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118話 暗殺者 その五

「そういえば、お前、名前はなんていうんだ?」


 店を出て、夜道を歩きながら僕はふと相手の名前を知らないことに気づく。というか、ずっと気になってはいたが、聞きだすタイミングを逃した。いつもならば大体、僕が名乗って相手に名乗らせるのだが、その流れが使えないためだろう。


「ノア・エルメス」


「ノアか。うん。短くて覚えやすい。いい名前だな」


「そのほめ方はどうかと思うが……まあいい。これから俺は何をすればいい。というか、今はどこに向かってるんだ」


「もともといた場所だよ。ここでおおっぴらにいろいろと話すわけにはいかないからな」


 僕はそういうと元居た町はずれの森に足を運ばせた。さして遠くもないため、十分ほどで着いた。


「……さてと。とりあえず、お前、服を脱いでみろ」


「……なぜだ」


「お前はもともと、僕を殺しに来た暗殺者だからな。悪いけど、まだ完全に信用するには僕の肝は小さすぎるんだ。ほかに凶器を持ち合わせていないか確認させてほしい」


「……わかった。不本意だがそういうわけなら仕方ないな」


 そういうとノアはためらうことなく服を脱ぎ始めた。森の中ということもあり、人影は感じられない。誰かに知られる心配もないし、暗殺者である以上、多少の恥には慣れているのだろう。


 そう思いながら僕は脱ぎ捨てられていく服を確認しようと近づいたその時、ノアの体を見上げた。そして異変に気付いた。


 この男、女物の下着をつけている。


「お前……そういう趣味なのか」


「? 何を言っているんだ」


「いや、その下着」


「下着がどうした?」


 まるで話の歯車がかみ合っていないようであった。あれ、もしかして僕がおかしいのか。


「……お前もしかして……性別は……」


「女だ」


 ああ、はい。納得いたしました。いや、むしろこの瞬間まで勘違いし続けれたのは幸運というべきか。初めから女だと知っていれば僕のことだ。所持品チェックも甘いものになっていたはずである。


 そんなことを考える僕をよそにノアは下着もすべて脱ぎ去り、あられもない姿になってしまった。


「……そうか。男だと思ってたよ」


 ここは平静を装うのがベストである。冷静沈着に英雄の皮を被るのである。言い訳など見苦しいほかない。


 僕は心を無にし、黙々とノアの所持品を確認した。服装からはいくつかの毒物と武器が見つかったが、すべて回収しておいた。


「よし、着ていいぞ」


 僕がそういうと、何事もなかったかのようにノアは服を着こんだ。こいつに羞恥心はないのだろうか。


「これからどうするんだ」


「あ、ああ、馬を調達してとりあえずエインベルズまで来てもらう。本題はそれから話すよ」


「エインベルズか。ここから馬を飛ばしても三日はかかるな……」


「長旅になるから覚悟しとけ。何か準備はあるか。ないならすぐにでも出発するけど」


「いや。大丈夫だ」


「よろしい。行こうか」


 その後、僕は学園の馬小屋から一匹の馬を拝借し、早々に旅立ったのであった。誰にも連絡していないのは少し気が引けたが、ことは緊急を要する。帰ってきてから小言を言われるのは覚悟しておこう。


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