チョコも重いし、話も重い
全て食べきった後に香織の顔を見ると少し辛そうに見えた。甘いものは好きじゃないと言っていたし無理をしたのだろう。残していたジャスミンティーを一気飲みしてようやく落ち着いた顔になった。
「ふぅ、見た目よりボリュームというかチョコが意外にきつい」
「濃厚だったから結構重かったわね」
「でも、美味しかったし。見た目もいいし流行るの分かるわ」
香織はスマホを取り出して操作を始めた。味の感想をSMSに乗せるのだろうか。
「ステラとしても久しぶりに外出した甲斐があったわ。誘ってくれてありがとう」
「お礼はいいって。一応世話になった私の礼でもあるし」
「そのお世話して今寝泊まりしている場所はどう? 見た感じでは良さそうだけど」
「豪華ホテル! っては当然いかないけどさ。普通の民家だし。でも個室はあって比較的自由にさせてくれるし。時々ある話し合いはちょっと嫌だけど」
「話し合いってどんなの?」
「これからどうするかって話と私の事情を聞かれるの。今のところはごまかしてるけどさ」
「なんで? 専門家だと思うからきっと力になってくれるわよ」
「だとは思うけどさ。一応筋は通したいっていうか」
「筋を通す?」
「これも説明しないと駄目?」
「いや、まあ話の繋がりでなんとなく意味は理解できるわ。香織にとって正しい行動をしたいってことよね」
「正しいかどうかは分からないけど……まずはステラに話しておこうって」
「私に?」
「他人で一番最初に私にちゃんと声をかけてくれたしさ。助かったし」
「そう、助かったの。ならステラは満足」
一人助けられた。この事実を助けた本人から聞くことがなにより嬉しい。
「勝手に満足するなっての。これからが本題だってのに」
「聞きましょう、本題。話してくれるなら聞く」
香織はジャスミンティーを一口飲んで呼吸を整えた。
「私の母親はいわゆる教育ママって奴でね。小さい頃は勉強勉強で殆ど同い年の子と遊んでなかった。それでも小学校の頃は母親を喜ばせたくて頑張ってきたけど、中学でちょっと頭のいい所に入ったら急に駄目になった。勉強に着いていけなくなってテストなんかは散々で学校から帰ると毎日怒られてた。一度父親に助けを求めた事があったけど、母親の言う事をちゃんと聞かない私が悪いって怒られた。そっからはもう駄目。中学はなんとか卒業したけど、高校は行きたくなかった。けど……どこでもいいから行ってくれって母親に土下座までされてね。プライドないんだろうなって。で、当て付けもかねて一番頭悪そうな高校に入学したのよ」
「香織の学校、頭悪いの?」
「いや、悪いっぽいってだけ。実際に入ってみたら普通に頭いい奴もいたし。まあ、アホなヤツもいたけど。そういう意味じゃ普通の高校、学校でね。ようやく学校が楽しいって思えたんだ。でも、そこに母親がね。モンスターペアレントってやつ……あ、意味分かる?」
「分からないけど、いい意味じゃないことは分かるから続けて」
「何かあると学校に来てね。うちの娘はこんな所にいる子じゃないとかもっと勉強のレベル上げてとか教師やあげくは校長とかに食って掛かるの。もう学校中の噂で私は腫れもの扱いでまともな学校生活送れなくなりましたっとさ。で、いろいろ嫌になって家出してた。昼間、母親が仕事でいない時とかに帰ったりしてたけど。ともかくこれが私の事情」
「……正直なんて言っていいか分からないわね」
「何も言わなくていいって。私が話したかっただけだし」
「でもね。ステラとしては慰めの言葉一つくらいは言わなきゃいけない立場なの」
女神として悲しそうな顔を浮かべる人間は救わなくてはという想いが胸をあふれさせる。だけど、私の世界にはなかった、この世界独自の家族問題に何を言っても的外れになりそうな予感しかしなかった。だから、私は聞くことにした。
「ねえ、香織。あなたはステラに何をして欲しい?」
「……それ。始めて会った時にも聞いてきたよね」
「ええ、香織がして欲しい事をしてあげる。なんでもは無理だけど、香織がして欲しい事をしてあげる」
「もうしてもらった後なんだどなぁ」
「寝床とお金?」
「そう、お金は違うけど寝床はくれた。久しぶりにベッドで熟睡できる。家じゃ眠れなかったし、家出中は寝てる気しかなったし」
「全部は叶えられなかったわ。お金は無理だったもの。だからもう一度聞きたいの」
「して欲しい事ねぇ。あっ、この後一緒に写真撮ってよ」
「写真?」
「そうツーショット」
「それくらいでいいならいいけど。それでいいの?」
「いいの。して欲しい事してくれるんでしょ」
「……分かったわ。香織がして欲しい事なら」
お店を出た後、私と香織は渋谷の人気スポットや可愛い建物の前などで写真を撮りまくった。中には私の世界の人々に見せられない表情の写真もあったので取り扱いには注意したい。
書いててこんな家庭嫌だなっとなりました……(じゃあ、書くなよ)




