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第百二十話 タウロンとの会見

”我が君。ちょっと俺、こいつらに悪い事してるんじゃないかって思う様になりましたよ。”

”ほほう、どうしてそう思うのだね?タキよ。”

”こいつら、俺が我が君とずっと繋がってて、見たもの聞いたものを全部伝えてるなんて思ってもいないみたいですから。それと、レンジョウが人殺しをしないのを良い事に騙してる感じがするんですよ。”


”策略とは、その様なものではないか。元来から汚いものであると、予は心得ておるぞ。”

”そんなもんすかね。ちょっと納得行きませんよ。こいつら、本気で良い奴等です。”

”なるほど、タキはそう思うのであるか?”

”ええ、本心からそう思ってます。我が君の御為と思うからこそ、自分のやり口にも我慢してますがね。”

”その美しい心映え、大事にすべきである。予は、汝がその様な勇者である事を喜ぶものである。”


”さて、目的地に到着したみたいです。後はお任せ致します。”

”よろしい。後は予が引き受けようぞ。毎度の事ながら、大儀である。今しばらく頼んだぞよ。”

”承りました。我が君。”


****


「ここだね。さあ、そこに証人の一人も居る訳だし。君にも証言を頼むとするよ。」大男はタキを見つめて決め付けた。

「・・・・・。」タキは何とも言えない顔をしている。


「ふうん?そんな事口が裂けても言えないとか?そんな事を考えているのかね?君、その斧を・・・。」マキアスは、言われるままに斧を手渡した。

「我は言った事はやるよ。わかっているかな?言わないなら、君の口を裂こうかと思うんだ。どうかね?」

 突然・・・・今までは確かに危険な相手だとは思っていたが、それは武器と武技の事。性格まで危険な様相を見せるなど無かったのだが・・・・。


「なーんてね。冗談だよ、冗談。」マキアスに大男は斧を返した。

「けれど、ほら。この男の有様を見てごらんよ・・・。いろいろと君も考えてしまわないかね?」と大男は、右肩に担いだ鼻血まみれの白目を剥いたスパイダーを、担いだ方の右腕を曲げて、親指で指差した。


「あの・・・・俺でできる事なら協力します。いえ、是非協力させて下さい。お願いします!」タキは慌ててそう答え、右手を挙げた。

「そうかそうか。良い子だ。男の子も女の子も素直でなくてはね。我は素直な者を無暗に叩いたりはしないのだよ。」と満面の笑みで大男は言った。


 みんな、その言葉を聞いて黙ってしまった・・・・。


****


”タウロン様ぁ!(/´Д`)/Heeeeeeeelp!!!!!”

”いや、流石に殴り殺されたりはせぬであろうよ・・・。( ̄◇ ̄*)”

”確信ありますか?|・ω・)???”

”すまぬ。実のところ、ない。( *´ω`)スマソォー”

”ああ、タウロン様。あいつ(大男)が睨んでます!カタカタカタ(((;゜;Д;゜;)))カタカタカタ”

”どんな顔でじゃ?ヾ(_ _。)”

”こんな顔です。(   <((●))> _ <((●))>  )コロシチャフ”

”オオ!生命の危機を感じるのぉ!( ・ิ,_ゝ・ิ)”

”あの、知ってる事喋って良いですか?(。>ω<)ノ”

”駄目だと言ったらどうか?怒||`Д´)㌦ァ+.☆゜+.☆”

”俺、勇者辞めて良いですかね?(*´Д`).:∵・゜・.:∵”

”仕方ないのぉ・・・。(◍•ᴗ•◍)”


****


「あ~。喋ります。だから、斧は勘弁って事で。拳骨も禁止で。」

「それでよろしい。」

「あのぉ、この斧ですが、思ったより軽いって話でしたが、それは普通人を想定してですか?チーフみたいなゴリラなら軽いんでしょうけど。」ゴツっと言う音がしましたが、敢えて無視です。


「そう言えば、シーナさんのあの剣の使い方。俺が昔に通ってた図書館で、ギネス断トツの長編スペースオペラの主人公がやらかしてたのと同じ使い方っすね。」

「なんなのよ、それ?」

「確か、英語版だと100巻位で打ち切りになってた小説です。日本でだと、意地になって発行元が頑張ってるみたいですが。その図書館でも同じくボロボロの本が200巻くらい置いてあって、張り紙で”これ以後はご自分で購入して下さい”って書かれてました。悲しかったっすね。」

「ふーん。」

「その主人公は、何万年も生きている面倒な相方と砂漠で決闘した時に、バスタードソードをフェンシングの剣みたいに使ってぼろ負けした上に、言葉で苛められてトラウマ植え付けられてました。」

「それに比べて、シーナさんは凄いです!あれで戦えるんだから大したもんですよ!俺には一生無理な戦い方でっす。」


「あの、俺、話して良いかな?」

「そうしろ。要らない内輪もめが起きそうだから。サクサク話せ。」

「了解!」


****


「事の起こりは10年前って事になるか。俺達の国であるモルドラに新しい勇者がやって来た。ウォーラクスの事だ。奴の実戦テストって事で、俺達は出陣して、当時は敵対していたフルバートと一戦交えてみようかって事になった。」

「実際は他にも理由があった。あの頃は、まだバルディーンとその奥方が亡くなっていた事を俺達は確信してなかったのさ。なんせ、フルバートの連中はそれを方々に触れて回っていた位で。普通は、自分達の主君が身まかったならば、喪に服すなり、それを隠したりすると思うんだがね・・・。」


「王家の男子の一人サジタリオ王子はフルバート駐屯軍を率いて出撃して来た。当時はフルバートの軍勢も、国軍の分遣隊って位置付けだったんだ。今じゃフルバートもバーチも完全に国軍から外れた貴族の私兵集団になっちまってるがな。」

「サジタリオ王子は、俺から見ても立派な戦士だった。護衛達も意気軒高で精鋭の家臣揃い。ただなぁ・・・彼は魔法を使う才能もなかったし、フルバートに駐留していた筈の勇者デスストライク、あんただよな?」タキは大男を指で差した。

「以前はね。けれど、デスストライクは、バルディーン殿のご逝去の際に、魂の一部を損傷してしまったんだよ。ノースポートに駐留していたシャラも同じだった。そして、彼も同じだった。」

 大男はスパイダーの方を見て、顎をしゃくった。

「良くわかんねぇや。わかりたくもねぇ。とにかく、肝心の防衛戦力の要のデスストライクは動かなかったんだ。さっきまでの戦いを見るに付け、俺達は随分と幸運だったようだがな。」


「まあ、そんなこんなで、当初は両軍とも白熱した殴り合いになったんだが、レイヴィンド、爺さんとウォーラクスの支援魔法での射撃の後、俺がプチレンジョウって感じで相手の陣営に躍り込んで戦い始めると、サジタリオ王子も戦線を維持できなくなって、遂には敗走してフルバートに閉じこもったのさ。」

「俺達も、すぐそばにヴァネスティがあって、後続が到着して、例えばフルバートを占領できたのだとしても、いずれと言うか、数日中にでもエルフがやって来て、例のごとく都市を更地に変えちまったら、元も子もないって思ってた。俺達の心の中では、エルフってのは頭のおかしい、酷い種族って事になってる。戦争捕虜といろいろ話したり、最近の一連の出来事で、その考えも随分変わっては来たけどな。」


 アローラが複雑な顔をして、シュネッサと視線を交わしている。

「だが、俺達こそは本当に頭のおかしい奴等で、しかも道化者だった訳さ。だからこそ、あんな恐ろしい事に加担しちまったんだ・・・・。」

「ここからは、伝聞と想像が入ってる。それでも聞く価値があると思うかい?」タキはそう言う。


「ああ。お前の思うとおりに言えば良いんだ。俺は他人の言う事を馬鹿にして聞いたりはしない。」レンジョウがそう言うと、タキは頷いて更に話し始めた。


「今から話す出来事は、俺達がとある評議会議員に賄賂を渡して聞き出した事だ。調べればわかるだろうが、それでもソースは秘密って事にしておく。ここらは仁義の問題だ。あんた達の良識を信じて話す事にする。」タキは遠い目をしていた。おそらく、昔を思い出しているのだろう。


「俺が聞いたところではだ・・・・サリアベルと言う令嬢が、幼い頃から寺院の尖塔に幽閉されていたと。」

「彼女は、バルディーンがフルバートを領土として併合した際に見つけた、危険極まりない儀式を行う巫女。とても古いフルバートの豪族の血筋。先祖返り故に異様な霊力を備えていた娘だったと聞いていた。彼女を一番危険視していたのは、バルディーンの奥方様のトーリア王妃だったんだ。」


「ここからは、俺達が調べた事も加わる。実際、その危険性については、裏付けもあった。」

 タキは私達の事をジッと見た。

「俺は情報提供者の評議会議員に幾つかの指示も出していた。国軍の敗戦で、フルバート市内で起きるだろう混乱について教えて欲しいと言う事だ。」

「彼の名誉の為に言っておくと、彼自身はフルバートに俺達が攻め込んで来るのは真っ平と言うスタンスだったんだ。”今後のモルドラとの友好関係”のために、俺達と繋がったって事だな。」


「戦うにせよ、和解するにせよ、パイプは必要なんだ。議会での発言力を高めるためにも、彼は金を必要としていた。サリアベルは侯爵の令嬢だったが、その議員は、彼女の事を極め付けの混乱を招く要因と考えていた。そりゃそうだ、大魔術師と聖女の二本立てで安定していた国が、二人とも相次いで亡くなった後に、危険な隣国、俺達の事だがな。そこから国境の大都市が襲撃を受け、国軍の分遣隊が壊滅の一歩手前まで追い込まれちまったんだから。」

「当時のアリエル姫はまだ8歳の幼女だったが、成長すれば立派な大魔術師になるだろうと誰もが太鼓判を押していた。現に小娘の今でも合格点の遥か上の術者なんだからな。見る目のある連中は当時は多かったって事だ。しかし、当時の情勢から言うと、何年かを悠長に持久する戦略を考えるのは無理だったんだろう。即戦力が必要だったって事かな。」誰もが黙って聞いている。


「トーリア王妃は見抜いていたのさ。サリアベルは、黒系統の魔術の素質があった事。そして、多分だが、その力がこの地下の旧市街由来のものである事も。俺は不思議で仕方ないのさ。何故、トーリア王妃も、バルディーン王も、サリアベルを単に子供の頃から幽閉していただけに留めていたのかがな。理由はすぐにわかった。ここからの俺の情報をアリエル姫に正確に伝えるかどうかは、お前達に任せるよ。あんた達の姫様はショックを受けると俺は思うんだ。」


「あんた、そこまでペラペラ喋って良い訳?」と私は訊ねた。


「俺の一存じゃないよ・・・・。じゃあ、責任者の言葉を頂くとしようか。」タキは水晶玉を取り出した。

「げにも立派で猛々しき勇者達よ。その方らの勇敢な戦いとその決着を目にする事ができたのは、眼福以上のものだった事よ。」朗々たる声が響いた。とてつもなく強い意志と威厳、それらの齎す畏怖が心の中に生じる。

「・・・・・・。」私は黙った。その声が誰の声か推測できたからだ。だが、言葉を返さねばなるまい。


「私は、ノースポートにおわす、ラサリア国の大元首であらせられるアリエル・トライトンの臣、シーナ・ケンジントンにございます。私どもにお声掛け頂いたのは、モルドラ国の大君主たるタウロン陛下とお見受け致しますが、如何に?」


「左様である。苦しゅうないぞ、アリエル姫の第一の忠臣であり、ご友人たる貴婦人よ。汝の様な、強く美しく才気溢れる女性を、我は常に称賛する者の一人である。それ以上は、汝の崇拝者たる、周囲のおのこの面々を立てるためにも、今は控えようと思う。」


「さて、バルディーン殿の忠臣であったサイラス卿の娘子よ。汝がアリエル姫の忠臣となったは、父御の名誉を継ぐと言う偉大な系譜の義務に従ったが故。此度の勝利を知り、更に汝の一族達が泉下で感ずるは比類無く強く立派に育った娘子をして、累代全てが誇りに思う事であろう。予の言葉を更に汝の先祖に送ろう、天晴である!この子を地上に遣わした事だけでも汝らの家系は千載語り継がれるべきであろうとな。」

「ところでじゃが、我はそこなるタキを遣わして、汝らの戦いを見守らせていたところであったが、我が命が過酷に過ぎた事から、忠臣たる勇者タキがその所在を突き止められてしまったのである。しこうして、彼の者が生死の危機に陥っておる事を知った我はその助命のために、汝らに我等の知るところを余さず知らせる許可を与えたのだよ。」


「これで納得して貰えたことであろうかな?」タウロンの声を聞く内に、私は呆然として来た。レンジョウも頭を振っている。マキアスはしゃがみこんでいる。カナコギも様子がおかしい。

 アローラとシュネッサは抱き合って小さくなっている。


「私の先祖にまで名誉を恵んで下さった陛下の恩寵に最大の感謝を捧げます。しかしながら、陛下はお忘れであるご様子。ここなる勇者レンジョウは、死に抗う恐るべき力、気力も体力も活力も全て備えた益荒男にございますが、なにしろ、人殺しに対してはおよそ理解が及ばぬ程に否定的でございまして・・・・。タキ殿を、例えば私が後日の為に殺すべきだと主張したとて、いっかな賛同致すとは思えぬのでございまする。」


「ハハハ!愉快!愉快!」精神力の突風が吹き荒れ、裏表の無い、ひたすらに喜悦と愉快の感情が水晶玉越しに伝わって来る。

「勿論、その事は知っておるよ。予は、フルバートの寺院での出来事も目の当たりにしたところであるからな。レンジョウ殿、汝がシーナ殿と仲違いや意見の衝突をする等は、予の楽しむところではないのだよ。勿論、アローラ殿とシーナ殿、レンジョウ殿とアローラ殿の諍いや、意見の相違も予は好まぬのだ。これは予の本心であると知って欲しいのだ。」こいつ、どこまで情報通なのよ!


 と思いきや、タキと呼ばれた勇者はチンプンカンプンと言った体で、タウロンの言葉に首を捻っている。これは、タウロンの洞察力が優れているだけで、タキ達には余計な事を言ってないと言う事なのだろうか?


 もしも、もしもだ。剣を持って、この大魔術師の下に赴いて、彼の前で剣をかざせたとしてだ。私はこの大魔法使いを殺せるだろうか?

 そう言う意味では、拳銃や小銃ならば簡単だ。引き金を引けば良い。手に加わる重みも、手に余る血潮も感じないで良いのだから。命を奪った実感も無いだろうから。

「参った・・・。参りました。お話を伺います。よろしくご教授下さいますよう。」膝を突いて、タウロンの言葉を待った。


「シーナよ、謙虚なり!タキよ、見よ。お前達の敵手を。これ程の腕前、これ程の力、これ程の謙虚、これ程の智謀、そして底知れぬ無謀と狂猛。恐るべき者どもではないか?」この大魔法使いはやたらと他人を褒める・・・・。


「はっ・・・。できましたら、ここまでお殿様がお褒めになる様な手合いを、私め等の菲才な者どもに相手をさせるのではなくて、もっと私めに相応しい、柔らか~い連中との対戦の方が、寿命が延びるのではと思う事しばしです。」

「却下する・・・・。」

「でしょうね。知ってました。全くもって、凄まじきは宮仕えって奴ですか。じゃあ・・・・洗いざらい話す事にしますね。」

「そうするが良い。誰よりも汝の安全の為にな。」

「心広きタウロン様に感謝を。じゃあ続けるな。」


「俺達は考えたのさ。フルバートに新しい大魔法使いが誕生し、その者と同盟を結ぶ事ができれば大いに利得を得られるとな。言っておくが、これはごく初歩的な離間の計略って事だ。精々が簡単な魔術しか使えないアリエル姫を頭にするよりも、この国難を何とかできそうな者に一時的にバトンを渡すのはありえた話だろうから。」

「一番の問題は、白の魔法を継承するだろうアリエル姫に対して、サリアベルは黒の魔法を使うだろう事だったが、それは俺達には極々好都合だったんだ。何しろ、俺達はラサリアを狙う敵国なんだからな。精々ラサリアの国内で揉めてくれたら良いと考えていた。」

「そう、とても重大な事を軽く考えていたんだ。」


「サリアベルは当時17歳、黒髪でヘイゼルの瞳の持ち主だった。歳よりも少し大人びた感じのする美しい娘で、背が高く、上品だった。俺も一度だけ見た事があるんだが、近い容貌のシーナさんと比べれてみても、あの娘はちょっと違和感を感じる何かがあった。」

「違和感って何?」

「怖いんだよ。何故かはわからないが、美しいって言うのが造形の特徴だとすれば、怖いってのは精神の構造の特徴なんだろう。俺にはあいつが生物だとは少し思えなかった。人形って感じだった。何故そう思ったのかはわからない。けれど、そう思えた。うっすら怖いんだよ。」


「サリアベルは、それでも尖塔からは出して貰えなかった。議員は言ってたよ、それでもフルバート伯爵が梃入れして、サリアベルに古い魔術の奥義書を渡している様だとね。そんなものをどこに隠していたのやら。王妃も何故そんな書物を見逃していたのやらね。」

「そして事件は起きた。俺は銀からのその報告に奇妙なものを感じたのさ。」


「どんな事件だったんだ?」レンジョウが問い掛けた。

「当時のサリアベルには、ちゃんと下々の者どもが世話をしていたんだ。あの得体の知れない女はそんなもん必要としなかったがね。食事とトイレの掃除、部屋の清掃。身の回りの世話。その者達の内の数名が奇怪な死を遂げたってね。」

「殺人や自殺は奇怪な死じゃないわよね。」私は念を押してみた。

「揃って、家の床が血まみれで、両腕と両足、撒き散らされた歯や目玉だけが残っている。これなら奇怪な死だろうよ。」タキは肩を竦めた。


「それが何を意味しているのか。俺は後々で目撃した。どうにも、これは俺達が関与した大失敗だった。そうとしか言えない。」

「これらの事件は隠蔽された。そして、あろう事か、サジタリオ王子自身が、フルバートの防衛支援と言う名目でサリアベルを尖塔から出そうとしたんだ。俺はそれは違うと思っていた。サジタリオ王子は先にも言った通り、魔法の素養がなかった。彼は何等かの魔法の影響下にあったんだと、俺は考えている。」

「この都市の上層部のかなりの層も勘違いを犯していた。サリアベルの事を、勇者と同様の大魔術師の忠実な手下であるとね。俺達の思惑に沿って考えれば、それは都合の良い勘違いだった。国を二分する大魔術師の出現なんて考えてもいなかったんだろう。フルバート伯爵は、そんな風に情報操作をしていたんだ。」

「今の彼にしてみれば、状況は思い切って不本意だったろうよ。自分の娘、逝去した王妃からは忌子と言われていた政略結婚にさえ使えない美女を頭に、独立勢力としてのし上がり、ノースポートやバーチまで支配できるかも知れない。胸が膨らんだろうさ。」


「だが、こんだけ前置きが長かったんだ。それと、あんた達みんなが今の状況を知っている。この後の悲惨な過去を想像するのに難くはないだろう。そうだ、俺は今からそれを話すつもりなんだよ。」

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