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146話 地味令嬢

 休日明け、クラス内は異様な雰囲気に包まれていた。その原因はとある一人の人物によるところが大きい。


 その人物というのは、地味な髪留め後ろ一本にまとめた髪に、丸眼鏡をつけ、化粧などはほとんどしていない幸の薄そうな、かなり太り気味の少女であった。


 その外見はとても注目に値するほどのものではなく、むしろ、地味の一言に尽きる。しかしながら華やかな貴族の学園たるこの空間では明らかに浮いていた。


「おはようございます。皆々様方」


 その人物は教室に入るや否や、なぜか毎度毎度、当たり前のようにわらわらと僕のもとに集まってくる王子たちに深々と頭を下げ、挨拶をするのであった。


「あ、ああ、おはよう」


 突然のことに動揺しながらフレデリック王子が返答する。そしてそれに続いて周囲のほかの面々も頭を下げる。


 そしてその女は挨拶だけすると離れていき、教室の比較的人の少ない場所の席に座り込むのであった。


「……誰だ」


 思わずガーラン王子がそう口走る。しかし、そんな反応のガーラン王子とは違い、フレデリック王子は信じられないような表情でその少女の後姿を見ていた。


「エリザベート……?」


 どれだけ嫌いな相手とは言え、さすがに元婚約者のことくらいはわかるようで、しかしだからこそ彼女の変わりようにフレデリック王子はただただ驚いていた。


 エリザベートは昨日、ニーナによってまずは腐りきったその性根をたたきなおす必要があると判断された。


 これはその一環なのである。


「今日からしばらくの間、その厚化粧は禁止です。むやみやたらと塗りたくってるせいで肌もボロボロになってるみたいですし、最低でも二か月間、お化粧は最低限のものにしてください。それと髪型も凝ったものではなく、地味目のものがいいですね」


 ニーナはそういうと今のエリザベートの外見をプロデュースした。

曰く、外見は内面の一番外側であり、あえて自分をそのような姿にし、周囲にさらすことで己がみじめを自覚し、傲慢さを捨てさせることが目的らしい。


 またほかにも、


「毎日必ず、挨拶を欠かさないようにしてください。それから、何かしてもらったときは必ずお礼を言うこと。平民も貴族も関係ありません」


 これは本来誰でも出来てしかるべきことではあるが、エリザベートはそれができていない。

こんな当たり前のことですらもエリザベートにとっては億劫なものであり、言われなければ実行できないのだ。


「いやなことがあっても逃げてはいけません。感情的になる前に深呼吸をして冷静に物事をとらえてください」


 これはまさしくエリザベートの一番の問題点といえよう。


 エリザベートの人間性の問題はそう簡単に解決できるものではない。しかし、深呼吸を挟むことで何事にも取り組む際、文字通り一呼吸置くことで自分を見つめなおさせる必要があるのだ。


 以上がひとまずエリザベートの課せられた試練である。


 これをとりあえず様子見もかねて一か月ほど続けて、段階的にエリザベートの悪癖を修正していくのだ。


 そして、最低限度、まともな感性を身に着けることができるようになったとき、ようやくエリザベートの罪滅ぼしが始まるのだ。


 もはや僕が介入する余地もなければ必要もない。おそらく、あとはニーナに任せていれば問題ないだろう。


 そう思っていた時であった。教室にヘンリー皇子一行が入ってきたのである。そしてその時、護衛の一人である、ロズウェルと目が合う。そしてロズウェルは僕と目が合い、連続で三回、瞬きをした。


 ロズウェルと僕との間で決まっている、何かあった時のサインである。


 それに気づき、僕はトイレに行く振りをしてその場から席を外した。


 そしてしばらくすると浮かない顔をしてロズウェルがやってくるのであった。


2/5 1:30 追記:すいません。どうにか結末までの道筋が立ちましたので、いったん執筆に集中したいので明日の投稿は先延ばしさせていただきます。次回の投稿は土曜日の15時頃になると思います。


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