31話 第一回エリザベート対策会議 その2
頭を抱え、考えを巡らせようとしたその時、ニーナはハッと何かに気づいて顔を上げ、僕にそう尋ねた。
「まあ、一応、クラウディウス家にいたころはあいつの指導役だったけど」
本当に少しの期間だったけどな。
「え、なにそれ。初耳なんだけど」
「いや、まあ、言ってないし」
「…………デブ専?」
「なぜに!?」
しばらくの沈黙ののち、唐突にニーナはとんでもないことを口走った。いったい何をどう考えればそういう思考に至れるのだろうか。
「前々からおかしいと思ってたのよ。うん。ようやく合点がいったわ。私みたいなかわいい子を前に何にもしてこないなんておかしいもの」
ニーナの言い分は単純に僕がニーナに魅力を感じていないことに対する疑問だった。
僕はロリコンではない。それが単純な答えなのだが、自分の容姿にずいぶんな自信を持っているニーナはそれでは納得しない。
そのため、このような思考に至ったのだ。
「あのな、お前みたいなガキに何かするとかありえないからな」
「ガキってあなたも同い年でしょ! いいわ。じゃあ試してあげる」
そう言ってニーナはおもむろに僕に抱き着いてきた。
こいつは何を考えているのだろうか。頭の出来は悪くないほうだと思っていたのだが、どうも僕の勘違いかもしれない。
それともなんか嫌なことでもあって疲れてんのか?
「ほーら、どう? 不敬にもこの私に劣情を抱いてしまったんじゃないの? 当然よねぇ。だって、私はかわい……」
「あーよしよし。疲れてんだなぁ」
得意げな表情で生意気なことをいうニーナの頭を僕はそっとなでる。
「ちょ、何やって!?」
「疲れてんだろう。よーしよし」
ニーナの頭をなでていると無性に日本にいたころに飼っていた柴犬を思い出す。そのせいか、ムツ○ロウのように特徴的な声を出しながらより一層ニーナをなで続けた。
「ちが、そんなんじゃない!」
「あーはいはい」
「う―……」
しばらくそのまま動物をあやすようにニーナをなでていると特に反抗することなくニーナは黙り込んでしまった。
「……」
「あの、そろそろ離れてくれません?」
「もうちょっと」
逆に今度はその状態から離れてくれなくなった。さすがに恥ずかしい。
というか、誰かに見られたりしたらそれこそ変な噂が立ちかねない。というか、僕の立場的にかなりヤバイ。
「いや、誰かに見られでもしたら……」
僕がそういうと渋々といった感じでニーナは離れてくれた。
「母様みたいだった」
突然、ニーナはそういった。
「はい?」
「むしゃくしゃした時、ちょうどさっきみたいに母様に抱き着いてたの。それで、さっきみたいに頭をなでてくれたわ」
「へー」
「な、なによ! 子供っぽいとか思ってるんじゃないでしょうね!」
僕が生返事をすると突然我に返ったようにニーナは顔を真っ赤にして言葉を並べた。
「あー、思ってない。思ってない」
「ぜったい思ってるでしょ……。と、とにかく、エリザベートのことよ!」
バツが悪くなったのか、唐突にニーナは話を元に戻した。
「あれの対策ねぇ……」
「どうすればいいと思う?」
「あいつは物分かりが悪いからなぁ……直接的なのが一番いいけど……」
「家の名に傷がつくのは論外よ」
「デスヨネー。……あいつの嫌いなことに熱中してみるとか?」
「なにそれ。どういうこと?」
「単純に性格が合わないって本能で悟らせるんだよ。お前がエリザベートと分かり合えないって思ったように、お前からもエリザベートに分かり合えない理由を作らせるんだ」
「なるほど……確かにそれなら家の名に傷もつかない。まあ、ことと次第によっては私にへんな噂が立つかもだけど……この際、我慢するわ。で、あの女の嫌いなことって何? 思い当たる節が多すぎて逆にわからないのだけど……」
確かにあいつが嫌いなものは多い。しかし、だからこそなまなかな手段ではあいつは理解しようとすらしてこないだろう。
しかし、僕には実績がある。
「それはだな……」
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