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「やっと邪魔が消えたかぁ」
「邪魔? ロクスさんがですか?」
「そうさ。彼ったら全く隙も遊びもありはしないカタブツちゃんだから。あ、遊びってのは女の子の方じゃなくて、ハンドルの『遊び』の方の遊びね」
「はぁ」
「それでね、ミラちゃん。本題なんだけど」
「わ、私にですか。答えられることはあまりないとは思うのですが」
「君が彼の助手だなんて、ウソはいけないなぁ」
「す、すみません! そんな、騙すつもりはなかったのですが」
「う、うん、ロクスの杜撰なウソがいけないよ。だからとりあえず頭上げてくれる? さっきも言ったんだけどロクスが誰かを連れだってくるなんて本当に珍しいことなんだよ。仕事とプライベートは徹底して分ける方だし。仕事って、別になにか職を持っているとかじゃあないんだけどね。ともかく、だから今回のことは君のために色々動いているんじゃないかと思っているんだけど。 ──ははぁ、君は本当にわかりやすいなぁ」
「ついさっき『余計なことは喋るな』と釘を刺されたばっかりで」
「そりゃそうさ。だけどさ。このままだとどん詰まりで事は後手後手に回ると思うよ? 君もそれは望ましくないんじゃないかなぁ。見ての通りロクスは懐が寂しい男でねぇ、タバコなんて嗜好品に金を注ぎ込んでいるものだから。なのに君の持ち込み企画のためにあんなに情報に大枚をはたいて……なんて涙ぐましいんだろう! ミラちゃん!」
「は、はい!」
「力になれるとしたら君しかいない! 君が巻き込まれている事態、つまり君についての情報を僕に売ってくれれば、それだけでロクスは随分と助かるはずなんだ!」
「私の今の状況に、そんな価値が?」
「そうさ! なにせいまの下町はホバーカーが落ちてきて随分と賑やかになったからねぇ」
「で、でも」
「まぁ初対面の人間相手に渋るのはよくわかる。実をいうと、僕は薄々君がどういう経緯でここまでロクスと一緒に来たか勘付いてはいるんだ」
「え、あ、え」
「タイミングが絶妙だからね。だから一つ、僕が情報を取り扱う上で大事にしていることを教えよう。どれだけ状況をつなぎ合わせてことを予測できたとしても、僕はそれを誰かの口から聞かないことには情報として売らないことにしている」
「誰かの言質がないと情報になり得ない、ということですか」
「そう。逆に言えば、『誰かがこう言ったらしい』と言質さえ取れれば僕は喜んで情報として売り捌く。そこは別に事実じゃなくても構わないけだ。さて、君は僕がすでに勘付いている状況を口にしてくれるだけでいい。それでロクスは助かる。僕は儲かる。こんなウィンウィンは他にない」
「……」
「もうすぐロクスがヤニから戻ってくるけど、どうする?」




