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第二話 王城の中

 地下から徒歩でそんなに広くない階段を上がって行く。石の壁、石の階段、薄暗い照明と揺らぐ人影、響く足音と杖の音が薄暗さを更に強調する。

 誰も一言も喋らない。黙って歩いて行く。途中、ホールのような場所に何度か辿り着き、そのつど他の階段に乗り換える。

 現代日本人には少し過酷な試練になるだろう道のりで、流石の俺にもちょっと堪えた。何しろ、今の俺は腹ペコなのだ。


 どんだけデカい石造りの塔なんだと。ざっと記憶しているだけでも、地下が5階、とんでもなく長い螺旋(らせん)階段を登り詰めに登って、地上に出たかと思うと今度は木製の真っ直ぐな階段を上に登った。

 この階段、いざ鎌倉って時には引き上げられるようになってるらしい。2階に登ったホールでは、完全武装の兵隊か騎士が30人程詰めていて・・・・凄くギラギラした瞳でこちらを睨んでいる。その後ろには巨大な手巻きのガンギ車が見える。

「アリエル様!おかえりなさいませ!!!」しかし、殺気立った雰囲気とは裏腹に、彼らはアリエル姫に敬礼するだけだ。ただの敬礼にちょっと気合入り過ぎだろう?


「お勤めご苦労様です。忠勤に感謝致します。」アリエル姫が両手を組んで彼らにお辞儀で答礼すると、そんな物騒な一団が両膝を着いて両手を組み、頭をひたすらに下げるのだ。

 面倒な事に巻き込まれたもんだ。お姫様とその爺やとメイド、それについて行く俺は、着替えと日用品と借りもののラノベを持って、どでかい石の城の階段をひたすら上がっているだけだ。

 それにしても”勇者様”か?いい加減にして欲しいもんだ。便利な超常能力付きの破壊兵器が魔法で呼んだらホイホイやって来るのかね?まあ、俺の知識は奴から借りたラノベだけなんだら、他のパターンもあるのだろうけど。


 歩く道すがら、俺の腹はグーグーと音を立てどうしだった。キツイ目付きをしていたメイドも、次第に振り返って薄く笑うようになった。

 一体どれくらい階段を歩いたのだろう?文明社会では絶対にありえない程の距離を俺は登った。メイドも、お姫様も、ジジイですら、普通に歩きとおした。そうして、俺は応接室のふかふかのクッションがきいた椅子に座っている。

 やっぱり、昔の人間の体力は半端ないな。と一人納得したが、もしかしたら、今晩寝て起きたら、俺は尻や腿の筋肉痛になってるのではないか?そう思って憂鬱にもなった。

「レンジョウ様のために、軽いお食事も用意して参ります。しばらくお時間をいただきます。」メイドがそうアリエル姫に告げて辞去する。アリエル姫は返事は省いて、ニコリと笑ってお辞儀だけをした。


「さて、まずは改めまして。ようこそ、勇者様、我らの国へ。わたくしは、この国の国王代理、アリエル=トライトンと申します。以後よろしくお願いします。」明るい応接室で見直してみると、さらにアリエルは美しかった。妖精のような儚さではなく、控えめではあるが芯は強そうだ。

「儂はザルドロン。お主同様に召喚されてきた英雄じゃ。主たる役目は魔法研究、軍事面では主計と兵站。前線で戦う事は稀じゃの。」ジジイも自己紹介を済ませた。


 うーん。こんな時どうすれば良いんだろうな?名前は既に告げている。けど、何の特技もありませんとか。力仕事には自信がありますとか。殴り合いの喧嘩なら滅多と負けませんとか。ないよな・・・。

「俺は蓮條主税。先ほどまでいた世界では、単に力仕事や建築関係の仕事をしていました。けど、勇者扱いされるような特技は持ち合わせていません。」ここは正直に打ち明けるしかないだろう。ハッタリのために死んだりしたらシャレにならない。

「レンジョー様には勇者と呼ばれるに値する特技がないとおっしゃるのですか?」アリエル姫、いやこの人は代理でも国王なんだよな。それが首を捻っている。

「自分では自覚がありません。」俺にはそう言うしかない。

「そのようですね。ご自覚がないのでしょう。」何度か首を縦に振った。

「召喚者であるわたくしには、レンジョー様の資質や特質がある程度見えます。それらをお知らせしましょう。」


勇者名称  蓮條主税

ランク   到着直後

短距離打撃  8

長距離打撃  0

物理防御力  6

総合抵抗力  8

総合耐久力  8

<特殊能力>

主導力 0

腕力  1

敏捷  1

体格  1

魔法免疫

幸運


「備忘録に、今日この日のレンジョー様のステータスを書き記しておきます。」アリエル姫はそう告げて、俺のステータスを書いたノートを手渡した。後ろからそれを覗き込んだザルドロンが息を呑む。


 居心地の悪い時間は終わらない。メイドも帰って来ず、俺は空腹で倒れそうだった。

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