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女神ステラの世界が救われた話をしよう-立て直し-

 宿営地は神殿から少し下った所にあるらしい。来る時に気付かなかったのは気落ちしていたからだろうか。


「近くなら歩きでも良かったんじゃない?」

「馬車があるんだから有効活用だ」

「楽しすぎると太るわよ」

「安心しろ。運動というか稽古はしている。スティルグに模擬戦で勝ちたいからな」

「正直難しいんじゃないかしら」

「いいや、最近はいいところまで攻められているから近いうちに勝てる」

「諦めないのは美徳だけどね」


 勇者殿は充分に強い。女神の加護を抜きにしても実力は世界で上位だろう。だけれどもスティルグの実力は勇者殿の上をいく。元々ミグリットで指折りの実力者だったけれども旅の中でさらに力を付けていき、魔王軍の幹部を一人で打倒するまでになった。

 今、世界でまともにスティルグと相対できるのはライザックを含めて数人だろう。


「互いに剣なら俺にも勝ち目がある」

「スティルグは槍を使わないのね。それならなんとか……ってそれでいいの?」

「いいんだよ。正直才能が違うのは分かってるからな。だた一回くらい模擬戦で勝ちたいだけだ。どういう条件でも勝ちは勝ちってスティルグ自身が言ってるしな」

「お互いがいいならいいけど」


 話をしていると馬車が止まった。宿営地に着いたようなので降りるといくつかの大きなテントが設営されていた。その中の一つにミグリット王家の家紋が付けられたテントがあり、勇者殿が入っていった。私も続いて中に入ると外から見るよりも広く何個かのテントを繋げて専用の部屋を作っているようだった。

 テントに入ったばかりの場所には大きめなテーブルが設置されていていかにも作戦会議をするような場所として作られていた。

 勇者殿が私とテーブルを挟んだ位置の椅子に座ったので私は対角線上にあった椅子に座った。


「まずは神殿の立て直しの件な。各地の教会、神殿を優先しているからここの神殿はだいぶ後になる。それでも資材なんかは運んでおいて始める時は一気に立て直しできるように進める予定だ。これでいいんだよな」

「ええ、まずは人々に身近な所にある教会や神殿から頼むわ」

「いつになるか分からないぞ。ここの神殿を何より先に立て直して欲しい歎願も来てたりするから王国としては急ぎたいんだけど」

「仮に今立て直しても人が来れるようになるのはまだまだ先でしょ。世界中を回ってよく分かったけれど生活がまだまだ安定してないわ。主要都市はともかく地方がね」

「分かってる。国としても今はそっちに力を注いでいるよ。ミグリット以外も同様だ」

「そうしてちょうだい」


 まずはなにより人々の生活が元通りになることが優先だ。ここの神殿は信仰的には重要なのは分かっているけれど、生きていくために必要ではない。身近な教会や神殿で充分に代用できるはずだ。


「じゃあ、この話は終わりだ。当初の予定通り進めていく。次はステラが世界中を飛び回っている件な」

「迷惑をかけていると実感しているわ。偽物の件とか」

「まったくだよ。偽物が人を騙して金品巻き上げるっていう事件が多発してな。収拾には一苦労だ」

「私の偽物が現れるなんて考えもしなかったわ」

「俺もだ。女神様を語るなんてこの世界では禁忌だろ」

「別に禁じていたわけではないけれど、以前はいなかったはずだわ。もっとも以前の私は神殿の外に出ることはあまりなかったから今回のようなことが起こらなかっただけなのかもしれないけれど」


 何か特別な祭典の時だけ神官達に誘われて各地を回ったことを思い出す。年に数回、神殿の外に出ればいい方だった。

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