女神ステラの世界が救われた話をしよう-ワザト-
その後も城内を歩いていたが他の皆は支度で忙しいのか私のように歩いている者は見かけなかった。
仕方ないと時間まで適当に過ごした後、全員が集まることになっていた玉座の間へと向かうと先に出立すると言っていたアルガト以外の全員が揃っていた。
アフリードも既に玉座に座っているのでどうやら私が少し遅れてきてしまったようだ。
「ごめんなさい。待たせてしまったわね」
「そのようなことはありません、ステラ様っ! 私達が早く来すぎてしまっただけです」
私の姿を見つけたエメオールが駆け寄って近づいてきた。途中で躓き倒れてきたので私は慌てて抱き留める。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。申し訳ありません、ステラ様」
「時々転ぶわよね、エメオール。普段はきちんとしているのに」
「結構ドジするんですよ、私」
申し訳なさそうに微笑むエメオールの背後で勇者殿やスティルグが呆れたような顔を浮かべていた。僅かに「ワザとだよな……」と聞こえてきた気がしたけれど何の事だろうか。
「全員が来たようだな」
玉座に座っていたアフリードが立ち上がると場の空気が引き締まる。私は女神ではあるけれど私でもこのような空気感は作り出せない。王としての長い責務を担ってきたからこそ発揮できる威厳なのだろう。
「女神ステラを始め英雄の方々。この度は我が娘トワネスと我が息子となったユウマのために来ていただいたこと改めて感謝をする。あなた方のおかげで歴史に残る式となった。我が国の歴史に忘れることなく刻まれる出来事になるだろう」
「感謝の必要はないわ、アフリード。今回みんなが集まったのは勇者殿とトワネスを仲間として祝いたかったからなのだから」
言いながら仲間達の顔を見渡すと全員小さく頷いていた。
「本当に良い式だった。これまでの苦難はこの日を迎えるためにあったのだ思ってしまうほどに」
「全部苦難が終わったみたいに言うけれどね、アフリード。まだまだあなたの苦難は続くわよ。復興が行き届いてない場所は沢山あるでしょ。王としての責務、しっかりと果たしなさいね」
「分かっているさ。女神ステラよ」
「俺も手伝えることは手伝いますよ、陛下」
勇者殿が一歩前に踏み出てくる。手伝うと言われたアフリードはしばしの沈黙の後、小さくため息をついた。
「あ、あれ、何か変なこと言いましたか?」
「そうではない、ユウマよ。お前は私の息子となったのだ。陛下ではなく父と呼んでくれて構わない。他の王家では政務とそれ以外で呼び方を区別するかもしれないが私はそういうのがやや面倒でな。家族に家族として接して貰いたいのだ。確か先日も同じことを言ったはずだが?」
「そ、そうでしたね。でもまだ呼び方が慣れなくて」
「これから慣れていけばいいのよ、ユウマ」
申し訳なさそうに頭をかく勇者殿にトワネスが寄り添って励ますという仲睦まじい光景にスティルグが冷やかしの口笛を吹いた。
普通なら王の目の前で無礼な行為だが、スティルグなら仕方ないとこの場では誰も咎めない。唯一、父親が代わりである騎士団長が憤怒の表情で腰に刺した剣を抜こうとしていたが、周囲の部下に必死に抑えつけられていた。この場はなんとか収まるだろうけれど、後できつい説教があることは間違いなかった。




