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125話 隊長 その2 (ノア視点

 第一心象としてはあまり威厳もなく、体格もこの兵団内ではそこまで突出したものではない、なんだか特徴のない男である。


「おい、アーギュ」


「ん? アルベインじゃねーか。お堅い書類仕事は終わったのか」


「どの口が言うとる。お主の分もやってやっとるんだ。少しは感謝せい」


「おう、もちろん感謝してるぜ。それで、どうしたよ」


「例の少女が訓練に参加したいというとる。面倒を見てやってくれ」


「お、あいつに襲い掛かって返り討ちに合ったっていう、あのガキか」


 あいつ、とはベストールのことである。ベストールは死んでいるということになっているため、むやみに名前を出すことはできないのである。


 しかし、ベストールが生きているということを知っているということは、この男はおそらく兵団の幹部なのだろう。


「おう、新入り。俺はアーギュ・カーネルだ。歩兵部隊の隊長をやってる。よろしく~」


 耳を疑った。この男も隊長なのか!? 信じられん。まったくそんな風には見えない。そう思っているとアーギュは立ち上がり、じろじろ俺を凝視してくる。


 そして最後に鼻で笑った。その態度に俺はさすがにカチンときた。


「おい、今なぜ笑った」


「いや、お前よくあいつに殺されずに済んだもんだなって。あいつはやさしかっただろう? 昔から女々しいとこがあんだよなぁ。戦争中もお嬢様に律儀に毎週毎週、自分は生きてますよーって手紙なんか送ってやがんだ」


「あいつがそんなことを?」


「おうとも。俺らの前じゃ気を張ってはいるが、本質はガキの頃からなんも変わってないからな」


「……それは、俺が女だから手心を加えられたといっているのか」


「ああ、そうだぜ」


 その言葉を聞いた時には剣を引き抜き、アーギュに向けていた。完全なる不意打ちである。


「おっと」


 しかし、アーギュはいとも簡単にその不意打ちをいつの間にか引き抜いた剣で弾き飛ばした。その衝撃で俺は剣を手放す。そして気づいた時には首筋に剣を突き立てられていた。


 一瞬何が起こったのかわからず、硬直してしまう。


「アブねぇなぁ、お嬢ちゃん。味方同士の殺しはご法度だぜぇ?」


 不敵な笑みを浮かべてアーギュはそういった。


 そこにいたのはもはや先ほどとは別人のように俺は感じていた。忘れていた。リンネも最初は普通の女にしか見えなかった。


 でも、ふたを開けてみるとあの化け物っぷりである。目の前の男もそのパターンなのだ。しかし、あの時とは少し違う、


 リンネはベストールが俺を警戒していなかったからそのようにふるまっていた。しかし、アーギュの場合はそもそも俺など警戒に値しないのだ。それを一目で見抜かれていた。


 やはり、紛れもなくこの男はエインベルズ兵団の隊長なのだ。


「今のでお前の実力は大体わかった。まあ、威勢はいいが、それどまりだな。挑発のつもりで適当なことを言ったが、そんなんだとあながち、本当に手心を加えられたんじゃねーの? 知らんけど」


 そういうとアーギュは自分の剣を鞘に納め、落ちた俺の剣を拾い上げた。そして、剣を俺に手渡してくる。


「ほれ、しっかりと握ってな」


 いわれるがままに剣を受け取る。


「おい、アルベイン。こいつの面倒は俺が見んのか」


「ああ。訓練はお前さんか、リンネが見ることになっとる。配属はまだ決まっとらん」


「ん、りょーかい。おい、嬢ちゃん。しばらくは俺が面倒見てやる。死ぬ気で俺を殺しに来てみろ。そうすりゃ、ちったぁ、マシになるだろうよ」


 そういってアーギュは再度、俺の目の前に立ちふさがった。


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