服に興味なくても外出用に一着はあった方がいいよね
渋谷駅前は天気がいいのもあってか人がごった返していた。駅前のスクランブル交差点の信号が青になると一気に人々が波のように三方へ歩き出していく。駅に向かってくる人波もいるので交差点上ですれ違うことになるが、よくぶつからないなっとこの光景を見るたびに思う。
私は少しでも人混みを避けようと改札から離れた木陰に避難している。久しぶりに太陽が高い時間帯に外に出たせいか日差しが痛いからだ。女神として太陽の光でダメージを受けるのはいけないとは思うので近いうちに改善したい。
木陰で休憩をしつつ、呼び出した当人である香織の姿を探す。人が多くても香織の姿を見つけるのは簡単だ。最初に出会った際、もしもの時ようにと魔法でマーキングをしてある。簡易的な魔法だが、効果時間は一ヶ月と長くて日本本土の範囲であれば探索の魔法を使うと対象までの距離と方角を知ることが出来る。
さっそく探索魔法を使うと南東10メートルにいることが分かった。
意外に近い。
南東へ視線を向けると駅ビルの壁に背を預けている香織の姿を見つけた。学校帰りらしく制服姿だ。合流しようと近づいてくと香織が二人組の男性に声をかけれていた。ナンパだろうか。香織は露骨に嫌な顔をしてナンパを追い払うと私を見つけたのか笑みを浮かべた。
「ステラ、遅い」
「いきなり呼び出されたのよ、無理言わないで」
「たまには外に出る用事をあげようという私の気遣い。太陽の光浴びないと体に必要な栄養できないんだって。今朝ニュースで言ってた」
「ニュース見るのね」
「見るわよ。といっても他の子が見てるのを一緒になんだけど」
「他の子ってシェルターの子達?」
「そう。年も近いから結構仲良し……だと私は思ってる。無口な子もいるからさ」
「その子達の話はもう少し落ち着いた場所でしましょ。日差しがきついからお店入りたいわ」
「吸血鬼か何か?」
「女神よ」
「あははははっ!! 急に何!? 女神って!! ステラって本当に面白いわ」
香織は冗談だと思って笑い出す。本当の事なのだけど信じてもらえるわけはないので冗談ということにしておく。
「で、ステラを呼び出したのは何の用なの?」
「あー久しぶりに本気で笑ったわ」
「呼び出した用は何? 笑われるだけなら帰るけど」
「ごめんごめん、ちょっと行きたいカフェがあるんだけど一人だけだと寂しいからさ」
「流行っているカフェなら学校の友達と行かないの?」
「それを聞く? 言っちゃうといろいろあって友達と疎遠中。理由は察して」
「察せられないけど聞かないでおくわ」
「察してほしいんだけど……」
「いや、無茶でしょ」
女神の力で心を読むこともできるが非常時以外はしたくない。
「カンが鈍いわね、ステラ」
「帰るわよ」
「ごめんごめん。カフェ行こ」
「……分かったわ。流行サーチもいいでしょ。いろいろ新しいモノは見たいし」
美味しいメニューがあれば私の世界にも流行らせたい。
「じゃあ、お店はこっち!」
陽気な香織の先導されて私は渋谷の街を歩きだした。
賑わっている通りを抜けて人通りが若干落ち着いた脇道に入ると行列が出来ているカフェがあった。
「香織、あのお店?」
「そう。人気でいっつも並んでいるの。一人で並ぶのも暇なのよね」
「私は暇つぶし要員?」
「いいじゃない。ステラの分からない単語とか教えてあげるからさ。この前のアオハルとか」
「ずっと気になっていたし。この際だからいろいろ聞いちゃおうかな」
「はいはい、じゃあ、並ぼう」
店の前には私達と同じような女性グループが並んでいて楽しそうに会話をしていた。来ている服もおしゃれな服装で正直ほぼ部屋着であるシャツ、ズボンの私は浮いているような気がした。
今度、出かける用に服を買っておくべきだろうか。




