婚約破棄からはじまる幸せもあるってあなたがそれを言いますの? 妹よ。復讐はディナーからはじまるってご存じですかしら?
『婚約破棄からはじまる幸せもありますわ。お姉さま』
私が王太子殿下から婚約破棄を告げられた時、楽しそうに笑ったのは私の妹でした。
根性悪だとは思ってましたが、これはやられたと思いましたわ。
『お前が妹をいじめていたことは明白だ! ユージニア』
いじめているというか、いじめられているといったほうが確かでした。
いつもいつも大切なものを取られ、そしてどうしてそんなことをするのか尋ねたら、だってほしいんですものと言い切った妹でしたもの。
お母さまは妹のこの気性を心配したまま亡くなられ、父は妹を甘やかすだけの人でしたわ。
だから私がしっかりしないとと家を切りもりして、庶民臭い奴だなんて言われてましたが。
でもそれは家族がかわいいからだからですわよ。
私は生意気で庶民臭い令嬢と言われ、社交界でも地味と言われ続け、王太子殿下の婚約者となったとき、皆がどうしてと言ってました。
いやだから、私だってわかりませんけど、でも選ばれたんですの。
王太子殿下は少しおバカでしたが、いい人でしたわ。
私はよい婚約者になろうと頑張りましたが、でもずるいですわ。お姉さまなんて地味な人が婚約者にと妹が怒っていて……。
でもまあさすがにこうなるとは予測してませんでした。
『どうか地味な人生をお幸せに」
何かどうしてあんたがそれを言う! と思っていたら衛兵に引っ立てられ、私は修道院送りとなりました。
典型的っていうか……。
そして私は修道院で、どうしてやろうか考えておりました。
そして名案を思い付いたんです。
「お姉さま、あなた、一体」
「私はこちらの料理長になりましたの、修道院でさんざんお料理はさせられましたから、腕は認められましたわよ。アイリーン様」
私はにやっと妹に笑いかけます。妹が恐れるように身を引きましたわ。
晩さん会で新しい料理長として紹介を王太子夫妻にしましたら、二人とも顔を真っ赤にして驚き、料理を見ましたの。
「さあ、冷めないうちにお召し上がりください」
「毒見、毒見は!」
「すんでますわ」
いやあ、さすがにこうして戻ってくるとは思っていなかったらしく、皆驚いていました。
実は陛下にお話ししてみたら、知らないうちに私を婚約破棄して修道院にいれたことを怒ってまして。
陛下が隣国に行かれているうちに手はずを整えるなんて、あの妹の入れ知恵ですわよね。
お灸をすえてやらないとな、ということで私と陛下が考えたのがこれですわよ。
毒などはいれてませんけど。でも、いつ入れられるかなんて恐れながら食事をする毎日を送るなんてとても愉快じゃありませんこと?
さあ、毒なんて入っておりませんわと私が笑うと、あら王太子殿下が椅子からひっくり返り気絶しましたわ。
でも陛下もお優しいですわよね。しびれ薬くらいなら入れてもいいとか言われてましたが。
まあそれくらいなら入れてますけど、二人のお皿にだけ。
私はにっこりと笑い、妹にどうぞと冷めないうちにと微笑みかけたのでした。
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