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80話 真打登場  (アリーシャ視点


「なあ、今どんな気分だ、色男」


 二メートルはあろうかという筋骨隆々の男が下卑た笑みを浮かべてそう言った。その男の足もとには痛みに悶え、地面にうずくまるフレデリック王子がいる。


 ああ、どうしてこんなことになってしまったんだろう。


 私がもっと周囲に気を配っていれば、こんなところに王子を連れてくることもなかったはずなのに。どうして王子がこんな目に合わなければならないのだろう。


「……彼女を……はな、せ」


 痛みに悶えながらも王子はそういった。こんな状況になりながらも私を心配してくれているのだ。自分が一番危機的な状況に置かれているというのに、本当に王子はやさしい人なのだ。


 私はただただなにもできない自分の無力さを嘆く。


 大男に囲まれ、組み付かれた今、私にできることは何もない。ただ暴行を受ける王子に呆然と視線を向けるのみなのだ。


「ヒュー、かっこいいじゃない。僕ちんも惚れちゃうかも」


「きめぇぞ。ぎゃははは!」


「ちげぇね」


 そんな会話を繰り広げ、男たちは笑った。その笑いは私には恐怖のものであり、狂っているとさえおもえた。いや、実際狂っているのだろう。でなければこんな蛮行を行うはずがない。


 私が恐怖に表情をゆがめていると、何を思ったのか、男の一人が王子の頭を踏みつけた。それも、はたから見ていてもわかるほどに体重を乗せたもので、王子の頭蓋骨が割れてしまうのではないかと錯覚するほどだ。


「やめてください! フレデリック様が死んじゃいます!」


 私がのどを嗄らさんばかりにそう叫んでも男たちは全く意に介すそぶりを見せなかった。きっと、悪魔とはこういう人たちのことをさすのだろう。


「この前はよくもやってくれたなぁ、色男。俺たちのこと、覚えてるか?」


 王子を踏みつけにした男がそう言った。しかし、王子は心当たりがないようで、表情が動くことも返事を返すこともなかった。


 ただ、男のその言葉で私は思い出す。


 入学前に王子と出会ったあの日に、王子にコテンパンにされた男の顔と何名かが一致したのだ。


 完全な逆恨みではあるが、男たちは間違いなく明確に王子を恨んでいる。


 金品と私を手放せば王子だけでもなんとか助けられるかもしれない、と淡い期待を抱いていたが、間違いなく、それだけでは男たちは王子を離さないだろう。


 それどころか王子の命が危ない。ほとんどの男が刃物を持っているし、きっと最後はあれで王子を殺害するつもりだ。


 貧民街の住人は時に何をしでかすかわからない。それは理性を超越し、本能のみの全く理解できない行動ですらもあり得るのだ。


 人殺しなど、私には到底理解の及ばないものではあるが、彼らならやりかねない。


「おい、そろそろその女、剥いちまえや。この色男の前でマワしてやろうぜ」


「そうだな」


 私を羽交い絞めにする男はそういうとより一層力を増し、周囲の男たちは下卑た笑みを浮かべて私に群がってきた。


「や、いやぁ! 来ないで!」


「やめろ! 彼女に、手を出す、な!」


 激痛に耐えながら王子は声を上げた。しかしやはり男たちはそんなものには目もくれず、一心不乱に私の衣服に手を伸ばした。


 その時だった。


「はい、ストップ!」


 大きな合掌とともに後方から男性の声が聞こえた。


 それと同時に男たちは一瞬停止し、その場の全員がその男性を見た。背格好は平均よりも少し高いかもしれないという程度。


 顔は平均的で、ただあまり女性受けするタイプでもない、すこし怖そうな印象を受けた。それでも本人も自覚しているのか、大きなぶち眼鏡で目つきの悪さが緩和されていた。


「なんだてめぇ。殺されてぇのか、ナメクジ野郎!」


「発情期のサルが人様の言葉を話しなさんな。親父の金玉袋から出直してこい」


「なんだとゴラァ!」


 そう言って一人が男性にナイフを構えて襲い掛かった。



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