第35話 After 20XX/04/01
も、文字数が……多い!
ここからしばらくこんな感じで文字が多めになります。
一番多いのは多分今回のはず。
20XX年4月1日午前12時(日本標準時)は世界にとっての大きなターニングポイントであった。
突然の天変地異に続いて響き渡った『声』が告げた『地球のアップグレード』なる異常な現象の数々。
フィクションの中でしかお目にかかることのないような展開に、ある者は憤り、ある者は苦笑し、またある者は胸を躍らせた。
『ステータスオープン』
世界のどこかで誰かが呟いたとき、これがエイプリルフールの冗談でも何でもないのだと知れた。
情報は瞬く間にSNSを介して拡散された。
21世紀の世界は細分化され、個人化され、そして排他されていく一方で、誰かとのつながりを求めてやまない不思議な構造をしている。
様々なメディアによって複合的かつ複雑に構築されたネットワークを介して、歓喜と困惑、未知への恐怖が留まることなく伝播していった。
『この世界は実は現実的なゲームだった?』
『いやいやゲーム的な現実でしょ?』
『世界サーバー説浮上ktkr』
『現実とは……いったい……何なんだ?』
悩む声はあるにはあったが……大半の人間にとって、そんな哲学に片足突っ込んだ難解な命題はどうでもよかった。
大切なことは『声』が嘘をついていなかったということだ。ビバ・ファンタジー!
でも……あの『声』はほかに何か言っていなかっただろうか?
疑問に対する答えはすぐに明らかになった。
『ダンジョン』
マナ生成装置でもあると説明された正体不明の構造物が、日本各地ひいては世界各地に出現したという報告が相次いだ。
得体のしれない建築物だったり、既存の構造物が変化したり、あるいはいきなり地面に穴が開いたりと、その成り立ちは様々だった。
ただ――『声』の言葉どおり、ダンジョンは確かに現れた。『声』はここでも嘘をついてはいなかった。
最初期の段階で日本政府は(珍しく迅速に)対応を決定。
存在が確認されたダンジョンへ即日の内に自衛隊を派遣し、入り口を封鎖。自衛隊員を含めダンジョンへの突入は厳禁とした。
国民に対しては、いまだ発見・確認されていないダンジョンについての情報提供を求め、また決して中には足を踏み入れないよう呼びかけた。
大半の日本人は政府の対応を支持した。
このスムーズな流れは、単に『NOと言えない』日本人の国民性によるもの……ではなかった。ちゃんと理由がある。
各国首脳が動き出す前に一部のお調子者もとい未来の勇者候補見習い予定者たちがダンジョンに突入。
『ステータス』と共に解放された機能である『E-tube』によってダンジョンの内部から生配信を行ったのだ。
現在のインターネットを参考にしたと思われる諸機能は、元ネタを知っていれば誰にでも扱えるほどに容易なものだった。
彼らが配信するダンジョンは、これまでゲームの中でしかお目にかかることができなかったファンタジックな構造で。
彼らが遭遇した生命体は緑色の肌をした短身痩躯のモンスター。ちょっと界隈に詳しいものならば誰もが『ゴブリン』という名に思い当たる化け物で。
そして警戒心/ZEROの彼らは、世界中の人間が見守る中でモンスターに撲殺され、捕食された。
その一部始終が公開されてしまったのだ。モザイクなどという気の利いた処理は施されていなかった。
突然の全世界同時公開残酷ショーに、多くの人間が抱いていた浮かれた気持ちなど一瞬でどこかへ吹っ飛んでしまった。
類似した案件が世界各地でほぼ同時に多発、それぞれの国は即座の対応を求められた。
日本が選んだのは――自衛隊によるダンジョン封鎖と自粛要請だったということ。
政府の対応を消極的となじる声もあったが、あまりにショッキングな映像を見せつけられた国民のほとんどは、この判断に否を唱えることはしなかった。
具体的な名を挙げることはしないが、激烈な反応を示した国もある。
軍を派遣してダンジョン攻略を開始した国はまだ普通。ダンジョンに直接ミサイルを撃ち込んだ国もあった。
前者はともかく後者に対するダンジョンの反応もまた激烈なものだった。
件のダンジョンはミサイルを受けても傷ひとつなく、逆に中から大量のモンスターが地上に溢れかえり周辺地域で暴虐の限りを尽くした。
某国政府は当初この事実を隠ぺいしたが、『E-tube』や『Eちゃんねる』によってまたたく間に暴露された。
既存のマスメディアとは異なり『E』には検閲をはじめとする閲覧制限機能は存在しない。発信も受信もやりたい放題だ。ただしエロにはモザイクが入る。グロはスルーされるのに。
『E』についてはさて置き、某国では国内の反対世論が反政府勢力に結びつき、挙句の果てには国を揺るがす一大事へと発展した。
その国の内情はともかく、この一件(通称ミサイル事件)は各国の首脳に対してダンジョンに対するひとつの大きな示唆を与えた。ダンジョンに対する兵器使用の制限である。
既に軍隊を突入させている国も、現場から上がってくる芳しくない状況報告に頭を悩ませていた。
なぜ前時代じみた装備しか身につけていない小鬼の群れに、軍事技術の最先端たる重火器で武装した兵隊たちが苦戦に追い込まれてしまうのか?
その回答を見せつけられた気がしたのだ。現代兵器はダンジョンではあまり効果がない。理由は不明だが結果は明らかだ。
これまでダンジョン攻略の進捗状況を国民に秘匿していた国々も、遅々として成果を上げることのできていない現状を衆目に晒されてしまった。踏んだり蹴ったりである。
各国は軍隊を引き上げ、地上の入り口を封鎖。つまり日本に倣う形になったのである。
日本政府は自分たちの慧眼(たまたまそう言うアレコレに詳しい人材がいたお陰)に満足……していたところに新たな報告を受けて、文字どおりひっくり返る羽目になった。泡を吹いて倒れた者もいた。
時を経るにつれて、封鎖前にダンジョンに足を踏み入れた――正確にはダンジョン生成に巻き込まれた一般市民の存在が明らかになったのである。
世界がアップグレードされる前から行方不明者というのは少なからず存在していたが、国は彼らを熱心に追跡しているわけでもなかった。単純に人数が多すぎてキリがないのだ。
しかし本件に関わる行方不明者は話が違う。世間の注目度も違う。
世界中が環境の激変に一喜一憂しているこの状況下で、地球アップグレードの純粋な被害者である彼らを放置しておくわけにはいかない。
主に『Eちゃんねる』を中心に提供された情報を元に近隣の自衛隊を現地へ派遣した政府要人は、そこで自分たちの目論見の甘さを思い知らされた。
情報の大半がガセネタだったのである。
この緊急事態にバカなことをやるバカが自国に存在しているというしょうもない事実に、政府も自衛隊も憤りを隠せないでいた。
だからといって情報の全てを偽りと断じて見捨てるわけにもいかない。『Eちゃんねる』に振り回される形で毎日のように各地で自衛隊が出動し、そして無駄足を踏む日々が続く。
自衛隊の派遣にだって人手もかかれば金もかかる。半ば金をドブに捨てる形になっている政府に対する批判が噴出した。『なぜ情報の真偽を見極められないのか』と。
『それができたら苦労はしない』だの『だったらお前らがやってみろ』とは口が裂けても言えない日本政府であった。
政府にとっても自衛隊にとっても進めど地獄退けど地獄の日々。どれだけ非難にさらされようと政府が責任を放棄することはなかったが、次第に倦厭ムードが高まっていくことは避けられない。
そんな二進も三進もいかなくなったある日のことだった。
陸上自衛隊鷹森駐屯地に所属する『大迫 勇 (おおさこ いさむ)』二等陸尉が分隊長直々の招集を受けたのは。
スマートフォンの向こうから聞こえてくる苦々しげな上司の声に、大迫は太い眉をしかめた。眠かったのだ。時刻は午前0時を回っていた。
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ミーティングルームに呼び出された大迫は、ドアを開けたまま中に足を踏み入れることなく様子を窺う。
室内の人間は――2人。ブルドッグのような顔をした男と、彼と真正面に向かい合って座っている若い女性自衛官。
前者は大迫を呼び出した分隊長。後者は大迫の直属の部下に当たる『内藤 歩 (ないとう あゆみ)』二等陸曹であった。
内藤は黒目黒髪、浅黒く日焼けした肌の健康的な美人だ。部隊の中でも若い男を中心に人気があることは大迫も聞き知っている。大迫自身は……実は少し苦手にしている。
感情的に部下をどうこうと評するのはよくないと理性ではわかっているのだが、内藤の得体のしれない笑顔を見ると背筋がぞわりとするのだ。
――嫌な組み合わせだ。
何はともあれ大迫が入室しドアを閉める。
そして分隊長に促されるままに椅子に腰を下ろしたところで、早速とばかりに内藤が話を切り出した。
日頃は気だるげな雰囲気を纏っている部下は、何故かやけにテンションが高かった。
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『救援要請スレッド』
これまで政府と自衛隊を翻弄してきた偽情報の温床であり、彼らの憎悪の源でもあるそのスレッドに書き込まれた一件の救援要請。
普段ならスルーしていたその書き込みに、内藤は特段に気を惹かれたわけではなかった。ただ……『E-tube』の動画アドレスが記載されていた点に引っかかりを覚えた。
『Eちゃんねる』は従来のインターネットとは異なり、迂闊にアドレスを踏んでもおかしなサイトに飛ばされることはない。グロ動画に飛ばされることはある。
……入隊以前からの歴戦のネット民であった内藤にとって、グロ画像などどうということもなかった。
地球アップグレード以来の目まぐるしい業務に疲弊し正常な判断能力を失いかけていた二曹は、深く考えることを止めて動画のアドレスをクリックし――目を剥いた。
まず視界に飛び込んできたのは黄金のツインテール。
次いで、微かに釣り上がった青い瞳の可愛らしい容貌。
いまだ幼さを残す緩やかな曲線を描いた透き通る白い肌は大胆に晒されており、大事な部分を僅かに隠す黒ラバーの衣装が背徳感をいや増しに増す。
まるで漫画やアニメから飛び出してきたのかと思われた少女。しかし『E-tube』でアニメや特撮が放映されているという話は聞いたことがない。
官舎のベッドに倒れ込んでいた内藤のノックダウン寸前だった目蓋は、睡眠を欲する本能を凌駕する欲望によって跳ね上げられた。
――おいおいエロ動画かよ。
「テンションアガるなぁ」
内藤の脳みそを支配寸前まで追い込んでいた眠気は一瞬で吹き飛ばされた。
ボサボサに乱れていた黒髪をかき上げたその顔には、抑えきれない笑みが浮かぶ。
この女性自衛官、実は可愛らしいものが大好きで、エロいものも大好き。魔法少女ものとか大好物。
付け加えるならばナマモノOKと守備範囲が広い。もちろん夏と冬には欠かさず有明に参拝している。
動画の少女は控えめに言って二曹のストライクゾーンど真ん中だった。
そして――動画で語られている内容に仰天させられた。かなりガチ目の救援要請だったのだ。
これまでの救援要請と大きく異なっている点がふたつある。
まず第一に、少女が自身の身元を明らかにしていること。
顔を晒し名前を晒し肌を晒すことの危険性は、年頃の少女なら十分に理解しているはず。
にもかかわらずこの少女はあえて危険を犯している。冗談にしてはリスクが大きい。
たとえウソをついていたとしても、である。
近年の行き過ぎ感のあるネット警察なら、この動画だけで少女の身元を容易に割り出すだろう。
……と言うか、すでに割り出されていた。結果はシロ。『更級 理沙』という名前の15歳の女子高生。
地球アップグレード当日から行方知れずで、地元の警察に捜索願が出されているところまで確認されている。
住所は……ちょうど今自分が駐屯している鷹森市。もはや運命を感じずにはいられない内藤だった。無言のガッツポーズ。
第二に彼女が当面の救援を求めていないこと。
動画の少女は地下20階の安全地帯で生活を営む用意が整っていることを明らかにし、救援に来るならば十分な準備を整えてからにしてほしいとコメントしている。
イタズラであるならば、もっと切羽詰まったシチュエーションを演出するはず。
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「絶対間違いありません! 『更級 理沙』さんは、この鷹森の地下から我々に助けを求めているのです!!」
爛々と目を輝かせた内藤は身振り手振りを駆使しつつ大仰にまくし立てた。肉体的にも精神的にも疲労困憊を極めた深夜0時過ぎのことである。
真夜中に叩き起こされて分隊長に呼び出しされた大迫は、常日頃ぐーたらな姿しか見ていない部下が口角飛ばして奮う熱弁を前に……上司と共に痛むこめかみを強く抑えた。
ネットがらみのアレコレに詳しい内藤とは異なり、分隊長も大迫も『更級 理沙』の救援要請を素直に受け取ることができなかったのだ。
日々ガセネタに苦しめられ、連日マスコミから槍玉にあげられて数えきれないほどの苦虫を噛み潰し続けてきた。まずは警戒から入ってしまう。
大迫は今年で35歳になる陸上自衛官だ。既に述べた通り現在は鷹森駐屯地に所属している。
2メートル近い筋骨隆々たる体躯に、太い和筆で力強く描かれたような厳つい容貌を裏切らず、インターネットをはじめとする先端技術全般に疎かった。
だから、深夜に呼び出されて聞かされた部下の発言の真偽を推し量ることができない。そもそも頭がまともに働いていない。体力に自信がある大迫だったが、今はとにかく眠いのだ。
デスクに腰を下ろして難しい顔をしている分隊長も似たようなものに見えた。
「ふぅむ……では、こうしよう」
眉間にしわを寄せた分隊長は内藤二曹に情報収集を命じた。
要救助者を助けたいという気持ちはある。
しかし、この動画だけで部隊を動かすことはできない。救援要請は山ほど届いている。
ほかの要請を差し置いて『更級 理沙』の救助を優先させるには、信頼度の高い情報と特別な理由が必要だと部下を諭した。
大迫から見たところ分隊長の決定は無難だと思わされるものであった。救援を出さないとは言っていない。
……無難ではあるものの、十分なものとも思わなかった。救援を出すとも言っていない。
だから――部屋を辞した後、憤懣やるかたない様子を隠そうともしない部下に耳打ちした。
「内藤」
「ハッ、なんでありますか二尉殿」
耳に残る心地よい声。嘲りが混ざっているように聞こえるのは気のせいだろうか?
内藤の言動はそのひとつひとつが仰々しく胡散臭い。今日の彼女からは、特にそう言った気配を感じる。
しかし、大迫が内藤をどう思っているかは、この案件とは関係ない。
『更級 理沙』という少女が救助を求めていることに偽りはない……はずだ。
ならば、この状況で大迫が口にするべきことは決まっている。
「明日から、お前はそっちを重点的に当たれ」
「は?」
他の隊員から『エキゾチック』と評される内藤の美貌が奇妙に歪んだ。
整った顔に浮かべられている表現しがたいやる気のなさ、あるいはすっとぼけた感情がどこかに飛んでしまっている。
完全に意表を突かれた的な部下の様子に、大迫は多少の留飲を下げることに成功した。
「俺はそっちの方には詳しくないが、お前には確信があるんだろう?」
「ええ、それはまぁ……」
「だったら、さっさと上を納得させるだけの情報を集めろ。要救助者を救うためには、それが一番手っ取り早い」
「は……ハッ、了解しました」
巨体の大男は、自分に向けられる部下の顔に初めて敬意らしきものが浮かんでいるところを目にした。
翌日から大迫は内藤に割り当てられる任務を弄り、情報収集に専念できるよう環境を整えた。
年少の女性自衛官に対するえこひいき、などと口さがないことを囃し立てる者はいなかった。これまで大迫が地道に獲得してきた信頼と実績の賜物である。
同時に自身はいつでもダンジョンの深層にアタックできるよう他のメンバーと共に浅層で訓練を繰り返した。
内藤から日々上げられてくる報告は、何だか小説的というか物語的というか。やけにドラマチックなものだった。
もう少し事務的な表現を心がけるよう注意したものの……この女、一向に聞き入れる気配がない。
そのうち大迫もケチをつけることはなくなった。めんど臭くなったのだ。
二曹曰く『追い風が吹いている』とのこと。
件の美少女『更級 理沙』が金髪ツインテールロリで露出度の高いコスチュームに身を包んでいたおかげで人気沸騰。
早々に単独スレッドが作られ、そちらで話題が続いているため情報収集が捗っている。
話題が途切れない。忘れ去られない。狼少年と断じられて早々に姿を消していったこれまでの救援要請とは、この点でも状況が異なる。
レポートには『エロが彼女を救いそう』という、かなりどうでもいい見立てが記載されていた。
理沙スレで『プチデビル応援団』として活動しつつ情報収集に励んでいた内藤は、ついに『更級 理沙』本人と遭遇。もちろん『Eちゃんねる』上の話である。
少女の降臨はこの手の匿名掲示板の宿命としてその真贋が問われることになったが……これはすぐに疑いが晴れた。
理沙がアップした動画の数々や、スレ民に対する澱みない受け答えから、彼女がダンジョンに放り込まれた『更級 理沙』本人であることは明らかであった。
むしろ理沙の方が自分の個人情報のバレ具合いに引いていた。内藤が見たところご同類(何の同類だよ?)のようだが、少女の脇の甘さに胸が熱くなったそうだ。
――別にお前の感想なんぞ聞いとらんのだがな。
妙に落ち着かない気分にさせられる報告書に目を通しつつ、短く刈り込んだ後ろ頭をガリガリと掻きむしる。
無駄に発揮されている文才のおかげで、読んでいても眠気が襲ってこないのはありがたい。
すぐ傍に控えて無言で訴えかけてくる内藤を抑え、苦いコーヒーをひと口啜ってレポートの文字を目で追いかける。
理沙は以前の救援要請動画の不備を詫び(別に謝るほどのものではなかったのだが)、新たな動画を投稿。
そこに映し出されていたのは……地上と見紛うばかりの地下20階。しゃべる黒猫。そして地下19階でのゴブリンとの戦闘。
ほかにも彼女たちが遭遇したモンスターに関する詳細な情報や、作成された地図が公開されている。
「こいつぁ……」
無精ひげでザラザラとする顎を撫でながら、思わず唸り声をあげる。
情報を集めろと背中を押したのは大迫自身だったが、この展開は予想外だった。
――出来過ぎだろう。
「写真はこちらになります」
準備の良いことに、内藤は地下から配信された動画の一部分を写真として現像していた。
年嵩の分隊長たちに見せるには『E』関連よりアナログな情報の方がウケが良い。
つくづく抜け目のない。納得させられる反面、どこか素直に頷けない。
地下深くから配信された映像は、陸上自衛隊上層部を動かしうる内容に見受けられた。
大迫は内藤二曹を引き連れて情報を分隊長に提出し――即日のうちに救援の派遣が決定した。
この拙速とも揶揄されかねない判断には表沙汰にしたくない力が働いている。
地球アップグレード以降、目立った活躍を見せていない自衛隊や政府に対する批判を払しょくするために『何としてでも救援を成功させるべし』と、とある筋から強烈なプッシュがあったのだ。
煩わしい横槍に不快感を覚えるものの救出作戦に異議はない。
要救助者と情報を交換する役割を担う内藤の参加は決定事項。彼女に引きずられる形で上官の大迫も部隊に加わることになった。
地元である鷹森駐屯地所属であり、年長者であり、そして最も上位の階級を持っていた大迫が一行のリーダーに任命されダンジョン攻略を開始。
内藤は『更級 理沙』救出部隊に参加しつつ、理沙スレにて『内藤二曹』を名乗りコテハン活動を開始。
地下20階から地上を目指して戦い続ける少女と情報を共有し、意見を交換し合い、そして――




