女神ステラの世界が救われた話をしよう-いつでも商売-
「もうすぐ城を出るの?」
「ええ、準備は済ましていますので。もっとも王都を出るのはおそらく一番最後ですよ。城下でやることが残っていますので」
「まだ商売するの?」
「もちろんです。今の世界情勢でミグリットの王都ほど稼げる場所はありませんからね。ほぼ復興していることに加えて治安も安定してますし」
「そうね。アフリードの内政のおかげよ」
「アフリード王は良い王です。商人としても大変ありがたい存在です。ユキシロはこれから大変ですよ。今まで政治とは無縁だったでしょうし、沢山学ばなければアフリード王と比較されて批判されてしまうでしょうね」
「勇者殿なら大丈夫よ」
「女神ステラのお墨付きですか。しかし、こればかりは評価するのは国民ですからね。ユキシロが良い人間なのは知っていますが、良い人間が良い王とは限りませんので」
「……そうなのね」
旅で世界中を回り各国の事情については随分詳しくなったつもりではある。取り組んでいる国内の問題についてそれぞれの国の王が解決に力を注いでいることは知っているが、具体的に何をしているのかまでは正直理解していない。
「私個人としては良き王になってくれることを祈っていますし必要なら助力します。国が安定していた方が商売しやすいですからね」
「ステラも手伝ってあげたいけれど……あまり政治には関わらない方がいいのかしらね」
「どうでしょうね。女神ステラの言葉をお告げとして行動の指針にする国もありますが、ミグリットはそうでもありませんし。あくまで王が王の責任で政治をしていますから。でもまあ、友人として助言するのならいいのではないですか?」
「女神としてでなく友人として?」
「ええ、私も助言の際はそうするつもりです。商人として助言を行うと利益の話ばかりになりますからね」
「アルガトみたいに器用にできるかしら」
「出来そうにないなら相談してください。少し前に女神ステラが困っていたら力になると言ったばかりですからね」
「そうだったわね。頼りにさせてもらうわ」
「友人料金で対応させていただきます」
「私、お金ないわよ」
「そこはユキシロかエメオールにでも付けておきますよ……と思いましたがエメオールに女神ステラからお金を貰うとか言ったら殺されるのでやめておきます」
「ステラも死んでほしくないし、エメオールに変な罪を背負わせたくないからやめてもらうとありがたいわ」
アルガトはもう一度城下を眺めた後に柵から離れた。
「ではそろそろ私はお先に失礼します」
「ええ、またね。私の神殿にも来なさいよ」
「復興資材の相談でしたらいつでもお待ちしています」
アルガトは深くお辞儀をすると私に背を向けて歩いて行ってしまった。次に姿を見ることが出来るのは何時になるのか分からないけれど、長命のエルフであり、世界中を飛び回る商人であるアルガトならばいくらでも機会はあるだろう。




