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160話 皇帝の誤算


「悪魔どもめ……」


 膠着状態に面した戦況を眺め、皇帝はつぶやいた。


 皇帝も話には聞いていたが、エインベルズによる予想以上の被害にいら立ちを隠せないのだ。


 今回の戦いは必ずしも勝利する必要はない。これ以上戦うことは王国にとって損害が大きすぎるということを知らしめることができればそれで十分なのである。


 そのために最も厄介な集団であるエインベルズを潰す必要があった。


 王国を敵に回したときに一番厄介なのが未知数のエインベルズであり、新兵器の存在によって帝国内でも意見が二分されている。


 不確定なまま攻め込むべきではないといった意見が半数。数で押し切ってしまえという意見が半数。どちらも帝国にとっては現実的な選択肢といえた。


 帝国は侵略国家であるため、これまで侵略してきた国家の人民の命はそれほど重要ではない。そのため、王国が力をつけてしまう前に皇帝は武力行使を決断したのだ。


 そして今回の戦いで実感する。


 あの武器は厄介である、と。


 地方からとらえてきた平民を薬で強制的に感覚を麻痺させ、恐れを知らぬ狂戦士としたにもかかわらず、敵の部隊と衝突するまでに相当な時間を要した。


 損害も十分覚悟はしているものの、まさかたどり着くだけでこれほどの損害を出すことになるとは皇帝も思わなかったのだ。


「エインベルズ兵は先の戦いで帝国に憎悪を抱くものも多いと聞きます。なまなかな手段ではあの精強な兵はひいていきませんな」


 側近の一人が苦言を呈した。


「わかっておる。そのために捨て駒をかき集めた。あの悪魔どもを駆逐できるのであればあそこに配置したクズどもが一万や二万死んだところで大した痛手ではない」


 皇帝はそうはいったものの、予想外の損害に焦りを隠せずにはいられなかった。加えて、正面衝突が始まってから、もうすでにかなりの時間がたつというのに、敵を攻め切ることができない。


 兵一人一人の質が違いすぎるのだ。


 とはいえ、じわりじわりと押してきてはいる。


 皇帝はエインベルズを警戒し、霧に乗じて自軍の数の有利を最大限活用し、通常の隊列の三倍の兵がエインベルズの前に集中する陣形を取っていたからだ。


 そして、側面からの襲撃部隊として騎馬兵も出し、ゆっくりと時間をかけて損害を覚悟し、確実に敵を叩き潰すことを選択していた。


(今回の損害は必要経費なのだ。何としてもあの悪魔どもを駆逐するための)


 一つ誤算があるとすれば、予想以上に敵の兵が頑強であること。三倍の数の兵と互角に渡り合う、まさしく悪魔のごとき強靭な兵。これほどとはさすがに皇帝も考えていなかった。


「これではどちらが狂戦士かわかったものではないな」


 皇帝はぼそりとそんなことを口にしてしまう。


 その時、血相を変えた兵が皇帝の前に姿を現した。


「報告いたします! 正体不明の軍勢が我が軍後方より接近しております!」


「なに!? まさか連中にまだ余力があったというのか!? 数は!?」


「お、およそ、五万!」


「五万だと!? ありえん! いったいどこからそんな軍勢が……」


 その時、甲高い笛の音が周囲に鳴り響く。


「この音はいったい……」


 音は帝国軍後方から聞こえてきているようだった。その音に思わず皇帝は振り返る。


 後方はいまだ、霧が濃くかかっている。しかし、その霧の先端から少しずつ人影が現れ始めるのであった。


 そして、次第にそれは多くなり、やがて、大軍勢が姿を現すのであった。


「な、なんということだ……」


「し、失礼いたします。こちらを」


 その時であった。別の兵が書状を持って現れる。その中身を読み、皇帝は信じられないといった表情で目を見開く。


「ヘンリー……! 何故だ、奴は牢に捕らえられているはずでは……」


新作始めました。こちらも読んでいただけると幸いです!

→師匠を失った異世界召喚者は、新人冒険者の育成を始めることにしました。「僕が死ぬその前に強くなってくれ!」


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ここまで読んでいただきありがとうございます!


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