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こんな新人冒険者(ルーキー)がいてたまるか!!~複数恩恵の冒険譚~  作者: 猫の桜
第一章 こんな新人冒険者(ルーキー)がいてたまるか!!
7/9

第6話 圧巻

「そろそろだな」


 ドルファンから馬車で十数分。目的地コファ村付近に近付いた。既にミィシャは集中しているのか、さっきからずっと無言で目を瞑っている。


 初めにこなすクエストはコファ村に現れた角鳥。


 言い忘れていたがアルダ村、コファ村に住んでる人達は今別の村に避難しているらしい。そりゃモンスターが現れた場所に居座る方がおかしいって話だもんな。


 大して人口も多くないから何とかなってるが食べ物の不足はもうそろそろ問題になるはずだ。このクエストは長引くにつれて相当村の人達は大変な事態に陥る。


 ただでさえ角鳥やら甲羅蟻やらが出現して可哀想なのにね。…まぁ今からそれを排除する予定なんだが。


 馬車をひいていたおじいさんはコファ村道中のひらけた草原に馬を止めそこで俺とミィシャは降りる。

 そしてあっという間に馬車は逃げるように方向転換。元の道へと全力で走っていった。


「うわぁ、凄い速いや。馬車をってあんなに速度出るんだね」

「そりゃあねぇ…あんなん見せられちゃ逃げたくもなるわ」


 馬車が走っていった方向に手を振る呑気なミィシャに緊張していないかの心配は杞憂だったと安堵する。しかし、これは思った以上に進んでるな。


 村も近くな人工的に作られた道。その先に見える…最早村と言っていいのか分からないほど壊滅状態なクエスト先がデカデカと目に映った。


 遠目からでも分かる村の壁とされる木も砕け散り散乱してる。もう原型がほとんどない。相当やられてんな。


「…行くか」

「うん」


 この惨劇を作り出す程だ。やっぱり新人冒険者(ルーキー)のクエストじゃねぇな。これを知ったりなさんの顔を思い浮かべると下手したら角鳥より恐ろしい…。


 俺の心情を察している俺の心情の原因は目を逸らしながら不細工な口笛を鳴らす。


 その時。


「キャアァァァ!!!」


 村の中からモンスターではない、明らかな()()()()が聞こえた。


「ミィシャ!!」

「わ、分かってる!」


 俺は声だけを飛ばし後ろを見ずに村へと全力で走った。


 ボロボロに朽ちた家、荒らされた畑。目に飛び込んだのは今の村の現状では無く、角鳥に囲まれた一人の少女とそのすぐ近くで横たわる親らしき男の姿。


 大体分かる。だが怒るのは後だ。


 見た所あの男の人は死んでない。もし一般人が角鳥に攻撃されたなら即死だし。


 俺は地を蹴る足に魔力を込め角鳥までの距離を一瞬で詰める。


「え…!?」

「おい…!!コイツらの気ぃ引いててやっから早く逃げろ!!」

「でもお父さんが!!」


 あぁそっか…!抱えて逃げるなんて力ねぇか!!


 三体のうちの一体である角鳥の背後に周り首を締め付ける。空中にさえ逃げられなきゃ殺すのは容易い。


 ジタバタと暴れる角鳥は奇怪な叫びを上げ抵抗するがそんなんで振りほどかれるほどやわな鍛え方なんかしていない。


「まず一体!!…ミィシャ!!そこの倒れてるおっさんと子供連れて村出ろ!!」

「レイシャはどうするの!?」


 見たらわかりませんかねぇ!?


 仲間がやられて怒りのボルテージの上がった角鳥は体制を低くし角を真っ直ぐに俺へと捉える。


「コイツら倒すんだよ!!」

「……」


 自分でもビックリな大きい声にミィシャは無言で走り親子二人を誘導する。すまんな。けど助かる。


 避難し徐々に見えなくなるミィシャ達を横目に羽を広げ降ろし超低空で滑空する角鳥を紙一重で避け、もう一体の臨戦態勢の角鳥にナイフを投げる。

 飛行できるモンスターに飛び道具を装備するのは至極当たり前な戦法。当たるかどうかは二の次としてね。


「まぁ避けますよね」


 鋭い反射であっという間に空へと舞い上がるもう一体に溜息を漏らし地上から凄まじい速さで低空飛行、距離を詰めてくる別の角鳥にまた溜息。


 学は無いはずだから無意識に俺は地の有利を取られた。


「はぁ…まぁいいや」


 肩を回し直ぐにでも襲いかかる勢いな二体の角鳥に対し俺は何の武器も持たずにただ無防備に立ち尽くす。


「我ながらアホだと思うよ?」


 二体の猛攻を避けながら反撃の隙を伺う俺は心做しかウキウキしていた。


 大事なクエスト、村の人達の生活がかかってる。全部わかってる…けれど不自然にも口角は上がってしまう。



 ーどれくらい通用するのか。それを確かめてみたい。



 技も無し。魔法も無し。武器も無し。ただ純粋な身体能力のみでの戦闘。悪ければ一撃で死ぬかもしれないそんな緊迫感で。レイシャは高揚する。


「…凄い」


 遠目から見るレイシャの戦闘にミィシャは息をする暇もないほどに目が離せない、否。魅入っていた。


 上手く表現の仕方は分からずどう言葉に出せばいいのか、妙な感覚。

 見てるだけで心沸き立つ、自分もあんな風にと憧れてしまうそんな光景。


 地を蹴り、鋭利な角を寸前で躱し腹下へ瞬時に潜り瞬速の打撃打つ。

 悶絶する角鳥に見向きもせず直ぐ上空から降りかかる追撃にワンステップで回避する。


 舞い人。

 舞踊にも似た動きは一連の流れで脅威なはずの二体のモンスターを手玉に取っていた。



 ”圧巻”



「もうホントにやめてよ…めっちゃかっこいいじゃん…」


 時間にして()()()。長くも短いコファ村の戦闘は終了した。




[コファ村〜角鳥の討伐完了]

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