見つけた。しかし、二人を連れ込んだ男達の四人の姿はない。

 姿がない男達を気にしつつ、急いで駆け寄って倒れている二人に怪我は無いか確認する。見た目に外傷は特になかったが、二人共酷く疲弊した顔をしていた。体温も著しく低く、このままでは命が危険だと直感した。応急処置として回復魔法をかけようとした時、背後に気配を感じた。今の今まで姿が見えなかった大柄の男達だということは振り返らなくても分かった。


「餌がもう一匹増えるとは嬉しい限りだ」

「餌?」


 私の発した疑問に答えるそぶりはみせず、男達の一人が私の肩に触ってきた。

 次の瞬間、私の肩を触った男の腕から激しい炎が立ち上がり路地を明るく照らした。


「うあああっ!! ああっ! 腕が! 熱い!熱い!!」


 腕を燃やす男は火を消そうと必死に腕を振り回すが炎の勢いは小さくなるどころかますます増していった。


「女神の肩に許可もなしに触るなんて罰当たりだからよ。その腕、浄化されるといいわ」

「貴様っ! 何者だ!」


 残った男達三人が声を揃えて聞いていた。こういった展開は久しぶりな気がする。香織に取り付いていたヤツは問答無用で消してしまったからね。


「言ったでしょ。女神よ、女神ステラ」

「女神だとっ!?」

「貴方達は何者かしら? 少なくともこの世界の住人ではないでしょ?」

「……」

「答える気はないっと。まあいいわ、興味はないし。この二人は返してもらうわよ。それから貴方達もこの世界には危険だから排除するわ」


 男達の行動は早かった。腕が燃えて混乱している男を私の方へと突き飛ばして視界を狭めると二人が左右から路地の壁を蹴って襲い掛かってくる。残り一人は見えないが突き飛ばされた男の背中に潜んでいることは分かっていた。そしてやろうとしていることも。

 左右から襲い掛かってきた男達は私を左右から挟むように捕縛して身動きを奪う。そして突き飛ばされてきた男の腹部を突き破って鋭利な爪が私の心臓目掛けて現れた。


「っ!?」


 息を呑んだ驚きの反応を男達全員がした。動きを封じた上での腹部を貫いての予想外の攻撃。私を倒せると確信していた一撃は私に触れる前の空中で静止していた。

 直前で防御魔法を展開しておいた。プロテクションとかシールドとか呼び方は多々あるけれど、科学が発達しているこの世界に習って今回はこう称することにする。


「バーリアっ」


 今の私はそこそこなドヤ顔をしている。

生まれて初めて「バリア」と叫んだのはおそらくおにごっこの亜種であるこおり鬼だったと思う。

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