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クセモノハウス  作者: 立川好哉
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第18話 神田の本性!

 1週間とちょっとですっかり神田に馴染んだのは、小豆の性格が神田にとって不都合でなかったからだろう。時に奔放で神田の心配を受けた彼女だが、ぶっ飛んだことをしないから扱いやすいようだ。ただドジなだけの子には何でもしてあげればよいだけだ。

 万里愛もさほどワガママではなかった。お嬢様風の容貌をしているからメシが不味いだのもっといい家具を買えだの命令されると思っていたが、敗北が上下関係を意識させたのか、今では上品で行儀の良いロリっ子である。お漏らしをしたくないのか、あまり戦いを挑んでこないのが残念ですらある。


 そんな関係が続こうとしているのだが、小豆と万里愛には気になることがある。言わずもがな、女の子と一つ屋根の下に住んでおいて、手を出さずにいられるかということだ。『据え膳食わぬは男の恥』という言葉があるが、美少女3人を前にそれらしき行動を起こさない神田には疑いを抱かずにはいられない。


 据え膳を食わない神田に対していきなりえっちなことを提案するほどオープンな朱福が2人から相談を受けたので、ある作戦を閃いた。それは神田が大人であることを利用した狡猾な尋問だ。

「ベロンベロンに酔わせたらどう?」

 酔うと男は本音を吐きやすいという。オシャレなバーで愚痴るのはきっとそういうことだ。これまでに知り合った男性から聞いたことを朱福が思い出すと、神田に酒をありったけ飲ませようとした。


 しかしここで問題発生。冷蔵庫には強い酒がない。神田は昼食のお供にビールを飲むくらい酒好きなのだが、小豆が来てからはあまり飲んでいない。おそらく節約のためか、理性を失って小豆を襲わないための自粛なのだが、これは今の3人にとっては不都合である。そこで積極性のある朱福が率先して神田に仕掛けた。

「神田、酒我慢してない?」

「いや別に?」

「好きなんじゃないの?」

「そうでもない」

 神田曰く酒とは辛いことを経験した者が飲むものであり、嗜好品ではなく救済であるという。だから無職で辛いこととは無縁な彼が飲むべきではないのだそうだ。一理あるのかどうかはさておき、彼が酒を飲んでくれないので困った。3人は成人していないから買って飲ませることができない。

「ウチさぁ、神田が酔ったらどうなるか見たいんだよねぇ」

 好奇心を満たせという要求をもって彼を動かそうとすると、彼は実証なく答えを教えてくれた。

「動きが速くなって、よくわかんないことを呟いて、いつしか寝てる」

「それだけ?えっちな気分になるとかは?」

「おっぱいおっぱい言うけど実際に女の子を襲って揉むとかはないよ。犯罪だもん」

 酔っても正義までは失わないようで、そのような人を軽蔑すると言う。どうやら理性まで失うほど酔うことはなく、そうなれば昏睡するということだ。

「お前らの真意を知りたいんだけど」

 まったく酔っていない神田は冷静に子供たちの意図を探った。なんとなく予想していたが、尋ねたのが朱福ということだから、きっとえっちなことなのだろう。

「俺がお前を襲うとか考えてない?」

「すごいね、神田がなんであたしらを襲わないのか気になってたんだよ」

「こんな美少女が3人もいるのに」

 すると神田はソファに座って溜息をついた。浅はかな子供に教えることがあるのだろう。

「よく考えろ、俺は既に捕まってもおかしくないんだぞ」

「未成年を匿ってるわけだからね。1人なら結婚するつもりと嘘をつけても、3人は言い逃れできないねぇ」

「そうだろ?でも誰も気付かないからいいんだ…まあ、よくないんだけど…さておき、派手に被害を出しちゃダメだろ。お前が俺に無理矢理犯されたとして、警察に言うだろ?」

「無理矢理ならね」

「俺は表に露わになるような派手なことはしないってだけだ。えっちなことなんて派手なことの最たる例だろ」

「なるほど…ウチらに手を出さないのは保身ってわけだ」

 神田は頷いてこのくだらない質問を断ち切って菓子をつまんだ。

「お前らがその気なら俺だって覚悟を決めるさ。でも早くないか?まだ知り合って長くないのにハメるのって普通なの?俺大学生じゃないからよく知らない」

 神田は大学生嫌いなので偏見を表に出している。バカ大学の学生は漏れなく全員が女と知り合った日にパコパコすると思っている。

「そういう関係じゃないだろ俺ら。もっとゆったりと、友達とは違うなんかふわっとした関係でいいじゃん」

 家族とも似て非なるものであるため反応に困った3人だが、今の自分の立場に疑いを抱かないことこそ重要だと考えて頷いた。

「このままいこうよ…まあ、一緒に風呂に入るとか、布団に入るとかに憧れないわけじゃないけど」

「ウチとは一緒に入ったね!」

 朱福が誇らしげに胸を張ったので神田はドキドキして胸を押さえた。しかし遠くに据えた目標を早々に果たしてしまうのはゲーム性のないことで、つまらない。朱福はまだ真意を隠しているようだから、表面上ではなく心の底から好きになってほしい。もっとわかりやすく言うのなら、なくてはならない存在になりたい。

「手…出してもいいんだよ?」

 朱福お得意の悩殺作戦にも屈しない神田の鋼鉄の理性を破る方法は強引に飲ませるくらいしかなさそうだ。なんとかして彼の本性を暴きたい3人の女子は、最終手段に出た。




 日課を終えて一息、コーヒーを淹れてブラックのまま飲む彼の向かいに朱福が座ってわざとらしくブラウスのボタンを外す。わざわざこのために着替えたのだ。

「神田の本性、見たいな」

「そう安っぽくエロを出すんじゃないよ。本性?これが素だよ」

「ぜったい嘘。だって男の人は女の子の谷間を見てそんな顔でいられないもん」

 しかもギャルの谷間なのだからそれはもう色気に満ちた狂気の凶器である。神田が仄かなパフューム漂うこの空間で惑わないなら、彼に性欲がないことが確定する。それではつまらない。

「神田あたしのえっちなお汁について興味津々だったじゃん」

「えっちなお汁?」

 そのことまでは聞いていない小豆と万里愛が耳を立てた。神田が朱福のえっちなお汁を見たということであれば、それは咎めなければならないことである。神田に詰め寄ると、彼は朱福から相談された内容を隠さず話した。真剣に問題解決に取り組んだ彼を評価する一方、そこまでされても朱福を襲わないのが不思議でならない。

「こんなに可愛くてえっちなギャルがいるんだよ?」

「だァら言ったろォが。俺は家長としてしっかりまとめなきゃいけないから、えっちなことに没頭している余裕はないの。お前ら俺の覚悟を揺るがそうとするなよ」

 どう考えてもおかしい。ここまで誘って襲われないのは、神田がもはや人ではないとすら思えてくるほどおかしい。しびれを切らした朱福がぷんすこ怒った。

「もぉぉ!襲えよぉ!!」

「えぇ…?」

 神田は苦笑して身を縮めた。まさかこのようなことを言ってくる女と逢うとは思わなかった。自分に大きな魅力を見出せない彼はどうしてこのような美少女に襲う権利を与えられたのか分からない。

「ウチがすっかりえっちな気分なんだよぉ!」

 朱福はブラウスを脱ぎ捨ててブラ1枚の状態で神田を椅子から引き剥がしてソファに押し倒した。これは神田の負けだろう、小豆と万里愛はそう思った。流石に、本当に流石にここまでされたら黙れないはずだ。しかし神田の理性は鋼鉄どこでなく、世界最高の硬さを誇る物質・ウルツァイト窒化ホウ素くらい硬かった。あるいはもはや創作の世界に出てアダマントと比べるべきか。

「…そうか」

 神田はゆっくり優しく朱福を押し返すと、立ち上がって小豆と万里愛の手を引いた。首を傾げた2人に神田は諭すように言う。

「…1人にさせてやれ」

 訳の分からないまま奢りだからとレストランについてきた2人の向かいで頭に手を当てた神田は深い息を吐いてから低い声で言った。

「性欲が強いと聞いてたのにどうして気を遣えなかったのか…申し訳ないことをしたなぁ」

「どういうこと?」

「えっちなことをしたいんだろ?周りの目があったらできないじゃん」

「そういうこと…なのかなぁ…」

 腑に落ちない様子の2人をパフェで上機嫌にさせると、神田は時間稼ぎのためにハンバーグステーキセットを注文してドリンクバーまでつけた。この間に朱福が好き勝手に発散してくれることを願いながら。

「お前らも1人になりたかったら遠慮なく言えよ?」

「いや、むしろ1人は嫌だ。せっかく神田に匿ってもらったのに、1人になると任務の時を思い出す」

「そうよ、孤独感と使命感に挟まれて、周りの目も気にして…私なんか知らない人に襲われたんだし」

 万里愛との出会いについてはかなり悲惨だった。あのような事件が2度と起きないように祈る。そんな状況から復活を遂げた彼女が幸せそうなのが神田の精神を充足させている。朱福の言う『襲え』とは、もちろん万里愛がされたようなことではない。愛のある襲撃のことだ。

「だから愛がないうちはダメなんだよ。俺らまだ日が浅いだろ?互いのことを碌に知らないくせに愛のある襲撃なんてできっこねぇ」

「神田哲学ってやつ?」

「あぁ。らぶらぶえっちじゃないのは漫画だけで十分だ」

 イケナイ感じのエッチについては神田は漫画で満足しているようだ。それが現実で朱福を襲わない理由になっている。

「でも朱福がそれを望んでたら?」

「えー…?不健全だと叱るかなぁ…」

「なんか朱福が可哀想だよ。あっちにとっては神田が据え膳で、食おうとしてるのに遠ざかられてるんだもん」

 そう考えるとなるほど、と思ってしまう。自分が美味いメシだとは考えたことがなかった。では黙ったまま食われてやるのが正義なのだろうか。神田が深い思考に陥ったため、ハンバーグステーキは小豆が食べた。




 帰ってくると朱福は寝ていた。きっと発散した反動で疲れたのだろう。頑張ったのかどうかは定かでないが、神田は労いを込めて布団をそっと被せた。

「ファブッシュがめっちゃ減ってる!」

 女の子がいるおかげで常に良い香りの部屋を消臭することがないのでずっと残量を保っていた消臭スプレーが殆ど空になっている。これは朱福が大満足したということで間違いなさそうだ。神田はビシッと敬礼をすると、カードをポケットに入れて家を出て行った。

「詰め替え買いに行った…」

「なんなの?神田と朱福の言動がよくわかんないんだけど」

 万里愛が少女故の無知を晒すと、小豆がそっと教えてやった。その途端に赤面した万里愛は眠っている朱福を見て彼女の行為を想像した。

「…それってやらなきゃいけないもんなの?」

「さあ?」

「小豆はやってる?」

「なんであたしが答えるのさ?」

 小豆は万里愛にそこまで深くを教えるつもりはないようだ。わからないことはすべて年長者に訊くのがよいと教わったため、万里愛は売り場にあるだけ買って帰ってきた神田に尋ねた。

「誰でもやるだろ。人間なんだから」

「そういうもんなの?神田もやるの?」

「そりゃ…お前に言うのは恥ずかしいな」

「どうして?」

「いや、いいのか…年齢はあんまり関係ないっぽいから…」

「私もしていいのね?」

「うん…」

 どうしてか万里愛は嬉しそうだ。これで全員が性的なことをすることを許されたため、同居人は度々ファミレスまで退避することになるだろう。

「…それならもういっそ4部屋ある家買った方がよくねぇ?」

 神田がまた頭を抱えると、寝たふりをして聞いていた変態娘が横になったままこんなことを言った。

「人目を気にせず堂々とすればいいんじゃね?」

「えぇ…?」

 もはや手に負えないということで神田が匙を投げた。


 そういう勝利法があるのかぁ!

神田をどうにかしてエロに引っ張ろうとする話です。何故エロに引っ張られないか?18禁になるからです。

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