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第五十八話 カオスノード最終決戦その1

 あ、ここはどこ・・・。

 目を覚ましたら、目の前にフレイア様の顔が!あ・・・あああ。

 後ろでイビキをかいてるのは・・・・。

 あああ!フレイア様の目が開いてるの!!こっち見て笑ってるの!

「おはよ、アローラ♪」

「お、おはようございますぅ・・・。」

「うう~ん。」と言う声と共に、レンジョウの太い腕がお腹の上に!

「レンジョウ様は寝相が大層悪いのよ。」と小声で言いながら、フレイア様はクスクスと笑っていたのよ。


「は!ヒ、ヒドラはどうした?」と寝言を言うと、レンジョウが私に抱きついて来たの!ああ!どうしよう!

「昨日の夜は、ちゃんとレンジョウ様の髪の毛も何もかも洗ってあげたでしょう?お返しに洗って貰ったでしょう?」ニコーっと、フレイア様が笑ってるの。いえ、嗤ってるのよ。

 そうでした。全部見ましたのよ、そして見られましたのよ。今日から、どうやってレンジョウと顔を合わせたら良いのか・・・途方に暮れちゃうわよ。

 それはそうと・・・フレイア様、なんであたしをジッと見てるの?

「フ・・フレイア様。ど、どうかなさったの?」どもってしまうの。見つめられると怖いの。

「素直になりなさいな、アローラ。レンジョウ様の事が好きなんでしょう?」・・・・・・。

「あ、あの・・・・その・・・そんな。」とモジモジしてたら。

「好きなんでしょう?」と凄い顔で睨まれたの!


「うん・・・。最初に会った時から。なんて強い人なんだろうって思ってたの。」

「でも、途中からは、優しくて一所懸命な人。そう思う様になったのよ。」

「自分はボロボロに傷付いてるのに、他の人が傷付いてたら我慢できないで無茶をし始める。そんな人だって気が付いたの。」そんな事を言ってる間に、あたしは自分が涙をポロポロ流してるのに気が付いたの。

「偉いわね、アローラ。そんな風に彼の事を見ていたなんて。それは、好きになっても当然よね。」そんな女王様の言葉に、あたしはまた泣いてしまったのよ。


 ****


 アローラはそれからすぐに、服を着て出て行った。


「どうしますの?あの娘、本気で貴方様に懸想していますよ?」フレイアが俺を揶揄う。

「どうもこうも、あいつは俺の戦友だ。それ以上でもそれ以下でもない。しかも有能で立派な戦友だ。」

「魔術で召喚された勇者であっても、アローラは女なのですよ?」

「エルフにも立派な男は多いだろう。騎士団の連中の勇猛さや、剽悍さ。名誉を知る心映え。俺ですら認めないではおけない連中だ。」

「そう言う事ならば仕方ありませぬ。ともかく、今日は残りのノードも占領しなければなりませぬ故。積もる話は、その後と言う事に致しましょう。」フレイアはそれで話を打ち切った。

「ところで、服を着た上でお話したい儀がございます。」フレイアは為政者の顔に戻った。

「良いだろう。俺で相談に乗れる事ならば。」それは、そこそこ大変な事だったのだが。


 ****


「見て下さいませ。昨日のノードから得られた戦利品です。驚きの戦果ですわ。」

 そこにあったのは、壊れた魔道具で、それらの内容はフレイアに強力な技能として定着したのだそうだ。

「”創造技巧”と”ルーンマスター”の技能を昨日の戦いで会得致しました。」

 創造技巧とは、半分の魔力で魔法道具を作り出す技能で、ルーンマスターとは魔術の解除能力を大幅に向上させ、魔力魔法の消費を大幅に減らしてくれる技能なのだそうだ。


「そしてこれもです・・・。」バサッと音を立てて投げられたのは、分厚い書物で・・・。

「これはなんだ?」俺が聞いたところ「赤系統(カオス)の魔法書です。しかも2冊。」俺にはその意味がわからなかった。

「フレイアは、この本を手に入れれば、カオスの魔法を行使できるようになるのです。」と言ったフレイアの顔には、ウンザリした表情が浮かんでいた。「異世界からやって来る混沌の力を憎む大自然の使徒に、カオスの魔法書が与えられたとしても、あまり嬉しくは思えませぬ。」

「それを使えば、例えば俺でも魔法を使えるようになるのか?」との問いに、フレイアはいいえと答えた。

「それが盗まれた場合はどうなんだ?例えば”カオスの国(モルドラ)”の大魔法使いに盗まれたら。」

「それは大変な事にございます。」

「なら、それはお前のモノにしてしまい、お前は奴等のやり口を学んだらどうなんだ?」との俺の言葉に、フレイアは「それはそうでございますね。他人が使えなくすると言う意味でも。それは思い付きませんでした。」と喜んでいた。問題は解決した様だ。


 後は、随分な数の武器や防具、装飾品が手に入ったのだと言う。


「こちらの鎧を貴方様に着て頂きたいのです。」と言って取り出したのは、美しい鎖帷子だった。「防御力と抵抗力の双方がハイレベルな鎧なのです。アローラに新しく与えた鎧とほぼ同性能の優れものです。」

「軽いな!これは普通の服と変わらない着心地だ。」俺もこれには驚いた。

「この鎖帷子には、高いレベルでの速度向上の魔法も掛かっております。その他に神聖魔法の奥義”神の加護”が込められているとわかりました。」それって最高じゃないか!

「それは貴方様に差し上げます・・・。」とフレイアはしんみりと言った。

「ラサリアに戻っても、その鎧と共にフレイアを思い出して下さいまし。」と言ったまま、その後は口を噤んでしまった。


 ****


 昨日の戦闘で手に入ったと言う武器と防具、それに装飾品。凄い物が揃ってるのよ。

 まずは武器、驚きの威力だわよ。レンジョウの武器と同じく稲妻を矢に纏わせる事ができるの。それに加えて単体での攻撃力と命中率も凄い。その点では前の弓は全然ダメだったと思うの。最後に奥の手もある”破壊の稲妻(ドゥームボルト)”って言うらしいけど、どれもこれもカオスの魔法で作られている感じがする・・・。


 次は防具、以前のミスリルの鎖帷子も良い防具だった。けど、これに比べたら全然ダメ。この新しい鎧は赤銅色の板金鎧だけど、小さく纏まっていて全然嵩張らない。防御は最高クラスらしいし、抵抗力も高くなっているらしい。最高なのは移動力向上の魔法が更に強力になった事と、これもレンジョウ同様に魔法免疫が備わっているらしい。武器は炎の蛇のノード、防具は悪竜の沢山いたノードにあったらしいのよ。


 最後は装飾品。鳥の形をした、青くて可愛いブローチ。呪文をもっとたくさん使える様になる上に、移動速度を向上させて、”守護の風”が常動で動作しているらしいのよ。とっても嬉しいのが、武器の命中率をそこそこ向上させてくれる事。これも悪竜が貯め込んでいた財宝なのだそうよ。


「はあ・・・。凄い財宝がわんさか手に入った訳なのね。」苦労した甲斐があったの。他にも何本かの魔法の杖や沢山の装飾品、剣と斧、盾も手に入ったらしいけどね・・・。

「それを使える勇者が居ないのよね。」これは大問題かもね・・・。


 ****


 作戦開始まで後1時間ほど。俺は歩いて仮称”ノード8”まで歩いて行った。フレイアとは気まずい感じになったが、アニタとファルカンが迎賓館で朝食を振る舞ってくれた。

 二人は軽い朝食で済ませていたが、俺はガッツリ食わないと、戦いの途中でへばる事になる。夕食の余り物を全部出させて、パンと一緒に食いまくった。

 何やら、ファルカンがこちらの方を罪悪感たっぷりの目で見ているが、敢えて無視した。

 アニタは、昨日の戦いの事を聞きたがった。しかも熱烈に・・・何かあるなとは思ったが、それも無視して、ありのままを伝えた。


 アニタは、悪竜の目玉の奥に手をぶち込んだ事、蛇の心臓を掴み出した事を聞いて大喜びしていたが、反対にファルカンはいよいよ顔色を悪くして、最後は頭を抱えてしまった。

 ニヤニヤと笑うアニタに、そこはかとなく邪悪なものを感じてしまったが、それはファルカンの責任範囲なので、俺には関係ない。とにかく、これで俺の準備は終了だった。


 そして、ノード8に着いた。見た目は子供っぽいが、勤勉で有能なアローラは、準備に余念がない様子だ。反対に俺は、昨日の夜の浴室での出来事を思い出して困っていた。さあ、どんな挨拶をするべきなのか・・・。

 アローラは、俺の視線に気が付いた。新しく貰った赤銅色の鎧が眩しく光を反射している。アローラの顔も、鎧に負けない程赤くなり、下を向いてしまう。

「その鎧は格好いいし、ブローチも可愛いじゃないか。」と褒めたのだが、モジモジしたまま黙っている。

 その後ようやく「レンジョウの鎖帷子も綺麗なの。銀色で・・・。あ、あの。この鎧とブローチの力で、あたしも前より早く走れるようになったのよ。だ、だから、レンジョウが走って行っても、すぐに追い付けるの。そ、それで・・・えと。」結局またまた元の木阿弥だ・・・。


「昨日よりも、楽に中の連中を倒せそうか?」弓を指さして言う。そうすると、大喜びで「この弓は、レンジョウの武器と同じで稲妻を放てるの!奥の手も凄いの!カオスの魔法なんだけどね・・・・。」と、最後だけはちょっと締まらない感じだったが。

「とにかく、後五つだ。今日も頑張ろうぜ!」

「うん、頑張るの!最後まで頑張って、みんなでフレイア様に褒めて貰うの!」と元気に大きく答えたものだ。その”褒めて貰う”と言うのが・・・また、フレイアらしいと言えばらしい事になったのだが。


 ****


「悪竜が四匹。それと、”滅亡の蝙蝠(ドゥームバット)”が二羽なのか二匹なのかと、蛇までいるのか?」更に状況は悪化している様だ。

「雑魚はほとんど食べられてしまった後みたい。蝙蝠もきっと食べられて減ってるんだよ。」なるほど。

「蝙蝠で気を付けるべき点はあるかな?」初見の怪物だ。きっとロクでもない奴だろうし。

「とんでもなく速く飛べるし、魔法の力で燃えているから、接近戦になると面倒なのよ。でも、レンジョウには関係ないの。今のあたしにもね♪」余程に、新しい鎧の効果に満足している風だ。

「”飛翔”の魔術を頼んだぜ。」「はいなのよ!」さあ、これで後は問題ない。


 ****


 今回の戦いは全く危な気なかったの。レンジョウは昨日まで”魔法免疫”が炎のダメージを防ぐと知らずに戦っていたみたいなの。

 道理で毎度必死で避けていた筈よね。そんな事を助言してなかったあたしは、本当にうっかり者だわよ。

 それで、今日からは開き直って炎を無視する事にしたらしいの。蛇なんかはそうすると首が噛み付いて来るのを避ければ良いだけになったから、毎回襲って来る首を迎え撃ってはダメージを与え続けて、最後は心臓の上から背中を連打で叩いて、それで殺しちゃったのよ。


 今回からは、フレイア様と共に、あたしも”蜘蛛の糸”を使い始めて、すぐに悪竜は地面に落され、鉾槍兵と騎士が寄って集ってやっつけて・・・。

 ああ、蝙蝠ね。普通にあたしが一匹、レンジョウも一匹。一番最初にやっつけてしまったわよ。


 ここではまた赤系統の魔法書が一冊見つかったの。だから合計三冊目。このままだと、フレイア様はカオス魔法のエキスパートになりそうな予感がするのよ。


 ****


 ノード9、蝙蝠が二匹と、猟犬多数、巨人が二体。魔術師団と、剣士団、鉾槍兵団が引き受けてくれた。結果として、大量の金貨と何かの呪文が見つかったと言う。


 ****


 ノード10、ここが問題だったのよ。炎の魔族が九体も居たの。そこでレンジョウはとんでもない事を言い出したの。

「ここは俺とアローラだけが行く。」ってレンジョウが言い出して。みんなは散々止めたんだけど「奴等は魔法を使って来る。誰が行くにせよ、魔法免疫を持っていないと集中攻撃で被害が出る可能性が高い。」と言って聞かないの。

「あいつら、矢を捻じ曲げて飛ばなくしてしまうのよ。」と言うと「奥の手を使え。いざとなったら、腰の剣で戦え。でなければ、俺一人で行く。」


 結局、レンジョウは言う事を曲げず、魔術師もレンジョウの意見に賛同したので、あたしと二人きりでノードに入ったのよ。

 結果は、あたしの弓は一回撃った時点で魔族の魔法で矢がダメになったの。けど、奥の手連発で、最後は剣を抜いて突撃してね。一発で魔族を殴り倒して行くレンジョウは平常運転、奥の手で死ななかった魔族は接近してあたしが斬り殺したわよ。

 レンジョウが六体、あたしが射殺したのが一体、斬り殺したのが二体。しかも無傷で勝利したのよね。あたしの手傷も次のノードに歩いてる間に再生してたし。


 ちょっと気になったのが、あたしを見る騎士団や鉾槍隊の人達の目が変わった事。奇妙な何か、怖ろしい何かを見る目になってるの。それがなんだか釈然としないのよね。

 まあ、ほんの10分程で、魔族を九体倒したのは、確かに自分でも人間業とは思えないけどね。


 ここで手に入れたものは、更に異質だったわ。白系統(ライフ)の魔法書が一冊、意味不明な道具が一つ。悪竜や蛇の居たノードよりも更に強力な品物が手に入ったの。


 ノードは後二つ。もう、何でも来いって感じ。きっと、レンジョウが居れば大丈夫なのよ。

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