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第13話 装備更新は醍醐味!

本日3話目の更新となります。


6月7日追記

ジャンル別日間60位にランクインしておりました。

みなさま、応援ありがとうございます!


 探索2日目も地下19階に上がるとゴブリンが待ってくれていた。

 昨日のスマイルと投げキッスにはそれなりの効果があった模様。

 早速『ピンクシュート』をかけて前を歩かせる。探索は順調だった。

 1日しっかり地下19階を練り歩き、(ゴブリンが)頑張って420マネー。

 昨日の晩も黒猫商会で泊まったので100マネー引かれており、現在の理沙(りさ)の手持ち資金は840マネーになる。


「さて、まずはどれを買うべきか……」


 本日の宿泊費100マネーを支払って残りは740マネー。

 黒猫店長から商品カタログを受け取って、夕食後にチェックを入れる。

 新しい装備を買うとなるとテンションが上がってきた。これぞゲーマー魂。

 まぁ、実際のところ買うものはあらかじめ決めているのだが。

 購入するべきは『プチデビルシリーズ』の未所持4パーツ。

 その中からひとつ選ぶつもりであった。

 

――頭、腕、下半身そしてアクセサリ、か……


 ほとんど全裸に近い理沙の戦闘モードはどこもかしこも心許ないのだけれど……特に下半身。食い込み気味のビキニが凄く気になる。

 不躾に注がれるゴブリンの視線も。

 

「どれを買うか決まったかミャ?」


「ええ、この『プチデビルパンツ』を……」


 頂戴。

 そう口にしようとした瞬間、脳裏に閃光が走った。浮かび上がるのは……昨日の昼食時の一幕。

 ゴブリンにサンドイッチをあげようとして手を思いっきり舐めしゃぶられたアレである。

 あの生々しくて悍ましくて、そして艶めかしい感触を。思い出しただけで鳥肌が立ってくる。


「……やっぱ『プチデビルグローブ』をお願い」


「グローブでいいかミャ? パンツって言いかけてなかったかミャ?」


「グローブで」


「了解だミャ。ほいっとミャ」


 店長が自前のウインドウを操作すると、目の前に一式のグローブが現れた。

 見た目は理沙が身につけているピキニやブーツと同じ黒のラバー製だ。

 同時に理沙のマネーがグローブの代金分だけ減少する。

 早速装備してみる。これもまた腕を通して紐を結ぶとキュッとフィットした。

 腕をいろいろ動かしてみたり手を握ったり開いたり……特に問題はない。


「さて、どうなったかしらっと」


 ステータスを開くと


――――


 名 前:更級 理沙 (さらしな りさ)

 種 族:人間

 年 齢:15

 職 業:女子高生(?)


 身 長:149センチ

 体 重:41キログラム

 体 型:75-54-80


 ギフト:コスプレ (プチデビル)

 スキル:魅了 (プチデビル) 

     技能・鞭 (プチデビル) NEW


 レベル:3

 H P:30/30

 M P:30/20(+10)


 攻撃力 :5~10

 守備力 :5~10(+25)

 素早さ :7~13

 魔法攻撃:5~15(+60)

 魔法防御:5~15(+60)

 運   :10~20


 装備品:身   体:プチデビルビキニ

     腕   部:プチデビルグローブ NEW

     脚   部:プチデビルブーツ

     アクセサリ:ピンクハート

     武   器:ダガー(攻撃力+10)


――――


「あら」


『プチデビルグローブ』を装備した結果、ステータスの補正だけでなくギフトとスキルにも変化が現れた。


――――

『ギフト:コスプレ (プチデビル)』

 ・シリーズ装備を3つ身につけたため、スキルが発動します。

――――

――――

『スキル:魅了(レベル2)』:対象を魅了し、魂を奪うスキル。

 ・ピンクシュート:消費MP5:ターゲット1体を『魅了』状態にする。射程5メートル。

 ・ピンクライト :消費MP5:自分にターゲットを集中する。意思のない相手には効果がない。ターゲットが術者に性的興奮を覚える場合は効果が大きい。

――――

――――

『スキル:技能・鞭 (プチデビル)』

 ・鞭の使用時に技能補正がかかる。

――――


「う~ん……これは……」


 理沙は腕を組んで考え込む。無意識のうちに前髪を指で弄る。

『ギフト:コスプレ (プチデビル)』は、装備パーツが増えたために記述が修正されたということだろう。

『スキル:魅了(レベル2)』については、実は装備を変える前から上がっていた。おそらくスキルの使用回数が影響している。

 新しく習得した『ピンクライト』はいわゆるヘイト管理あるいはターゲット集中用のスキル。

 ゲーム的に考えるならば前衛、特に盾役が習得すべきものと思われる。


「これでアタシにタゲを向けさせれば、奇襲の代わりになるか」


 敵の意識を自分に向けさせることができれば、命令の声のせいで奇襲できなくなっている問題が解決するかもしれない。

 守りの薄い今の理沙にとっては、あまり積極的に使いたい技ではないことに変わりはないが、背に腹は代えられない。

 そして……


「鞭かぁ……」


 プチデビルすなわち小悪魔の武器として鞭というのはアリに思える。

 ただ、ごく一般的な日本人である理沙は、これまで鞭という武器を扱ったことがない。

 そもそも現代社会において鞭を扱うのは、特別な職業の人間だけではなかろうか。競馬の騎手とか夜の女王様とか。

 よってこの武器がいったいどれくらい役に立つのか、イマイチ判断が難しい。

 ……ダガーと違って間合いを取りながら戦うことができるのならば、なかなか有用そうではある。


「ねー店長、鞭って売ってる?」


「ミャ?」


「鞭。ビシバシしばく奴!」


「えっと……鞭はこの辺にあったと思うミャ」


 黒猫店長がカタログをめくると、そこには鞭のページがあった。


「買うのかミャ?」


「スキルが生えてきたの。どうしよう?」


 カタログに記載されている鞭はふたつ。


 ・革の鞭(N):攻撃力+10:120マネー

 ・ブラックウィップ(R):攻撃力+30:550マネー


「リサにゃんの予算は?」


「残り240マネー」


「だったら革の鞭かミャ」


「そうなんだけど……」


 悩みどころである。

 今すぐ買うのであれば店長の言うとおり革の鞭一択。

 しかし……ここ2日の稼ぎを鑑みれば、あと1日の我慢でレアリティRのブラックウィップに手が届く。

 ブラックウィップを買うのであれば、残りのプチデビル装備を買い揃えるまでに時間がかかる……


――今日のところは危険もなかったし……プチデビルを揃えるのが遅れると言っても、たったの一日だし……


 悩む。

 すごく悩む。

 120マネーぽっちとは言え、無駄な出費を避けたい気持ちはある。何しろ今の理沙は金欠だ。

 先行投資と考えることもできなくはないが……明日もゴブリンが戦ってくれるなら別にいらないというレベルのもの。

 今日の去り際を思い出す限りでは、あのゴブリンは明日もきっと理沙を待っていてくれるのではないかという予感がある。

 よって結論――


「我慢するわ。明日も頑張ってブラックウィップを買う!」


 頑張るのはゴブリンだが。


「リサにゃんが自分で決めたことなら、それでいいミャ」


 黒猫が革の鞭の購入を勧めてくることはなかった。

 ……理沙の中に一抹の不安がある。

 装備の更新を一日遅らせることが、致命的な問題を引き起こさないかと。

 この判断、何だか凄くフラグ建てたっぽい。


――いや、そんなことない。アタシはフラグなんて建てない。油断大敵。明日もじっくりやろう。


 理沙は胸中で何度も繰り返した。

 繰り返せば繰り返すほどフラグっぽいという気がしなくもなかった。



 ★



 翌日、地下19階。

 やはりこん棒ゴブリンは階段の前で待っていた。

 襲いかかってくる気配はなく、『ピンクシュート』を受け入れる。

 ついでに新調したグローブを見せつけると、あからさまにがっかりした顔を見せた。

 ざまーみろである。理沙は薄い胸を張ってドヤ顔を決めた。強調された大胆な胸元にゴブリンの視線が注がれていたことには気づかなかった。


 地下19階での戦闘は、もはやかなり余裕がある状態だ。

 こん棒ゴブリンの奮戦が著しい。

 ただ『好事魔多し』とは言うもので、すぐ近くのゴブリンに攻撃するよう命令したところ――奥の方から新たなゴブリンが現れた!

 しかも増援ゴブリンはこん棒持ち。ゴブリン同士の戦力差は2対1で不利になってしまった。

 指先から放たれた『ピンクシュート』は――外れ。相変わらず緊張すると狙いが甘くなるところは治っていない。

 レベルが上がっても理沙本人はたいして成長していない。『命中率』という値はステータスにはなかった。

 しかし下僕ゴブリンがこん棒に殴られそうになったその瞬間、すかさず理沙は次の一手を放った。


「『ピンクライト』!」


 新しく習得したスキルを発動。

 声と共に理沙に向けて中空から桃色のスポットライトが当てられる。

 僅かに汗ばんで光る白い肌と極小面積で肢体を覆う黒いラバーのコントラスト、ふわりと靡く黄金のツインテールを淫靡な光が照らす。

 蒼い瞳は挑発的にゴブリンたちを射抜き、少女の下腹部には『ピンクハート』が怪しい輝きを放っている。

 その艶めかしさすら覚える光景にゴブリンたちはしばし呆然とし、ついで猛然と理沙に向かって突っ込んできた。


「ガッ!?」


 理沙に向かってきた増援ゴブリンは、後頭部をこん棒で殴打されて転倒。

 そのまま何度も何度も打撃を食らい――消失。

 残りの一匹は少女の手に握られた短剣を胸に受け、汚らしい血をしぶかせて倒れ込んだ。消失。


「ハアッ……はぁ……危なかった」


 肌に浴びせかけられた汚液を拭いつつ、少女は荒い息をつく。

 自分から仕掛けたとはいえ、モンスターの意識を集めるのは想像以上に緊張する。

 敵を討ち果たしたゴブリンがやって来て、申し訳なさそうに平謝りの様相。


「別に気にしないで。アンタは悪くないから」


 理沙は軽く微笑みかけた。

 自らの手で命を奪う感覚、その高揚に身を浸しながら。

本日の更新はここまでとなります。

お読みいただきありがとうございました。

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