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第三話 お茶会

「お茶をお持ちしました。」メイドが帰って来た。大きな盆の上に、茶と食事を乗せて。

「勇者様からどうぞ。」そう言うと、あまり分厚いとも言えない奇妙な色のトーストした食パンが3枚。それに何かのディップみたいな代物が添えられている。空のカップがアリエル、俺、ザルドロン、そしてメイドの席に置かれ、次々に紅茶が注がれていく。

「どうぞ、先にお召し上がり下さい。」王様代理の少女は、気さくで心遣いも細かい。「では、遠慮なくいただきます。」俺はそう言うなり、まだ熱いトーストを一口噛んだ。

「???」口に含んだトーストを、奥歯の方に動かして咀嚼する。香ばしい、そして口内に広がった滋味を味わう。噛みごたえはあるが、別に硬いのではなく・・・言い表しにくい。もう一口。


 一心不乱にパンを頬張る俺を、三人はしばらく見物していたようだ。「美味しゅうございましたか?」メイドがちょっと自慢気に問いかける。「今この瞬間美味しいんだ。後2枚残っている。」俺は2枚目に取り掛かった。「シーナ、これがレンジョー様の今のステータスよ。」アリエルがメイドにノートを手渡している。

 新たに判明したこと、メイドの名前はシーナ。もう一つ判明したこと、この世界には製紙技術があること。さて、次に知らなければならないのは、俺のことだ。


「俺の能力は高いのか?低いのか?爺さんはえらく驚いてた様子だったけど?」

 ザルドロンは茶を一口すすると、溜息を吐いてから口を開いた。「儂も勇者の端くれではある。しかし、お主に比べると恥ずかしいくらいの能力じゃわ。」

 シーナが後を引き継いだ。「レンジョウ様の能力は”英雄召喚”、つまり下級の召喚魔法で来訪する英雄としては破格のものでしょう。遠距離の攻撃能力がないのは、戦士タイプではままある事。むしろ大半の英雄は近距離専門です。そして、その中に魔法免疫の資質を持った者は皆無です。」

「上位魔法の”強者召喚”でも、聖騎士の勇者だけが魔法免疫を備えていますな。後は、伝説の選ばれし者だけ。古くから世に知られている勇者では35人中2人だけ、お主が36人目で3人目じゃな。」髭をしごきながらザルドロンがそう締め括った。


「じゃあ、俺はそこそこ上の能力を持った勇者って事になるんですか?」サワークリームとチーズのディップを多分ライ麦パンのトーストだろう何かで掬い取りながら、俺は控えめに聞いてみた。

「魔法の恐ろしさを知っておられる方なら、貴方の能力がどれ程凄いのかすぐに理解できる筈です。」アリエル姫はそう言ってほほ笑む。その後がいけなかった。


「ちょうどいいじゃないですか。先生がいらっしゃるんだから、魔法の効果を実演していただいたらどうでしょう。」シーナがそんな事を言いだした。

「賛成できんね。儂の魔法は対象の精神に直接打撃を与えるタイプじゃからな。誰にであれ、戯れに仕掛けるなど言語道断じゃよ。」そう言う彼は良心的な魔法使いなのだ、だがシーナはそれでも諦めなかった。

「そもそも、勇者様には魔法が通じないのでしょう?勇者様はどう思われます?」と、なおも食い下がる。


「俺は遠慮したいね。この場は茶の席だろう。血腥いことは別の場所でやればいい。そんなことより、教えて欲しいんだ。俺がこれからどうすればいいか。」さあ、大事な話題に切り替えだ。

「今は我が国はどこの国とも事を構えてはおりません。レンジョー様は、当座は客分としてお城に逗留していただけたらと思います。」アリエル姫はそう言うが。

「なら、一朝事あれば、俺は兵隊として前線へって事か?」多少皮肉っぽい口調になったのは仕方ないだろう。

「私に言わせれば、勇者として王に召されて、その上で戦いに出ない事こそ、何事って感じですが。」シーナの目付きがかなり険悪に変化している。

「だが、俺には武器は使えない。素手の格闘は随分力を入れたが、武器になりそうな道具は金槌以外は握った事もない。金槌も釘や板以外は叩かなかった。そんな俺が戦いの役に立つのか?」


「あの・・・。」アリエル姫は小さく頭を下げながら何かを言おうとしている。

「姫さま、どうかなされましたか?」ザルドロンが怪訝な顔付をする。

「わたくし、護身と周辺国監視のために、”魔法感知”の世界呪符を組み上げております。ですから、魔道具が近くにあればわかるのです。」それはわかったが、なんで俺の方を見ながら言うんだろう。

「”召喚の間”で見た時から気になってはいたのですが。他人様の持ち物ですので、改めさせて下さいとは言いにくくて。あの、レンジョー様のお持ちになっている大きな袋ですが、その中に強い魔力を感じるのです。」・・・・え?




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