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第15話 順調(?)な探索 その2

みなさま、応援ありがとうございます。

これからも頑張ります!


6月10日追記

ジャンル別日間ランキング20位になっててびっくりしました!


 入り口を固めていたゴブリンたちを掃討して小部屋に足を踏み入れた理沙(りさ)たちを待ち構えていたのは、大きな木の箱だった。

 大きい箱。身長149センチの理沙が身体を丸めたら、すっぽり収まってしまうくらい。

 見た目は簡素な造りながら、石造りの部屋の中で箱はかなりの存在感を放っていて……


「これは、どう見ても宝箱ッ!」


 地下18階、敵地のど真ん中を探索中という状況を忘れて、理沙の眼がキラキラと輝きだした。

 理沙はゲームが、特にRPGロールプレイングゲームが大好きだ。

 では、RPGをプレイしていて、どんな時に盛り上がるかと問われれば、


 1.レベルが上がったとき(スキルポイント等を自分で割り振れればなお良し)

 2.新しい装備品をゲットしたとき

 3.宝箱を発見したとき


 である。

 宝箱に関しては、モンスターからのレアドロップだと嬉しいところだが、ダンジョンの奥深くに鎮座するものも趣深い。

 今回のダンジョン行は地下21階からのスタート。拠点が地下20階だから勘違いしがちだけど、地下18階と言うのはなかなか奥に足を踏み入れている。

 そんな階層に設置されている宝箱なのだから、これは中身が期待できるというものだ。リアル宝箱に理沙のテンションはアゲアゲである。


「よーし、それでは早速開封の議を……」


 意気揚々と箱に手を掛けた理沙は、そこでふと我に返った。

 そう……ここは地下18階。敵地である。

 普通のRPGで、しかも入り口近くの宝箱であればともかく、このエリアに無造作に置かれている宝箱……罠が仕掛けられているのではなかろうか?

 ギリギリのところでその危険性に思い至った。


 宝箱に限らず、ダンジョンと言うフィールドには罠が仕掛けられている。RPGのお約束だ。

 ゲームの場合、この手の罠は盗賊系のキャラ(別に悪人と言うわけではない)が解除してくれるものなのだが……今この場には、プチデビルな理沙と桃色ハート目のゴブリンしかいない。

『罠解除? 何それ、美味しいの?』状態である。


 今のところ探索行は順調そのもの。

 地下18階に登って来てからはゴブリンとの遭遇率は上がったものの特に苦戦することはなく、むしろ魔石はガッポガッポ。

 ドロップアイテムは最初のこん棒しか手に入っていないけれど、トータルでは文句なしの黒字なのだ。

 最終目的である地上脱出をストレートに目指すのであれば、ここでリスクを取ってこの箱を開けるメリットは無いに等しい。

 しかし――


「宝箱……宝箱よ。生まれて初めてのリアル宝箱。う~ん、この宝箱……」


 腕を組んで木箱を睨み付ける。

 ゴブリンは理沙と木箱に交互に視線を向けている。

 これまでの地球で普通に生きている限り、宝箱なんてお目にかかることはまずなかった。

 これからどうなるかはさて置き、問題は今、自分の目の前で発生しているのだ。

 感情的には……開けたい。

 理性的に考えれば……関わるべきではない。

 ふたりの理沙が脳内でし烈な戦いを繰り広げている。

 その結果――


「よし、開けなさい!」


 ゴブリンに開けさせることにした。理沙自身は箱から距離を取っておく。

 悪魔か。今の理沙は小悪魔、プチデビルだ。控えめに言って非道の所業である。

 ゴブリンは己が置かれている状況がわかっていないようで、実に従順に少女の命令に従って箱に手を掛ける。

 次の瞬間に爆発するかもしれないというのに、何と健気なことか。ゴブリンな見た目で台無しだが。


 ガタッ


 固唾を飲んで見守る中、ゴブリンは木箱を開けた。特に何も起きなかった。

 そのまま5秒……10秒経過。部屋は静寂に包まれている。


「だ、大丈夫そうね」


 そろそろと木箱に近づいた理沙が箱の中を覗き込むと――


「お、おお、おお!」


 興奮のあまりおかしな声が出た。

 箱の中には一振りの剣があった。

 赤い革製の鞘に納められている。

 刃渡りは1メートルもなく、柄の拵えは細緻。

 箱から回収しようと手を伸ばすと――


「重ッ」


 ズシッときた。

 持ち上げられないことはないが、持ち歩くことは難しい。

 さらにこれを振り回すとなると……逆に剣に振り回されそうである。

 とりあえず、そのままアイテムウインドウに放り込んだ。アイテム名は『剣』と表示されている。


「そのまんまかい!」


 虚空にツッコミを入れつつ『剣』の文字を指でなぞると、


――――

『剣』:ダンジョンで発見された剣。鑑定しなければ詳細は不明。

――――


「鑑定かぁ……」


『やはりあるのか』と言うのが最初に抱いた感想だった。

 某有名RPGと同じ方式で、発見したままでは正体が明らかになっていない

 そのままでも使えなくはないが、どんな効果があるのかはわからない。呪いのようにネガティブな特殊効果が付与されている可能性もある。

 安全性を考慮するならば、鑑定して性能をチェックするまで使わない方が良い。

 そこまではわかるのだが……問題は、理沙には鑑定スキルがないという点である。ゴブリンはもちろん持ってないだろう。


「黒猫店長なら鑑定できるかしら?」


 地下20階に商店を構えるケットシーの姿が思い出される。

 彼の黒猫でダメなら、世界のどこかにいるであろう鑑定スキル持ちを探さなければならなくなる。

 剣の外見からはあまり不穏なイメージはなかったけれど、正体不明の武器を使いたいとは思わない。


「帰ったら聞いてみましょ……さぁ、いくわよ!」


 すぐ傍で荒い息を吐きかけてきていたゴブリンの頭を軽く撫でて宝箱に背を向ける。

 今日はまだまだ稼がなければならないのだから。



 ★



「鑑定も承っておりますミャ」


 黒猫商店の主が平然と宣わってくれたおかげで、理沙はホッと薄い胸をなでおろした。

 地下18階で荒稼ぎして戻り、本日の部屋を取った後に尋ねた際の回答である。

 ちなみに今日の魔石の売却益は1000マネー以上となった。地下18階は美味しい。理沙覚えた。


「やっぱり。ちなみにお値段はおいくら?」


「一回1000マネーミャ!」


「おおう……」


 一日の稼ぎが丸々ぶっ飛ぶと聞かされて思わず引いてしまった。

 しかし、払えない金額ではない。


「う~ん、これなんだけど……」


 ウインドウから『剣』を取り出してカウンターに置く。


「ほうほう……これを鑑定すればいいミャ?」


「……ちょっと待って」


 理沙は腕を組んでおとがいに指を這わせた。

 宝箱から回収した時の重量感を思えば、これは現在の理沙が扱える装備ではないような気がする。

 ということは、一日の稼ぎを丸々放棄してまで鑑定するメリットもないように思える。

 その一方で、せっかく初めて見つけた宝箱の中身をしっかり吟味したいという気持ちもある。

 有用かどうかではない。初めての宝箱、これはある種のお祭りのようなもの。

 日々平坦なダンジョン探索(と言いつつ毎日楽しい)には潤いがあっていい。否、あるべきなのだ。

 1000マネー使っても、当面の宿泊費には困らない。

 装備品の充実もひと段落しているし……


「よし、決めた! 鑑定お願い!」


「了解ミャ!」


 黒猫がポップアップさせた『鑑定しますか(1000マネー) はい/いいえ』のウインドウの『はい』を選択。

 理沙の持ち金が店の売り上げに計上されたことを確認して、店長はどこからか取り出した虫眼鏡を構えて剣を子細にチェックし始める。

 ふさふさの後頭部を撫でまわしたい誘惑に抗い……ここで初めて理沙は重大な問題に気付かされた。


――どれくらい時間がかかるか聞いてなかったわ……


 数日利用してわかったことだが、この店は基本的に店長ひとりで切り盛りしている。

 黒猫店長が鑑定にかかりっきりになってしまうと、他の業務に差し障りが出てしまうのだ。

 部屋はいつも利用しているところでいいとして、風呂も勝手に入っても問題なかろう。

 問題は――食事だ。ゴブリン相手に一日暴れまわった少女は、空腹を持て余している。


――ご飯食べてから頼めばよかった。


 失策にため息をつきながらケットシーを眺めていると、


「ミャ、ミャ、みゃみゃ―――ん! 鑑定できたミャ!」


「早っ!」


 別に気にするほどのことはなかった。


「鑑定結果はこうなっておりますミャ」


――――

『魔剣ストームバイト(SR)』:攻撃力+50:魔界の名工によって鍛え上げられた逸品。実体のないモノすら切り裂くことができる。

――――


 店長が示してきたウインドウには、このように記載されていた。


「Sレア武器キタ!」


 使いづらそうとか心の中でぶー垂れていたことを忘れて、理沙はガッツポーズを決めた。

『魔剣』という呼称もソウルに響く。これは……いい剣だ。


「Sレア装備はなかなか仕入れる機会がなくて困ってるミャ」


 黒猫店長が続けた。

 暗に『売ってくれ』と言われている気がする。


「……これ売ったらいくらぐらいになるの?」


 理沙の問いに『よくぞ訊いてくれました』とケットシーは目を輝かせた。


「そうだミャ……このレベルのSレア魔剣となると……5000マネーかミャ」


「5000……」


 鑑定代の1000マネーを差し引いても4000マネーの儲けが残る。

 地下18階マジ美味しい。

 しかし――数多くのRPGで世界を救ってきた理沙は用心を忘れなかった。


「参考までに教えてほしいんだけど……」


「何かミャ?」


「この魔剣、このお店で買うとしたら、いくらぐらいになるのかしら?」


「……」


 黒ケットシーは、理沙の質問に露骨に視線を逸らせた。


「店長?」


 顔を近づけて問い詰める理沙の目の前で、黒猫店長はダラダラと汗を流している。

 口笛を吹こうとしているが、掠れてまともに音が出ていない。ハッキリ言って下手だった。

 なおもジト目で見つめ続けていると……やがて諦めたようにポツリと零した。


「……まん」


「え、聞こえない?」


「い、10000マネーぐらいかミャ?」


 あざと可愛い疑問形。

 理沙は魔剣をアイテムウインドウに戻した。

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