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女神ステラの世界が救われた話をしよう-口げんか-

 アフリードが騎士団長を収めるように片手をあげて咳ばらいをした。


「話が反れてしまったな。英雄の方々には良ければいつまででもこの城に居てもらって構わないのだがそれぞれやるべき事がある以上は留めておくわけにもいかないだろう。ライザック殿は各地の平定。エメオール殿はエルフの方々と人々の交渉役、今日この場におられない方々も多忙で。私個人としては世界を救った方々なのだから今後はゆっくりと過ごしていただきたいと思っている」

「アフリード王よ。お気遣いには感謝いたしますが、我々はそれぞれ為すべきことをしただけのこと。魔王討伐は特異なことでした。今ようやく平穏な生活に戻れたと思っています。私の仕事は荒事ですので平穏とは言えませんが、それでもかつてよりはと思っています」

「私は出来るなら一人で暮らしていきたいんだけど。交渉事とか面倒だし……」


 アフリードの言葉にライザックとエメオールがそれぞれ答えた。


「そうであろうな。英雄の方々のその志があったからこそ魔王を倒せたのだろう」

「陛下……いえ、ちち……うえ。そうではありません。以前もお話ししましたが最後の最後はこの世界に住む人々が平和を望んだ想い。それが自分の、皆の力となったからこそ倒せたのです。自分達だけの力ではありません」

「想いをまとめたのはユウマ。そなたの力だ。女神ステラによって召喚された無関係である異世界のために命懸けで戦ってくれたそなたの姿に皆が想いを託したのだ」

「自分ばかりを過剰に褒めないでください。自分以外の皆だって同じくらい、いえ、同じ以上に命懸けだったんですから」

「俺は別に命掛けてなかったぜ。何があっても生き残る気でいたからな」

「スティルグはそうだったかもしれないが……ん? でも、何度か危ない場面で最後まで残って戦ってたよな」

「他の奴らなら死んでた場面だっただけだ。俺は強いから生き残る自信があった。それだけだ」


 自信満々に胸を張るスティルグに私達は苦笑いを浮かべる。あの旅では何度も命を落としかけたけれど、スティルグのおかげで命拾いした場面も確かに何度もあった。だけれどスティルグ自身もその度に重傷を負っていたので気軽に言ってのけるほど楽なことではなかったはずだ。


「アフリード王。私達を褒めるよりも自分の国の騎士をちゃんと教育した方がいいわよ。こいつのせいで何度か犯罪に巻き込まれたことあるんだから」


 エメオールの愚痴にアフリードは言葉を詰まらせて額のしわを強くした。


「その分、命を助けたこともあるんだからいいだろ?」

「いいわけないでしょ。ステラ様と私なんて牢に入れられたことあるのよ!」

「助け出しただろうが。後その件の後で死ぬほど俺を殴っただろう、おまえ。何時までも根に持つなよ」


 エメオールとスティルグの口喧嘩が熱くなっていく。いつもならアルガトがほどよい具合に仲裁してくれるのだけれど、彼がこの場にいない以上は私がするしかないだろう。


「はい、そこまで!」


 二人の間に入るように移動して口喧嘩を無理やり中断させる。


「一国の王の目の前で口喧嘩をするものじゃないわ」

「ですが、ステラ様」

「牢屋に入れられた件は確かに大変だったけれど、あの時エメオールと二人だけでいろいろと話せたのはいい出来事だったわ。あなたは違う?」

「そ、それは大変良い出来事でしたけれど……あんな場所じゃなかったらもっと……」


 牢屋での話し合いを思い出してなぜか顔を赤くしてエメオールが口ごもってしまった。ともかくエメオールは落ち着いたと判断してスティルグに向き合う。


「な、なんだよっ」

「スティルグ、何度も言っているけれどあなたには感謝している。迷惑掛けれたことは多いけどね。でも、副団長になったんでしょ。これからも同じようなことを繰り返すとイノセルさんが悲しむわよ」

「ばあさんは関係ねぇだろが…………たくっ、関係ねぇがこれ以上やらかすと騎士団長殿が俺を切り殺すか、怒りすぎて頭が切れて死ぬかの二択だ。そうなるとばあさんには迷惑がかかるからな。もう何も言わねぇよ」


 スティルグは吐き出すように溜息を付くとエメオールから離れるように一歩下がっていった。これで少なくとも今日は騒ぐことはないはずだ。


「騒がせてごめんなさい、アフリード」

「謝ることではない。女神ステラ。我が国の騎士の問題でもあるのだ」

「いいのよ。彼がああいう性格だから乗り切れた場面もあるし」

「そう言ってもらえると助かる。が、いずれは対策を考えよう。副騎士団長が原因で事件が起こっては国の尊厳に関わってしまう」

「その時は仲間としてまたステラが仲裁するわ。頼って」

「もしもの時はお願いするやもしれないな」

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