第14話 順調(?)な探索 その1
本日からは基本的に1話ずつの更新となります。
「アハハッ、これイイ!」
風切り音が虚空に唸り、いくつもの耳障りな悲鳴が石壁に反響する。
地球にダンジョンができてちょうど1週間が過ぎたその日。
地下18階、階段付近の広間で喜びの声と共に黒い鞭を振るう理沙の姿があった。
ダンジョン通路の闇の中、金のツインテールを靡かせて、興奮で朱を差した白い肌にしっとりと汗を輝かせる。
快楽に染まった笑みを可愛らしい顔に浮かべつつ鞭を操る姿は、ある種の淫靡な雰囲気を纏っている。
理沙の周りには6匹のゴブリン。そのうち1匹は目にハートマークを輝かせた魅了済みのこん棒ゴブリン(いつもの)である。
2対5という数的不利を物ともせずに、少女とゴブリンは敵集団を圧倒している。
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名 前:更級 理沙 (さらしな りさ)
種 族:人間
年 齢:15
職 業:女子高生(?)
身 長:149センチ
体 重:41キログラム
体 型:75-54-80
ギフト:コスプレ (プチデビル)
スキル:魅了 (プチデビル)
技能・鞭 (プチデビル)
暗黒魔法 (プチデビル) NEW
レベル:5
H P:40/40
M P:35/30(+10)
攻撃力 :5~15
守備力 :5~15(+40)
素早さ :7~18
魔法攻撃:5~25(+90)
魔法防御:5~25(+90)
運 :10~20
装備品:頭 部:プチデビルリボン NEW
上 半 身:プチデビルビキニ
下 半 身:プチデビルパンツ NEW
腕 部:プチデビルグローブ
脚 部:プチデビルブーツ
アクセサリ:プチデビルチョーカー NEW
アクセサリ:ピンクハート
武 器:ブラックウィップ(攻撃力+30) NEW
武 器:ダガー(攻撃力+10)
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ブラックウィップをゲットして間合いを取って戦えるようになったおかげで稼ぎが加速。
予定より大分早くプチデビルシリーズをコンプリートできた。なお、プチデビル装備は全てこれまでと同じ黒のラバー製だ。
『プチデビルリボン』は長めのリボンで、闇にたなびくツインテールの根元に結ばれている。
首に巻かれた『プチデビルチョーカー』は正面に鎖が垂らされおり、どことなく背徳感を煽るデザイン。
そして『プチデビルパンツ』は――マイクロミニのホットパンツ。
これまでと同じように身につければジャストフィット……すると思ったのだが、何故か前を閉じることができない。
さらにお尻は相変わらずのピチピチでハミ出し気味。ビキニよりほんの少しだけ面積が増したけれど……逆にエロスを感じさせるデザインだった。
装備品周りのシステムを整えた奴に文句を言ってやりたい気持ちはなくもなかったが、姿見で全身を確認すると『これはこれで悪くないわね』と理沙のコスプレイヤー・オタクのソウルが納得してしまった。
調子に乗ってすっかり自室と化した宿の一室でポージングを決めて、ステータスウインドウに付属している撮影機能で自撮り。動画も撮った。自分以外誰もいないのに『ピンクライト』まで使った。
毎日地下19階の階段前で理沙を待っている(この点についてはもはや疑問を抱くことはなくなった)ゴブリンも、プチデビル理沙にご満悦の様子。
……何はともあれ、当初に立てた目的の『レベルアップと装備の充実』という目標は順調に達成できている。
現在の戦闘は『スキル:魅了(レベル3)』で敵を同士討ちさせつつ、こん棒ゴブリンの突進させる。
さらに『技能・鞭』で最大射程8メートルのブラックウィップを操り後衛からフォローを入れる。
この組み合わせで少数対多数でも、ゴブリン相手なら危なげなく討伐できている。
『スキル:魅了』もレベルが上がったことにより、さらに選択肢が増えた。
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『スキル:魅了(レベル3)』:対象を魅了し、魂を奪うスキル。
・ピンクシュート :消費MP5:ターゲット1体を『魅了』状態にする。射程5メートル。
・ピンクライト :消費MP5:自分にターゲットを集中する。意思のない相手には効果がない。ターゲットが術者に性的興奮を覚える場合は効果が大きい。
・ピンクシルエット:消費MP5(発動中消費):術者に狙いを定めたすべてのターゲットに『魅了』状態を付与する。
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『ピンクシルエット』は常時MPを5消費し(発動中は最大MP-5の状態になる)、理沙を狙うすべての敵を自動的に魅了する。
成功率は『ピンクシュート』に劣るものの、一度使えば効果は約30分持続する。あらかじめ発動しておけば、奇襲を食らっても即座に魅了を付与できて安全性が高まる。
さらに乱戦になっても、敵が理沙を狙うたびに勝手に魅了状態になって同士討ちを始めてくれるので大助かりである。
「ハアッ!」
理沙の手から伸びた鞭がしなり、風を切りながらゴブリンを強かに痛めつける。
そこにこん棒の殴打が加わって、最後の一匹はあっという間に姿を消してしまった。
「……地下18階でも何とかなりそうね」
ラバー製のグローブを外し、剥き出しになった白い右手で額に浮かんだ汗をぬぐいつつ、独り言ちる。
地下19階の戦闘に慣れた(というかマンネリ化してきた)ので、昨日から地下18階にチャレンジを始めた。
オートマッピングによって作成された地図によると、地下19階を最短経路で突破しようとすると体感で1時間くらい。
昨日は朝8時過ぎに黒猫商店を出て、ウォーミングアップしつつ地下19階へ。階段に待ち構えていたいつものゴブリンに『ピンクシュート』を入れた。
そのまま約1時間で地下19階を突破して地下18階へ。たどり着いたのは午前10時あたりと推測される。
帰りも地下19階を通り抜けるのに同じくらい時間をかけたので、地下18階から午後3時半くらいに帰還したと仮定すると……地下18階の滞在時間は約5時間半となる。
黒猫商店にたどり着いたのは午後5時過ぎだったから多分間違いない。ひととおり装備品を整えたので、次は時計を買おうと心に決めた。
地下18階も出現する魔物は相変わらずゴブリンばかりだが、一度にエンカウントする数が増えた。
少なくとも2体ずつ、多いときは5~6体と言ったところ。
それでもレア装備を整えた理沙とこん棒ゴブリンの敵ではない。
積み上げた強さが現実に反映されると、得も言われぬ満足感で胸がいっぱいになる。
なお、プチデビルシリーズをコンプしたお陰で、『スキル:暗黒魔法』が追加された。
こちらは今のところあまり出番はないものの、手札が増えて悪い気はしない。
……ワクワクしながら『暗黒魔法』の文字を指でなぞり、『また状態異常系かよォ!』と頭を抱えた姿は黒猫店長以外誰にも見られていない。
本音を言えば攻撃魔法か回復魔法が欲しかった。字面から回復魔法は期待していなかったけれど。
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『スキル:暗黒魔法(レベル1)』:闇を操る魔法
・ブラインド:消費MP5:ターゲット1体の視界を闇で覆う。射程10メートル。
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RPGにありがちな『盲目』の状態異常を付与する魔法だった。
コイツで敵の攻撃の命中率を下げて前衛の安全性を高める。これはイケる。
意気揚々と実戦投入してみたところ……闇に視界を奪われた敵ゴブリンはメチャクチャに暴れまわって逆に手が付けられなくなった。
「クソ魔法かよ!」
射程の長さを生かせないか、目下のところ思案中である。
★
ゴブリン集団を掃討した後、すっかり下僕ポジションに居付いてしまったこん棒ゴブリンに『ピンクシュート』を上書きして魔石を回収。
理沙本人はダメージを負ってはいないが、前衛のゴブリンは何度か殴られている。
さすがに初めて出会った時のようにポーションを使うことはないが、せっかくの戦力が失われては困るので休息はこまめに挟むようにしている。
ボコボコにされた当のゴブリンは石畳の隙間に生えていた苔をむしって傷口に塗り込んでいた。
しばらくすると体の傷が癒されていく。あれはゴブリン的には傷薬に該当しているらしい。人間に効くのかは不明。不衛生に見えるので試していない。
「ふぅ」
階段脇の壁にもたれ、腰を下ろして理沙もしばし休憩。
濁った瞳にハートマークを浮かべたゴブリンがじーっと少女の肢体を見つめてくる。
その視線に嫌悪感を覚えることもなくなった。
このゴブリンは理沙に対する邪な意志を持ってはいても、敵意や悪意の類は持ち合わせていない。
笑顔を向けてやれば、奇妙なダンスを返してくれる。見た目は不気味だけど何となく憎めない奴だ。
「さて、そろそろ行くわよ」
悪くない気分のまま腰を上げて、お尻についた砂を払う。
ゴブリンの方もすっかり慣れたもので、理沙の声を聞くなり少し距離を開けつつ通路を先行する。
人語を口にすることはできないものの、人語を理解することはできるらしい。
ひとりと一匹は地下18階を練り歩き、出会ったそばからゴブリンを屠る。
魔石を集め、昼食を摂り、地図を埋めていく理沙たちの前に現れたのは――大きな木の箱だった。




